6話 殺人鬼が嗤う
人によると思いますが、グロいつもりで書いてます。
墓地を抜けた私達は、巨大な木々が鬱蒼と茂っているせいで日が遮られ、一歩足を踏み入れるとジメジメとした空気が身体へと纏わりついてくる森の中を、苔で覆われた道を踏みしめながら、向かうべき方向も分からないまま歩いていた。
「ねぇ~、ここ何度か通ってませんか~?」
木ばかりで目印になるものが存在せず、まっすぐ進んでいるのか、それともぐるぐると同じ所を回っているのか分からず、ただ時間と疲労だけが蓄積されていく中、我慢が出来なくなったのかエミーがそんな声を上げる。
「え? 今更ですか? 何度も同じ所をグルグルと回っていますよ? ほら、この木の目印、ちょうど10週目くらいではないでしょうか」
「木に近付いて何かしていると思ったら、目印つけていたんですね~、と言うか、同じ所回ってるなら教えてくださいよ~」
精神的に疲れが溜まりきっていたのだろう、周回していると知り、膝から崩れ落ちると、両手を地面につけため息をついている。
「そんなに悲観的にならないでくださいよ、どうやら、方向感覚を狂わせる魔法か何かを張っているみたいですよ、この森」
「そうなんですか~? それを聞いて更に悲観的になりそうです~、抜けれないって事じゃないですか~」
『カカカ、ケルにかかれば、魔法が掛かってるのかどうか位は簡単に見破られるぜ』
歩く気がなくなったのか、苔の上に女の子座りをすると、ケルの言葉を無視して、不満げな表情で文句を言ってくる。
『おーい、また無視か~? そろそろ泣いちゃうぜ?』
「いえ、抜けれないなんて事はありませんよ、恐らくここにそんな魔法を張っているのは、疲れた旅人を襲うためでしょう、ですので、敵が現れるまではここで野宿でもするしかないですね」
「男の人と二人っきりで野宿と言うのも~、それはそれで危ないような~……」
男性と付き合ったことがないのだろうエミーは、男と2人で夜を共にすると言う状況を想像し、恥ずかしそうに人差し指同士をもじもじと動かしている。
「ああ、心配しなくても襲ったりしませんよ、エミーは私の好みではないですからね、好きなのは物言わぬ死体ですから」
『カカカ、それはそれで爆弾発言だし、かなり怖いと思うぞ?』
私の、死体にしか興味はないと言う告白に、エミーはポカンとしか表情を浮かべ、理解したのか顔が青ざめじりじりと後退していく。
『カカカ、ドジ勇者っ娘にドン引きされてるぜ、ちなみに気に入った死体なら、老若男女関係ねぇもんなぁ?』
「え、ええ? えええええ!!」
ひたすら下がり続けた結果、木に背中をぶつけ下がれなくなったことで、少し冷静になったのか、時間差で驚きの声を上げている。
「五月蠅いですよ、山賊達にそんなに会いたいのですか?」
私が言うと、口を手で押さえ、首が取れるのではないかと思うほどに、左右に首を振っている。
「とりあえず、暗くなる前に開けた場所を探しましょう、こんな隠れられる場所が多いところで完全に暗くなってしまえば、場馴れした山賊達に抵抗も出来ずにあっと言う間に身ぐるみ剥がされて、奴隷か殺されるのがオチですよ?」
「うう、どちらも嫌ですよ~」
私よりも山賊への恐怖が勝ったのか、さっと立ち上がり側まで近寄ってくると、周囲をソワソワと警戒している。
「でしょうね、余計な心配はいいので、早く探しに行きましょうか、とりあえずは二手に別れて探しに行きましょう」
「え~別々に? 別に一緒に探しても良くないですか~?」
私の提案に不安に揺れる目で見つめてくる。
「はぁ……ダメですよ、今回はきっちり二手に分かれて探索します、でないと夜までに見つけられるかどうかすら怪しいのですから」
「わ、分かりました~、でも、でも、何かあったら助けてくださいね~?」
服の裾を指先で摘まんでくると、潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。
服を摘まむ手をそっと離させると、菩薩のような微笑みを浮かべ。
「近くにいれば助けますが、離れていたら諦めてください、死ななければ、まぁ助けられるでしょう」
あっさりと突き放すような台詞に、エミーはきょとんした表情になるが、すぐにむっとした表情に変わり。
「まぁ、頑張って下さいね、期待していますよ」
肩に手を置き笑顔で言ったあと、背中を向けて歩き出し。
「ムクロ様の馬鹿~!」
エミーのそんな言葉を背中で受けるも、特に気にすることなく一人残していく。
ーーー
エミーと別れてから数分が経った頃、何度も同じ場所に戻らなくてもいいように、木に目印をつけながら歩いていると、複数の気配が移動していくのを感じる。
「おや? もしかして山賊の方々、エミーが一人になったことに気付いて、そちらに向かったのでしょうか?」
『カカカ、ドジ勇者っ娘助けに行くんだろ?』
「え? いえ、しばらくあちらに任せて、当初の目的通りに開けた場所を探しながら、山賊がすべて集まるのを待ちます」
ケルの分かっていると言わんばかりの言葉に、少し驚くようなリアクションを見せ、エミーを囮に他の山賊もおびき寄せると答える。
『おいおい、流石ムクロ様だと言いたいが、若い娘が捕まったら何されるかわかんねぇけど、いいのか?』
「嫌ですねぇ、いくら何でも壊されるところまでは放置しませんよ、ボロボロになるまで使い倒して壊れる姿を見るのは私の楽しみなのですからねぇ」
エミーの壊れていく姿を想像し、楽しみですと呟きながら歩いていると、目の前に探していた開けた場所が現れる。
「コレくらいの広さなら申し分ないですね、では仕方がないのでエミーの様子を見に行きましょうか、仮にも勇者ですし、負けてなければいいのですが」
目的を達成した私は、木につけた目印を確認しながら、来た道を戻っていく。
「ムクロ……様……んっ……助けて……これ以上……は! 無理です~……!」
エミーと別れた場所まで戻ってくると、予想通り数十人の山賊が襲ってきたようで、そのうちの五人は気絶という形で倒しているが、残りの山賊に押さえつけられ、今にも服に手がかけられようとしていた。
「あ~、お取り込み中だったようで、申し訳ないですね、私は見てるのでごゆっくりどうぞ」
私が現れた事で山賊達は一瞬固まるも、すぐに敵意をこちらに向けてくる。
両手を上げ、何もしないと宣言すると、緊張した空気が緩み、見下した態度に変わっていく。
「へへへ、まじかよ、こいつ仲間じゃねぇの? こんな腰抜け野郎の仲間とかお前も可哀想なもんだな」
「そ、そんな~……」
涙を目に溜めながらこちらを見ているエミーを視界の端に収めながら、笑顔のまま山賊の動きを観察する。
「と、言ってもだ、お前が本当に何もしないとはかぎらねぇからな、女がやられるのを見せながら殺してやるよ」
「何もしないと言ってるのに、血気盛んな方達ですねぇ」
何もしないで見ている私を、怯えていると取ったのか、調子に乗った山賊3人が、それぞれサバイバルナイフを手に持ち、私を取り囲んでくる。
「ズタボロにしてやる、いくぞ!!」
「逃げてくださ~い!」
取り囲んだ山賊が、一斉に襲いかかってくる。
それを見てエミーが悲痛な叫び声をあげるのを聞きながら、後ろから突き出してきたナイフを持つ腕を、振り返りざまに掴み、勢いのまま肘を内側へ曲げナイフを喉へと突き刺す。
息つく間もなく、横から切りつけてくる相手の腕をかわしざまに掴み、投げると同時に腕をへし折ってナイフを奪い、切りつけてくる三人めの胸へと差し込み、腕を折られ苦しむ山賊の首に足を振り下ろし、骨を砕く。
躊躇いなく三人を殺した私は、手から滴る血を軽く払い、不気味な笑みを顔に貼り付けたまま、残りの山賊へと視線を向ける。
「はぁ、大人しく言うことを聞いていれば、快楽の中で逝けたものを……馬鹿なんですねぇ」
「な、男一人に何を手こずってる! さっさと殺せ!」
リーダーらしき山賊の男が、怒鳴るようにもう一人の男に声をかける。
「や、やってられるか! 俺は逃げるからな! ぐげっ!?」
他の仲間があっさりやられたことで、動揺した男がリーダーの言葉を無視して逃げようと背中を向ける。
私は無言のまま、倒れた男に刺さったナイフを抜き取ると、怯えて逃げ出そうとする男へとナイフを投げ、背中に吸い込まれるように刺さり血だまりを広げながら絶命する。
「お、おい! この女の命を助けたかったら、おかしな真似するんじゃねぇ!」
「助けて……」
一瞬のうちに四人とも殺されたのを見た男は、怯えて動けないエミーの首にナイフを当て、震える声で脅迫してくる。
「はて? 私は最初からどうぞと言っていたではないですか、それとも言葉が分からないほどに馬鹿なのでしょうか?」
「く、来るな! 近寄るんじゃねぇ!!」
笑顔のまま、ゆっくりと男へと近付いていくと、私の雰囲気に飲み込まれた男は青ざめ、ナイフを持つ手から怯えて震えていることが見て取れる。
「そんなに怯えて可哀想に……怖いなら辞めてしまいなさい、きっとそれが救いになるはずですよ?」
「やめ……や……ゴフッ……」
手の届く範囲まで近付いた私は、笑顔のままナイフを持つ手をそっと掴むと、男は抵抗らしい抵抗を見せることなく、ナイフを胸に生やし絶望的な表情のまま息絶える。
「助かりました~、酷いです、なんで見捨てるみたいな事を言ったんですか~?」
助かった瞬間にペタンと座り込み、余程怖かったのか震える声で聞いてくる。
「ああ、簡単な話ですよ、相手を油断させるためです、真っ向勝負なんて馬鹿のすることですよ」
「そ、そうだったんですか~、捨てられたのかと思って、怖かったですよ~」
(まぁ、実際はどんな絶望的な表情を浮かべるのかなと興味があったのは事実ですが、知る必要はないでしょう?)
小さく笑いながら、足元のナイフを拾い上げる。
「さて、残りの気絶している方々にも退場していただきましょうか」
『カカカ、容赦ねぇなぁ』
私の発言に、ケルがケタケタと笑い声をあげるなか、気を失って倒れている山賊達の胸に躊躇なくナイフを刺していく。
「そんな……酷すぎます……無抵抗の人間を殺さなくても……」
山賊達が殺されていく姿を呆然と見つめているエミーは、口元を抑えるだけで動けずにいた。




