クーマイルマの本気
オーク、23頭
ハイオーク、4頭
オグル、1頭
これが今回の試験で仕留めた魔物の全部。
売却代金は、全部ハンターズギルドの収入だそうです。私は運び賃を雀の涙程貰いましたけどね。
まあ、今回同行した職員のお給金とか手間賃とか色々有るのだろうから、検定料がそこから出るのなら、別途に支払わされるよりも良いけどね。
私の斃した3頭だけは、変に火が通っちゃってるので、食肉にしては価値が下がるみたいで、ちょっと渋い顔をされた。脳漿だけピンポイントで沸騰させられる様に練習してみようかな。……何か恐ろしい事を考えてるな、私……
検定結果が発表されるまで、ラウンジで談笑。
悪役4人組が居るのが気に食わないけれど、打ち解けてみればそれ程悪人って訳では無さそう。あの頃は食い詰めていて、ちょっと道を踏み外しかけていただけみたい。
まあ、粗暴な連中なのには違いは無さそうなんで、積極的にお友達になりたい人種では無いけどね。
審査結果発表。
受付カウンターのお姉さんが、預けていたハンター証をアップグレードして、一人一人に返してくれる。
エントリーナンバー1、弓男。
ランク3から4へ昇格。
「位置取り、弓の命中精度、威力共に申し分無い技術を持っている。検定外でしたが、オグル戦の時の功績も加味されています。自分で考えて積極的に適切な行動を取れるのは、ランク4に相応しいとの事で、文句無しの昇格。」
エントリーナンバー2、ソピア。
ランク5から8へ昇格。
「お前の魔導怖い。とっとと上へ行け、との事。サーチ能力、魔導の威力共にランク8パーティーに入っていても遜色が無いレベルなので、下位ランクの狩場を荒らすな、との事です。」
一気に3つも上がっちゃったよ。ウルスラさんと並んだな。
カウンター前のどよめきと私を見る目が変わったのが分かる。ハンター証の色は、青色に成った。
エントリーナンバー3、ケイティー。
ランク4から6へ昇格。
「とにかく動きが人間離れしている。しかし、経験不足は否めないので、ランク上は6だけど、5の上位から6の下位あたり、5.5位の位置である事は自覚して置く様に、との事。」
「6への昇格は嬉しいけど、ソピアとの差は更に開いちゃったなー。」
エントリーナンバー4、髭男。
ランク3から4へ昇格。
「剣から持ち替えたハルバードを上手く使いこなしている。威力も十分で、ハイオーク含む4頭を危なげ無く倒せた。検定外のオグルへの対処も考慮されています。冒険者としてのマインドを評価されました。今後も精進する事、との事。」
「うぉっし! やったぜ!」
エントリーナンバー5、ノッポさん。
ランク2から3へ昇格。
「ハイオーク含むオークを倒せた為に普通に昇格。自分のレベルを超えるオグル戦に参加しなかったのは、自分の力量を良く知っている為であり、正しい判断。精進する様に、との事。」
「ふう、オグル戦も評価対象だと知って、ヒヤヒヤしたぜ。」
「総合的にハンターとしての素養を見極めているみたいだな。」
エントリーナンバー6、逃げ男。
ランク2保留。
「オーク3頭は倒せたようだが、判定員が見ていない為、評価出来ない。オーク如きに怪我しすぎ。オグル戦で、仲間を置いて1人で逃げたのは、ハンターのマインド的にマイナス評価、との事です。」
「ちくしょう、俺だって、俺だって……」
「今回はイレギュラーな面が色々有って仕方ないぜ。次頑張ろうぜ。」
悪人でも仲間を思いやる心は評価してやろう。腐るなよ、逃げ男。
「おまえ、いちいち上から目線だし、適当なあだ名で呼ぶんじゃねーよ。俺達の名はなぁ……」
「いいえ、名前は結構です。どうせ覚えられないので。」
私は、名乗ろうとする髭男を手で制して、名乗らせなかった。
名前聞いちゃうと、何か縁が出来ちゃって、今後も関わりになりそうなので嫌だから。
私達は、後ろでぶつくさ言っている4悪を置いて、さっさとハンターズを後にした。
「でも凄いよねー。ソピアは3ランクもアップなんてねー。」
「ケイティーの2ランクアップも凄いよ。驚いたよ。」
まあ、ここで調子に乗ると痛い目に合うのは既に経験済みなので、暫くは大人し目に行こうかな。
私達は、もう良い時間なので、寄り道しないでお屋敷に直帰した。
皆が帰っていたので、夕食時に集まった時に、ハンター証を見せた。
「ウルスラさんと同じ、ランク8になったよ。お揃いだよ。」
「まあ、これはこれは、よかったですねぇ、私は嬉しゅうございますよ。」
「ケイティーも6になったんだよ。」
「私のは、そのう、おまけみたいな物だから……あまり言わないで、恥ずかしいから。」
「そんな事無いわよ、おめでとう、ケイティーちゃん。」
ケイティーは、ヴィヴィさんに褒められて嬉しそう。
ふと横を見ると、クーマイルマが、ずーんと暗い顔をしている。
うん、まあ、分かるよ。自分だけ疎外感が有るんでしょう。でも、学生の本分は勉強だからね。
「クーマイルマ、勉強頑張ってる? 学校で虐められてない?」
「あっ、はい、勉強は楽しいです。友達も出来ました。皆親切にしてくれています。でも……」
私と一緒に冒険とかしたいんだろうなーとは思う。
でも、勉強や学校生活が嫌々ではないのは良かった。1人で人間の世界に来ちゃって、心細く成っているんじゃないかと思って心配してたのだけど、ちょっとだけフォローしておこうか。
「私とケイティーもさ、何ヶ月後にサントラムの高等学院に行く事が決まっちゃってさ、同じ学生さんだよー。」
今王都の西区の、商区の一般区寄りの郊外、西門寄りの辺りに、建設中なんだよね。かなり広大な敷地面積を持つ学校になりそうで、完成したら1千人規模は収容出来そうな学校に成るみたい。
マヴァーラのサントラム学園の成績優秀者は推薦で進学できるし、卒業生も比較的安く入学出来るみたい。外国からの留学生も受け入れる準備中なんだって、一般受験では、結構試験料、入学金、授業料共にかなりの高額成るらしいのだけど、貴族の間から結構問い合わせが来ているのだとか。魔導鍵とか、飛行椅子や、あの剣は欲しいもんね。
「でも、ソピア……さん達は王都で、私はマヴァーラです……」
「その事なんだけどね、飛び級制度って知っているかしら? 成績の優秀な子は、試験を受けて上のクラスに上がれる制度なんだけど、年4回試験を受けられるわ。もし、それに順調に合格できれば、2ヶ月遅れ位でソピアちゃん達と同じ学校に通える、可能性も有り得無いとは言えない、かもしれないわ。」
おう、可能性は有り得無いとは言えないかもしれないのか。微レ存ってやつか。
「本当ですか!!」
おおう、凄い食い付いたぞ。マジなのか? そんなの、ほんの一握りの天才だけだぞ? そんな期待持たせちゃって大丈夫なのか?
飛び級で高等学院まで登るには、最低でも3つの試験に合格しなければならないんだぞ?
しかし、『虚仮の一念岩をも通す』って言うしな。あり得るのか?
クーマイルマがいきなり、食事を中断して、ガタンと勢い良く立ち上がった。
「あたい、今から勉強しなければなりません。ごちそうさまでした!」
「う、うん、頑張って……」
ちょっと怖い。もし失敗でもしたら、この子の心が壊れちゃうんじゃないかって心配に成る。
いや、決してクーマイルマを見くびっている訳じゃないんだけどさ。
でも、逆に本当にやって来そうな気もして、ちょっと期待もした。
「クーマイルマ、あまり根を詰めないでね、食事と睡眠はちゃんと摂るんだよ。」
「わかってます! 絶対にご期待に答えてみせます!」
絶対に分かってないだろ。私はあなたの健康の心配をしているんだからね。
「ヴィヴィさんー。もう、クーマイルマに何か有ったら責任取らせますよ!」
「あ、あらぁ~……、ちょっとお薬が効き過ぎちゃったかしら~?」
繊細な子だから、見張っていないと危なっかしい。
どうなる事やら。




