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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
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7話 ドジ勇者っ娘の正義

 全ての山賊を処理した後、死体から金目の物を全て山賊の持っていたポーチへと黙々と詰め込んでいく。


「ひ、酷いです~、助けていただいた事は感謝します、でも、何も殺してしまうことないじゃないですか~、気絶させて縛るだけでも良かったはずです~!」


 死体から物を奪っていく私を、エミーは涙で腫れた目で睨みながら、間違っていると叫んでいる。


「はぁ、この者達は道を踏み外さなくては生きていけなかったのでしょう、そして、放置すればこの先もそんな辛く苦しい人生を送っていた、ならば、それを知ってしまった私は救わなくていけなかったのです、そして、言ったでしょう? 死こそは救いであると」


 私は死体を全て横一列に並べた後、目を開けている者は閉じさせ、手を胸の上で組ませていく。


 作業を終えた私は、何処かの教科書に載っていそうな台詞を吐き続けるエミーに対して、出来の悪い生徒に言って聞かせるように喋る。


「どんな人だって死んでいい命なんて無いんです! 死ぬことが救いだなんておかしいですよ~!」


 なおも間違っていると言い続けるエミーに対し、ふと考えが浮かぶ。


「話になりませんね……確かエミーこう言ってましたね? 墓地を抜けたら私を監視すると、ではこうしましょう、私は自分が正しいと思った行動を辞めるつもりはありません、なので、間違っていると思うのなら、エミーが力付くで止めて下さい」

「止めるも何も、ムクロ様に何も出来ないじゃないですか~」


 剣を掴み、私を斬ろうと振り上げるも、振り下ろすことが出来ずに固まっている。


「大丈夫です、そんな不正はしませんよ、ケル聞こえていますか?」

『肯定だ、聞こえてるよ、どうせ攻撃するなという制約の解除の仕方だろう? 簡単だよ、命令すりゃあいい! 殺すことを許すってな! 下手したら魔王より先に殺されるぜ?』


 久々に喋れるからか、ハイテンションのケルは質問をする前に回答し、チカチカと目を光らせながらケタケタと笑っている。


「だそうです、では早速 “攻撃する事を許す” ので、間違っていると思ったなら好きに止めてみるといいですよ、きっと分かる日が来ますからねぇ」


 やり方を聞いてすぐに実行し、両手を広げ、笑みを浮かべてみせる。


「絶対に~、殺してもいいなんて思いません! 何が何でも止めて見せますからね~」

『カカカ、ドジ勇者っ娘頑張れよ~』


 私の挑発に乗るように、剣を喉元へと突きつけ、浮かんだ涙を拭いながら、止めてみせると宣言する。


 カッコ良く宣言している時には、既にエミーを視界から外し、ポーチから取り出した地図を広げて見ていた私は、目的地を指差す。


「頑張って下さいね、そうそう、丁度この付近の地図を山賊が持っていたので道が分かりましたよ、せっかく見つけた広場は無駄になりましたが、この際どうでもいいですね、まずは近くの街を目指すとしましょうか」

「はぁ~……そうですね~、まずはその方がいいかもですね~」


 適当に流された事を感じ、深いため息をついた後、地図をのぞき込み、問題ないと同意してくる。


「当面の資金は確保できましたが、魔王を討伐するにしても、具体的にどうしたらいいか分かりません、何かアイデアとかありますか?」


 奪ったコンパスを見ながら歩き始め、コレからの事を考えるも、全くの案がないと伝える。


「えっと~、わたしは王都へ行って、王様から魔王討伐して来るように言われましたね~、その時に付き人とか兵士をお借りしましたが~……見ての通り全滅してしまいました~……」


 自分が討伐に出たときの話を聞かせてくれるが、その後の結末を思い出したのか、エミーの周囲に暗いオーラが見えるほどに落ち込み出す。


「いちいち思い出して落ち込まないで下さい、そのリベンジをする為にここにいるのでしょう? だったら落ち込んでないで倒す方法でも考えて下さい」

『そうそう、前回の魔王な、ドジ勇者っ娘が居た時代に別の勇者に倒されたんだがよ、今回は前回の否にならねぇくらいに強いらしいぜ、前回は~、十人近く殺したそうだが、今回は十人なんてとうに殺して、新記録更新中だとさ』


(最新の情報も女神様から受け取っているんでしょうか?)


「そうでしたか~、倒してくれた勇者様に感謝ですね~、今回のがそれより強いなんて、勝てるのでしょうか~……」

「ケル、その情報は正しいのですか?」

『肯定だ、これは魔王を監視している女神様からの直々の情報だからな、間違いないぜ』


 一人で一喜一憂しているエミーを放置し、ケルへと問いかけると、想定していた答えが返ってくる。


「強くなっている、ですか……装備を強い物に、と思いましたが、そのデュランダルは神器でしたね」


 エミーの腰に差している剣を見て、神器だったことを思い出す。


「はい~、魔王ですら折ることが出来なかったので、これは魔王に対抗する武器としては最高レベルかと~」


 剣を自慢気に見せてきたため、少し意地悪をしたくなってくる。


「武器は最高レベルなのに、持ち主がこうドジでは話しになりませんけどね」

『カカカ、同意だぜ、不滅の神も人選を間違ったんじゃないか?』


 ケルも私に便乗するように茶化し始める。


「そ、それは言わないで下さ~い、が、頑張りますから~」


 自分がドジだという事を自覚している分、とても恥ずかしいのだろう、両手で顔を隠しながら言ってくる。


「ええ、頑張って下さいね、次は地面にダイブとかいりませんから、笑いをこらえるので必死になってしまいます」

「も、もう~、意地悪ばっかり言わないで下さい~」


 墓地での失態を思い出したのか、茹で蛸のように顔が真っ赤になり、誤魔化すように私の腕を叩いてくる。


 これがポカポカなら良かったのですが、一撃一撃にかなり威力が込められており、腕を折る気なのではないかと疑ってしまう。


「痛いので止めていただけませんか?」

「え? す、すみません~、そんなに強く叩いてるとは思わなかったもので~」


 ポカンとした表情を浮かべたかと思うと、急に顔を青ざめさせ、何度も頭を下げてくる。


「まぁ、次はしないで下さいね、私の腕をへし折りたいというのであれば、話は別ですけどね?」

「そんな事しません~!」


 あまりにからかいすぎたのか、エミーはムスッとした表情をしたかと思うと、舌をべーっと出した後、一人で走っていってしまう。


 その背中を追いかけるように、歩きながら、ため息混じりに呟く。


「やれやれ、まだまだ子供と言うことでしょうか、魔王の元へたどり着けるのか心配になってきましたよ」

『いやいや、あれはムクロ様がからかいすぎたからだろ? もう少し可愛がってやってもよくないか?』

「おや、情でもわきましたか? ケルがそんな事を言うなんて気味が悪いですね」

『カカカ、そんなんじゃねぇよ、あんまりおいたが過ぎると、逃げられちまうぞって事だ』


 あきれ口調で言うケルの言葉にも一理あると考え、確かにと首肯する。


「確かにそうですね、逃げたら死体に戻せばいいとはいえ、わざわざ面倒事を増やす必要はありませんし」

『そういうこった、ところでドジ勇者っ娘はどこ行った?』

「あれ? そう言えば……逃げたのでしょうか」


 鬱蒼とした森を抜け、ようやく舗装がされた林道に出る。


 辺りを見渡すもエミーの姿は何処にも見当たらない。


『おいおい、ずいぶん暢気なこと言ってんなぁ、ほら探した、探した!』

「何故、言ってるしりから面倒事を増やしてくれるのでしょうか……」


 ため息をつきつつ、周囲を注意深く見ながら歩く。


『そりゃ、ムクロ様がちゃんと見てねぇからだな、コレが自業自得と言う奴だ』

「ケルも探して下さいよ」

『前にも言ったが、ブレスレットに何求めてんだ、無理言うな』


 冗談を言い合いながら歩いていると、横転した馬車の近くに見慣れた背中が見えてくる。


「エミー勝手に先に行かないでください……これは?」


 近くまで寄ると、食い散らかされた人の残骸のようなものに黙祷を捧げている。


「ここで魔物に襲われたようです~、この規模の馬車なら他にも乗っていたはずなのですけど~、わたしが見つけたときにはこの人だけが倒れていて、すでに絶命していました~」


 祈りを捧げ終わったのか、立ち上がると、涙を拭くような動作をした後、こちらを振り返る。


(何で見も知らない人が亡くなったくらいで、泣けるのでしょうね)


「で、エミーはどうしたいのですか?」

「もし、まだ生きている人が居るのなら~、助けに生きたいです~」


 ジッと見てくるその瞳はぶれることはなく、決意に満ちあふれている。


「何故そんな無駄なことを?」

「わたしは勇者だからです~、魔王を倒す前に、弱い人を助ける者なのですよ~」


(あまりメリットはないのですが、私が行かなくてもエミーは一人で行くでしょうね、放置もしておけませんか、先ほどもケルに注意されたばかりですしね)


「私は保護者ではないのですけどね、ピンチになるまで何もしませんからね?」

「あ、ありがとうございます~、足跡からして~、多分あの林の奥へ引きずっていたと思います」


 エミーが指差した方向に、確かに小さな足跡と、何かを引きずったような跡が見える。

 しかし、引きずられている方はあまり抵抗した様子はないが、血の跡がない為、殺されてからと言う事もないと考え、状況から気絶してる所を連れて行かれたのだろうと判断した私は、生存している可能性も視野に入れ、すぐに跡を追い始める。


「では、行きましょうか、早くしないと助からないかもしれませんよ」

「は、はい~、って待って下さいよ~」


 林の方へ歩いていく私に、慌ててエミーもついて来る。


『とうとう、ムクロ様が人助けとはなぁ』

「何言ってるのです、私はいつも人助けをしていますよ、苦しむ人に安らぎを与えているでしょう?」

「ムクロ様のは~、人助けではないですよ~、絶対分からせます~」


 エミーの正義感から、林に連れて行かれた商人を助けるため、街へと向かう道からそれ、魔物を追う事になってしまった。

遅くなってすみません

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