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こちら鈴山村陰陽師  作者: 法田波佳
ようこそ、鈴山村へ
12/22

陰陽師見習いの基




「あの、うちに何かご用ですか?」


 なんで、今朝会った人が家にいるんだろう?それに朝、背中に乗せていた赤殿中は?など聞きたいことはたくさんあったけれど、とりあえず瑞生は当たり障りのないことを聞いてみた。

 それに、目の前の少年はこてんと小首を傾げる。その目はいぶかし気に瑞生を見ていた。


「うち……?」


 不思議そうに言われて、瑞生も少年とは反対側の左に首を曲げる。何か変なことを言っただろうか、と思っていると、玄関の引き戸が音を立てて開いた。


「あら、瑞生ちゃんも帰ってたの?」


 出てきたのは、ストライプ柄のエプロンを身につけたゆかりだった。ゆかりは、少年と瑞生を交互に見て、ひょっとして一緒に帰ってきたの? と尋ねた。


「ち、違います! 今会ったところで……」

「ゆかりさん、この人誰ですか?」


 慌てて瑞生はかぶりを振る。それと同時に、少年は口を開いた。

 見れば少年は、瑞生の方を指さしながらゆかりに尋ねかけている。それを見て瑞生は、むっと腹を立てた。指をさされたことにも腹が立ったし、何よりこの人呼ばわりされたのが癇に障った。


(この人って……私、ここの子なのに)


 思わず眉間にしわが寄る。

 そんな二人の様子を見ていたゆかりは、何かを察したらしい。少年の肩を掴んで瑞生の方に向き直らせると、互いに互いを紹介し始めた。


「えっとね、この子は都基みやこもといくん。瑞生ちゃんと同じ学校の1年生で、うちで陰陽師見習いをしてるの」


 陰陽師見習い。その言葉が気になったが、聞き返す前にゆかりが話し出してので、この場は黙っておくことにした。


「それで、こっちが水瀬瑞生ちゃん。善蔵じいちゃんの孫で、昨日からここに住み始めたの」


 はい、わかったらよろしくー。そう言ってゆかりは、少年、基の頭を手で押さえて無理やり下げさせる。瑞生もそれを見て慌てて頭を下げ返した。


「やめてくださいよ、ゆかりさん」


 押さえつけてくる手を払いのけて、基は顔を上げる。気づかなかったが、よく見ると瑞生と同じぐらいの目線に顔があった。中学生男子の平均が何センチかはわからないけれど、女子の中でも高い部類に入る自分と並ぶということは、なかなか背が高いのだなと思った。雰囲気やしゃべり方も大人っぽいし、とても中学1年生には見えない。

 そんなことを思いながら見ていると、ゆかりに不満をまくしたてていた基がちらりと瑞生の方を見た。瞬間、眉間の間にそれは深い谷が刻まれる。


「何見てるんですか」


 心底嫌そうに呟かれた言葉。それに、瑞生は面食らってしまう。驚いて何も言えずにいると、ゆかりはまたがしっと基の頭を掴んだ。小さな頭は、ゆかりの手にすっぽりと収まってしまう。


「何見てんのじゃないでしょー? じいちゃんの孫なんだから愛想よくする!」


 思いっきり力を入れながら頭を掴んでいるゆかりは、にこやかな笑みを浮かべたままだった。けれど、心なしかその口角は引きつっているようにも見える。


「いった! ちょ、何するんですか!」


 ゆかりの手を叩きながら、基は不満の声をあげる。べしべしとしきりに攻撃されてさすがに痛かったのか、ゆかりはしぶしぶといったていで手を離した。

 基は、掴まれて乱れてしまった髪を直しながら瑞生を見つめる。頭の上からつま先、上から下へと視線が巡らされる。瑞生は、何だか気恥ずかしくなってしまって視線を足元に落とす。すると、ため息にも似た音が聞こえてきた。

 音をたどって、瑞生は顔を上げる。その先には、やれやれといった風に肩をすくめている基の姿があった。


「なんか、大したことなさそうですね」


 眼鏡の奥の目が、バカにしたように光る。それを見て、瑞生は思わずぽかんとしてしまった。こんな風に直接バカにされたのは生まれて初めてだった。


「あなた、見習い歴は何年ですか?」

「な、んねん……?」


 突然聞かれて、瑞生は言葉を覚えたての幼子のように復唱してしまう。

 何年、と聞かれても困ってしまう。そもそも見習い歴と言われても何のことだかさっぱりわからないのだ。

 答える様子のない瑞生に苛立ったのか、基の眉間に刻まれたしわがより一層濃くなる。


「ちなみに僕は今年で3年目になります。あなたは?」


 再度、尋ねかけられる。だが、何も答えられるはずがなかった。質問の意図がわからないのだから。


「えっ、と……」

「違うよ、基。この子は見習いじゃないから」


 とりあえず何か返事はしないといけない。そう思って口を開きかけた時、それまで黙っていたゆかりが声を発した。顔を向ければ、ゆかりは困ったように片眉を上げて基を見ていた。


「同年代の見習いを見るとすぐに突っかかるのは悪い癖だよ。それで、集会の時もじいちゃんに怒られてるんでしょ?」


 集会。瑞生には何のことだかわからなかったが、それで基には通じたらしい。苦々しげに基は下唇を噛んでいる。その姿は、年相応の少年のように瑞生には見えた。


「まあ、とりあえず上がりなよ。善蔵じいちゃんは離れにいるから」


 ゆかりはそう言うと家の中へと入って行ってしまう。基はジロリと瑞生をねめつけた後、ふんと鼻を鳴らして後に続いた。


(……何なんだろう?)


 突っかかるような態度を疑問に思いながらも、瑞生も二人の後について家の中へと足を進めた。








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