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ケイティー先生

 「ちょっとまって、何で私だけ出来ないのー? まあ、ケイティーも出来てないけどさ。」


 「私は、魔力さえたっぷり有れば出来るから。」



 何で魔導師で無いケイティーが出来そうで、私は出来ないのー? ちくしょー!

 それから1刻(2時間)程、中庭で変身術の練習会。

 部屋から姿見を持ってきたり、黒板を出したりして、皆真剣に勉強している。

 私はベンチでお菓子を食べながら見物。



 『!--お師匠ー、暇だよー、私だけ仲間外れだよー。--!』


 『--状況がわからん。何の話じゃ?--』


 『!--変身術をね、斯々然々《かくかくしかじか》なんだよー。--!』


 『--はあ? 何を面白そうな事をやっとるんじゃ? わしもすぐ行く。--』



 しまった。余計に疎外感が増した気がする。墓穴を掘った。

 それからお師匠は、10分程度でやって来た。はええ。



 「お前らだけで何を面白そうな事をやっておる。わしも混ぜなさい。」


 「あら、ロルフ様、美容にご興味が?」


 「そうじゃ無い。変身術じゃ。なかなか面白そうじゃからのう。」


 「宜しいですわ。私達で解読した所に寄ると、これをああしてこうして……」


 「ふむふむ……なんと! ほうほう……なんという事じゃ!」



 新しい技術なんて、そんな数分数時間程度で習得出来てしまうのかとお思いに成るだろう?

 だけど、これまでこの世の中に無かった概念は、知るだけで存在する事になり、出来るように成るのだ。


 例えば、ライト兄弟以前の人類は、空を飛べなかった。それまで多くの人が空を飛びたいと願い、色々な試行錯誤を繰り返したにも関わらず、飛ぶことは出来なかった。でも、ライト兄弟が飛行機を設計し、理屈を完成させた瞬間に、人類は飛べるという現実を手に入れたのだ。

 それまで何百年も飛ぶ事が出来なかったにもかかわらず、航空力学が完成した以降は、小学生でも模型飛行機を作って飛ばす事が出来てしまう様になった。

 それも、数十時間も勉強して、という訳では無く、数分間、図解入りの取扱説明書を読んだ程度の知識で、よく飛ぶ紙飛行機を拵える事が出来てしまう。紙飛行機と侮るなかれ、ちゃんと飛ぶためのエッセンスが詰まっているのだ。そして、それは昔の人達が何百年を掛けても実現できなかった物なのだ。


 つまり、知らないから何百年経っても出来なかった事が、知ればたった数分で出来るように成る。ブレイクスルーを達成した以後は、至極簡単な事になってしまったりするのだ。


 飛行術、魔導倉庫、電撃魔法、そして、今、変身術という魔導にブレイクスルーが起こり、小半刻程度で皆がそれを身に着けようとしている。


 私を除いてな!

 悔しいー、私だけ蚊帳の外で悲しいー。えーん。クーマイルマが帰ってきたら慰めてもらおう。……まさか、あの子もあっさり出来ちゃったりしないよな?……



 「ソピアちゃーん、どうー?」



 ヴィヴィさんとウルスラさんが来た。多分。



 「何処のボンドガールだよ!」



 思わず叫んじゃったよ。

 グラビア・モデルみたいなポーズ取ってんじゃねーよ!


 どっちかっていうと、エリザ○ス・モ○ゴメリーとリ○ゼイ・ワ○ナーが近いかな。若い頃の。

 ウルスラさんが奥さまは魔女で、ヴィヴィさんがバイオニック・ウーマンだよ。そんな事はどうでもいいよ!

 『魔王に誓って』って、うるせーよ!



 「ソピアちゃん、自分だけ出来ないからって、そんなに荒れないでー。」



 キイイイイイ!!

 わざわざ逆鱗に触れてくるよ!

 お師匠の方をふと見ると……ガン○ルフがドクター・ス○レンジになってるよ! ワイルド系かよ!

 もうやだ、この人達。



 「はーい、ソピアが苦言を呈しまーす。原型が分からない程かけ離れるのは良くないと思いまーす。誰だか分かりませーん。」


 「そうなのー? 会心の出来だと思ったのにー、残念ねー。」


 「あと、自信有り気なポーズは取らないで下さーい。殺意が湧きまーす。黒玉で王都ごと消し飛ばしますよ。」



 なまじ、粘土細工みたいにどんな形にでも作れるせいで、若返り美容どころか別人に成ってしまっているよ。



 「まあまあ、ソピアも、そんなカリカリしないで。練習すれば、あなたも出来るように成るはずだから。」



 ケイティーだけは味方だよ。

 って、ちょっと胸が大きくなってない?



 「あ、あら? そんな事は無いわよぅ、ほほほ。」



 こいつら……



 「もういいです。好きにしてください。ツッコむのも疲れました。私はツッコミキャラじゃありませんから。その代り、プロークが言葉を喋れる様にしてあげてください。ヴィヴィさんとウルスラさん、よろしくね。」



 見てるだけでつまらないので、私は食堂へ入っておやつを食べる事にした。

 なんか、あんまり怒ったので糖分が不足した。

 屋敷の専属パティシエに作ってもらったスイーツを食べつつ、窓の外でワイワイガヤガヤやっている皆を見ていたら、講義はお開きに成ったみたいで、ぞろぞろと屋敷の中に帰ってきて、食堂へ集合した。

 今この場に居ないのは、クーマイルマだけかー。会いたいな。



 「ソピア、皆で話したんだけどね、何故あなただけが出来ないのかを……」


 「もういいよ、その話は。」


 「そういう訳には行かないのよ。皆で協力して、ソピアと今ここに居ないクーマイルマにも習得してもらおうって事になったの。今まで私達は、ソピアに色々教わって来たのだから、今度は私達が全力でソピアに教えるよ。」



 クーマイルマ、早く帰って来てー。


 それからは、講師が入れ代わり立ち代わり、まずわからない所は何処かの洗い出しから開始して、認識の齟齬の部分を修正し、ヴィヴィさんが考案した簡単な訓練から、徐々に複雑なものへと移行していく。


 途中休憩を挟みながら、凡そ2刻にも成ろうと言う頃になって、クーマイルマが学校から帰って来た。



 「あれっ? 何時もより帰りが速かったね。」


 「はい、ソピアさんに教えて頂いた飛行術を使うと、半分の時間で行き帰りが出来るように成りましたから。」



 おお、この子、もう使いこなしているのか。流石魔族は人間より魔導に強いと言われるだけ有るな。



 「あのね、クーマイルマにお願いがあるんだけど、いい?」


 「はい! なんなりと!」



 すごい嬉しそう。

 私からお願いされるのがそんなに嬉しいのかな。



 「私と一緒に勉強して欲しいんだけど。」


 「勉強……ですか? 学校の?」


 「いや、変身術なんだけど……」



 周囲を見回して、合点がいった様だ。

 最初、今日は知らない顔がずいぶん居るなと思ったみたいだけど、よくよく見ると、知っている人だと分かったみたいで、ヴェラヴェラの隣に居るのがプロークだというのも直ぐに看破した。魔族の目って何か特殊能力でも持ってるのかな?



 「了解です。ソピアさんと一緒に、変身術を習得すれば良いのですね。」



 ヤバイ気がした。

 きっと、この子、あっという間に習得する。

 また私が置いてきぼりに成る予感がする。



 「大丈夫ですよ。わからない所を教え合えば、すぐに出来るようになりますよ。」



 天使だ。天使がいらっしゃる。



 「ありがとう! クーマイルマは私の天使だよー。」


 「そそそそんな! あたいなんかが、女神付きの天使の職にご指名頂けるなんて……」



 あれ? 何か勘違いさせたかな?



 「では、早速始めましょうか。」


 「う、……うん。」


 「でもその前に、夕食の時間じゃ。」



 久々に全員揃った夕食は、話が弾んだ。今までお師匠はエピスティーニに詰めていて、ずっと居なかったし、プロークも屋敷の中に入れる様になったので、このメンバー全員が揃っての食事は、今回が初めてだ。凄く楽しい。

 プロークは、体の大半をあっちの空間に入れているせいで、見た目の体積には入らないだろうという程の量の食事を食べている。ただ、ドラゴンは、一回の食事を摂れば数日は食べなくても大丈夫なんだそうで、毎日食べるならもっと少量ずつでも良いという事だった。


 夕食が済んだ後は、食堂の広間を借りて、臨時の講習会を開く事に成った。

 講師は、今回はケイティーで、伊達眼鏡をして、指し棒で黒板をパンパンと叩いている。


 長テーブルの反対側では、ヴィヴィさんとウルスラさんが、プロークに喉の構造とか声帯の形とかを講義している。

 あっちは時間がかかりそうだな。



 「はい! そこ、こっちの勉強に集中する!」



 黒板をパンッと叩かれた。ケイティー怖い。





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★★★新作書き始めました。★★★
 ⇒ 私、魔女はじめちゃいました。





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