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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
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4話 勇者っ娘に目覚めの……

 「んんっ~、むにゃむにゃ……負けませ~ん」

「………」

『おい、ムクロ様、黙ってないでさっさと起こせよ、起きる気配ないぞ、この勇者っ


 息を吹き返してから既に一時間は経過している、しかし、エミーは起きるどころか、寝言を言いながら、剣を大事そうに抱きしめ、気持ちよさそう寝息をたてている。


 あんなにギュッと剣を抱き締めて切れないのだろうかとか、何に負けないのだろうかとか、色々考えてしまうが、ケルの言葉でようやく起こそうという気が起きる。


「ライトミルさん、ライトミルさん、起きてください」


 肩を揺りながら声を掛けるも、目を覚ます様子はない。


『おいおい、優しすぎんじゃないのムクロ様? こう、ガツンといってやれ、どうせたんこぶすら出来ねぇよ』

「なかなか過激なことを言いますね、それより、たんこぶすら出来ないとは、硬いのですか?」


 ケルのおちょくるような台詞に苦笑いを浮かべながら、気になった部分を聞き返す。


『少し違うな、硬いんじゃねぇよ、触ったらわかんだろ? プニプニだ、お肌もすべすべだ、もう誰もが憧れるもち肌だな! と、そうじゃなかったな、そいつは神の加護でな、肉体に傷一つつかねぇんだ、まぁ傷は付かなくても死ぬけどな、実際に棺の中だし、ここ墓地だし、こいつ死体だし』

「なんか性格? 少し変わってきてません? まぁいいですけど、なる程、それで肉体が腐ることもなく保存されていたんですね」


 最初に会話したときから、やけに軽口になったケルに、首を傾げるも、すぐに切り替え、エミーの肉体が残っていた理由と、亡くなった理由に納得する。


『性格なんて、コロコロ変わるもんだぜ、男心は秋の空ってな、それとも、月日変われば気も変わるってか? カカカ!』

「多分、それだけではないですよね?」

『肯定だ、まぁ、情報の更新の中にはそう言うのも含まれてたんだ』


 やはりケルの性格? の変化に女神様も関わっていたようだ、きっと、この光景でも見ながら笑ってるのだろう、無性に気になり質問をする。


「そう言えば、女神様は今何をしているのです? まさか、こちらの様子を見ているのですか?」

『今は見てないな、ちょい待て……ヘル様な、今若い男衆と……』

「あ、それ以上はいいです、聞きたくありません、結構です」


 ケルの言い方で、ナニをしているのか察し、言い切る前に遮ってしまう。


「えっと~、男衆と何してるんですか~」

『決まってんじゃねぇか、男と女がするって言ったら、激しい運動だよ、プロレス、一対多だけどな、ヘル様は余裕らしいぜ』

「は、破廉恥です~」


 私が遮ったにも関わらず、若い娘の声が質問してきて、ケルがとても活き活きとナニをしているのか話し、質問した娘は両手で顔を隠し、恥ずかしそうにイヤイヤしている……。


(何ですかこの状況、と言うよりいつ起きたんですこの娘)


「ライトミルさん? いつ目覚めたんです?」

「えっと~、そのブレスレットさんが性格なんて~って言った所からですね~」


 少女が人差し指を頬に当てて考えるポーズを取ると、すぐに私の腕のブレスレットを指差して答える。


『何だ? やけにポワポワした勇者っ娘だな、こんなのが強いのか?』


 エミーの雰囲気が苦手なのか、骸骨の目をチカチカと赤く点滅させながら、挑発している。


「そうでしたか、起きたなら声を掛けてくれれば良かったのに」

「いえ~、楽しそうにお話ししていたものですから~」


 エミーはケルの言葉を聞こえていないかのように無視し、私とだけ会話する。


『おーい、無視かー、会話に混ぜろー』

「そう言えば~、何故わたしの名前を知ってるんですか~?」

「何故、ですか……ライトミルさん、後ろを見てください」

「何でしょ~?」


 名前を知られていることが不思議だと首を傾げてきたため、後ろを指差し見るように言うと、振り返ったエミーが固まってしまう。


「こ、これは? 何ですか~?」

「見ての通り、ライトミルさんの墓石ですよ」

「酷い冗談はやめてくださいよ~、わ、わたし死んでなんか居ませんよ? だって魔王に海に沈められて気を失ってただけですし~」


 信じれないのか、首をフルフルと激しく振り、認めようとしない。


「残念ながら、100年前に亡くなってます、今もライトミルさんを掘り返して、蘇生したところですから」

「そうでしたか、わたし、魔王に負けちゃったんですね~」


 否定をするエミーに追い打ちを掛けるように事実を告げる。

 どうしようもない事実に納得すると、自分が死んだ事よりも、倒すべき魔王に負けたという事が悔しいのか、そう呟き、涙を浮かべ俯いてしまう。


「でも、泣いちゃいけないですね~、だって、負けた人が偉そうに泣く権利なんて……ふぐっ……ぐす……ない……うぅ……ですから」


 すぐに顔を上げ、後から後から流れる涙をひたすら拭いながら、強気に作り笑いを浮かべてくるが。


「あれ? 涙が止まりませんね……おかしいなぁ~……わたしが、負けたせいで、沢山の人達が苦しんだかも知れないのに……一人生き返るなんてぇ~!!」


 正義感が強いのだろう、今まで必死に泣くのを堪えていたが、ひたすら流れ落ちる涙を拭いきれず、我慢が出来ずにせきを切ったかのように泣き出してしまう。


「そうですね……ライトミルさんが負けたせいで多くの命を失ったかも知れません、ですが、君は蘇ってしまいました、私の手によって……何故蘇ったか分かりますか?」


 あえて突き放したかのような言い方をし、そして教師が生徒に質問をするかのように問い掛ける。


「な、何故でしょうか~?」


 突然の質問に、泣くのを止め、どうしてなのか分からず、困った表情を浮かべている。


「少しは考えていただきたいものですが……まぁいいでしょう、それはですね、ライトミルさんにチャンスを与えるためですよ、魔王を討つというチャンスをね」


 誰から見ても、優しいと思わせる笑みを浮かべてみせる。


「そうだったんですか、こんなのわたしにもチャンスが……与えられるん……ですね」

「勿論ですよ、神はどんな者にもチャンスを与えてくれるんですからね?」

『カカカ、肯定だ』


 悲しみの涙から、嬉し涙へと変わったエミーを冷たい目で見下ろしながら考える、コレから道具のように扱うにしても、落ち込んだままでは困りますからね? と。

 

 泣き止むのを待ってから、そっと近寄ると、微笑みを浮かべながら姫の手を取るかのように、エミーの手を取る。


「蘇生させたのは、まだまだ若い君にチャンスを与えたかったのもありますが、美しい君の力を借りたかったのもあるのです、私と共に魔王と戦ってくれませんか?」

「は、はわわ~、は、はい~、お願いします~」 


 突然の行動と、褒められることに馴れていないのか、顔を真っ赤を俯かせ、コクリと頷いてくる姿を見て、エミーからは見えないように私はニタリと笑みを浮かべる。


『カカカ、ムクロ様はいけない男だぜ、若い娘を誑かして~』


 考えが分かっているのだろう、ケルは特に何も言わず、ただ私を茶化すようにケタケタと笑い声をあげている。


「さて、とりあえず蘇らせた理由は納得してもらえたでしょうか?」

「はい~、わたしはこれからどうしたら~?」

「その前に自己紹介をしておきましょう、こちらだけライトミルさんの名前を知っているのは不公平ですしね」

「あ、お願いします~」


 両手を膝に添えると、月の光を反射させキラキラと輝く金髪を下へと流れさせながら、綺麗なお辞儀をしてくる。


「では……私はムクロ、死者の国を支配する女神ヘル様より召喚された者です、で、こちらのブレスレットがケルです」

『カカカ、ケルだ、よろしく頼むぜ勇者っ娘』

「勇者っ娘は止めてくださいね~、あ、よろしくお願いします~」


 ケルの呼び方に恥ずかしそうに笑うと、再び深々と頭を下げてくる。


「それと、今の状況を話しておきますと……」


 すでに深夜に差し掛かっているため、早く行動を起こすため、かいつまんで今の状況と、どうやってここを抜け出すのかを説明する。


「と言う訳なのですが、戦えそうですか?」

「はい~、任せてください~、戦いならそこらの怪物なんかに負けませんよ~」


 話を聞いたエミーは、剣など到底振れなさそうな細い腕で、力こぶを作る真似をして、自信のある素振りを見せ。


「ええ、頼りにしてますよ、ライトミルさん」

「あ……あの~、ムクロ様、お願いがあるのですが~?」

「私に出来ることなら喜んで」


 何か失敗したのかと考えるも、表情には出さずに笑顔を向ける。


「ありがとうございます~、わ、わたしの事をエミーと呼んで欲しいんです~、べ、別に深い意味はないですからね~」


 顔を真っ赤にして、胸の前でパタパタと手を振っている。


「分かっていますよ、コレからよろしくお願いしますね、エミーさん」

『和気あいあいとするのはいいんだけどよ、怪物の活動時間になったみたいだぜ』

「そのようですね」


 ケルの言葉で、すぐに耳を澄ませると、遠くの方から怪物の唸り声が響いてくる。


「あの声が~、例の怪物なんですね~?」


 同じように声が聞こえたのか、表情を引き締めると、周囲を警戒している。


「ええ、かなり手強い相手ですので、気をつけてくださいね」

「はい~、もちのろんですよ~」

『カカカ、この勇者っ娘は本当にやる気あんのか? 気が抜けちまうぜ』


 軽口を言い合ってはいるが、すでに怪物のテリトリーなのだろう。纏わり付くような殺気に全身が重くなったかのように錯覚してしまう。


「今回は怪物の鍵を奪わず、速攻での退治を目標にしますが、よろしいでしょうか?」

「わたしは大丈夫ですよ~」


 準備が出来ている事を確認した私は、少し先をハンマーを引きずりながら歩く怪物を視野に入れると、音を立てずに立ち上がる。


「では……作戦開始!」


 号令と共に、私とエミーは姿勢を低くして怪物に向かって疾走していく。

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