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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
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3話 ケルの能力講座

 闇も払われ、薄暗いだけの墓地に変わった頃、太陽が昇ってくるのを地面に仰向けになって見上げている。


「あー、あちこち痛い……でもまぁ生きてるだけ儲け物ですかね」


 一晩寝転がっていたおかげか、全身に走る痛みもマシになり、ようやく立ち上がる。


「あの時は上手くいくとは思わなかったですが、私の悪運はまだ尽きていないようですねぇ、思い出しただけでもゾッとします」


 あの時、怪物が手を伸ばして来るのを終わったと諦めそうになったが、ある可能性が閃き、とっさに鍵を怪物の後ろへ投げつけた瞬間、手を引っ込め鍵を拾いに行ってくれたおかげで九死に一生を得ることとなった。

 その可能性も、怪物が大事なものだと、さんざん叫んでいたからであり、でなければ、浮かぶ事すらなく握りつぶされていたかもしれない。


「それにしても、一か八かの行動に移しましたが、まさか本当に鍵の方が大事だなんて、何で鍵がそんなに大事なんでしょう、番人だからですかね?」


 あの怪物の必死な様子を思い出し、首を傾げる。


「さて、命は拾いましたが、このままでは先に進むこともなく、ここで野垂れ死んでしまいますね……どうにか手はないものでしょうか」


 怪物をどうにかする方法はないかと思案するも、いい案がまったく浮かんでこず、困ったときの癖で耳を触り。


「……あっ」


 腕を上げたことで、髑髏のブレスレットが視界に入り、女神様から能力スキルを授かっていたことを思い出す。


「すっかり忘れていました、と言っても、使い方が分からないのですが」


 思い出したものの使い方が分からず、髑髏のブレスレットをいじり回していると、何処を触ったのか分からないが、カチッと言う音と共に、ブレスレットの髑髏部分の目が赤く光りだす。


『アシスタントシステム、ケルを始動します』

「いきなり何ですか!?」


 突如、ブレスレットから無機質な声が聞こえる。


 予想外の出来事に、思わず疑問を口にすると、それに対しての答えが返ってくる。


『質問に答えてやろう、装着者様がケルの起動を行ったんだよ』


 先程の無機質な声から一変し、陽気な声で喋り始める。


「ケル? とは、何でしょう?」

『質問に答えてやろう、ケルとは使用者をサポートするためのアシスタントシステムだ』

「アシスタントシステム?」


 聞き慣れない言葉の連続であり、その度に疑問を口にすると、一息の間もなく答えてくる。


『質問に答えてやろう、アシスタントシステムは、装着者の能力使用の手助け、また、ヘル様より開示されている情報の範囲での回答をするケルの事を指すんだ』

「つまりは、ケルを使えば、女神様の能力の一部を使用できるということでしょうか?」


 いまいち理解が出来ず、ケルに質問をする。


『質問に答えてやろう、正確には違う、ヘル様の能力はケルの事で、一部とは女神様が知りえる情報の中でも閲覧許可されているものの事を言ってんだ』

「なる程、つまり女神様が言っていたのは、このブレスレットでケルが使えると言うことですか」

『肯定だ』


 ケルとのやり取りで分かったのは、このブレスレットには、女神様のケルという能力を使用の権限を持ち。


 このケルからは、女神様が持っている情報の中でも、私に教えられると判断した範囲での情報なら聞くことが出来る、と言う事らしい。


「それでは、装着者自身の能力と言うのは? そんなもの持っていなかったと思うのですけれど」

『質問に答えてやろう、装着者の能力ってのは、この異世界への転生に成功した際に得られるものの事を指してるんだ』

「どんな能力を得られるかは決まってるのでしょうか?」

『質問に答えて……』

「あ……その前に、その質問に答えてやろうって言うのやめてもらえます? 話しづらいですから」


 回答前する際の台詞のせいで会話しにくい為、止めて欲しいと伝えると、一瞬の迷いもなく返事が返ってくる。


『承諾した、次回より省略するから喜べ』

「ありがとう、助かります」


 要求をあっさりと受け入れてもらえたことに、少し拍子抜けしているうちに、質問の答えを喋りだす。


『では、さっきの回答だ、得られる能力は召喚した神の性質に近付く傾向があり、現在の装着者様は死に関係する能力を得てるいるようだ』

「どんな能力か教えてもらっても良いですか?」


(この能力で怪物を倒せるなら、早く知っておきたい情報ですね)


『装着者様の得ている能力名は “ネクロマンサー” 効果は死者をアンデットとして復活させる事が可能、また装着者様より弱い魂を持つ死霊を操り、別の器に入れることも可能だな』

「その死者って言うのは、ここにある遺体でも可能でしょうか?」

『アンデットにする事が可能なのは、肉体が残っていること、その肉体から魂が離れていない事という条件がある、ここに条件を満たしている遺体は一体のみ存在しているな』

「何で一体だけでも残ってるのか不思議ですが、それならアンデットに出来るんですね?」

『肯定だ』


(一体残っているのは僥倖でしたね、死んでから時間が経った遺体は魂が離れてアンデットに出来ないみたいですし、あ、もう一つ死霊を入れるとか言うのもありましたか)


「連続で質問して悪いのですけれど、死霊を死体に入れることは可能ですか? アンデットと死霊入り死体ならどちらの方が強いのでしょうか?」


 日本人だからなのか、いや、関係ないかも知れないが、質問ばかりしていると何故か申し訳ない気持ちが浮かんでくる。


『気にすんな、回答だが、死霊を死体に入れ操ることは可能、死霊のままでも操ることが可能だ、能力としてはアンデットの方が遥かに強力になるな、理由を聞くか?』

「お願いします」 

『死霊だと、命令をしなければ動かない人形になるのに対し、アンデットとして再び動けるようになった者は、自ら思考し動けるから、こっちの方が強くなるんだ』

「なんだかややこしいですね、つまりは死者として蘇らせても、生きていたときとなんら変わりはないと言うことでしょうかね?」

『肯定だ、アンデットとして復活しても、記憶と能力は引き継がれているから、心臓が動いていない事と、装着者様に逆らう事が出来ない以外は変わりはない』


(と言うことは、生前の強さが、アンデットとしての強さと言うことですか、なら勇者の死体ならコレほど頼もしい者はないですね)


「なる程、ありがとうございます」

『良いって事よ、質問に答えるのは優秀はアシスタントなら当然のことだ、では殺人鬼様、アンデット化可能な勇者の遺体までのナビゲートをしてやろうか?』


 会話の中にさり気なく混じっていた為、聞き間違えたのかと思い、聞き返す。  


「今、殺人鬼って言いました?」

『肯定だ、先ほど情報の更新をされてな、装着者様は以前、殺人鬼と呼ばれていたみたいだからな、呼び方を変更した』


 その情報は、女神様がからかうのに追加したとしか思えず、渋い表情を浮かべ拒否をする。


「殺人鬼は止めてください、活動しにくくなるので、ムクロと呼んで下さい」 

『承諾した、で? 目的地までナビゲートするか?』


 能力とは言え、目覚めたばかりのブレスレットが、この広大な墓地の何処にあるか分かる事が疑問として口に出てしまう。


「よく広大な墓地の中なのに分かりましたね」

『ムクロ様が歩き回ってる時に、情報が収集されているからな、その中の情報にアンデット化可能な勇者の遺体があったんだよ』 


(歩き回っているときは、まだ起動していなかったと思うのですが……)


「起動されていなかったのに、情報を収集出来ていたんですか?」

『ムクロ様の記憶から情報を読みとることが可能だからな』


(私のプライバシーは存在しないとか言われそうですが、確認をしておきましょうか)


「なる程、で、私のプライバシーは……」

『存在しねぇな』

「ですよね……ええ、女神様からしてそんな方でしたからね」


 ケルに即答され、肩を落としため息を吐き出す。


「もう良いです、勇者の遺体まで案内して下さい」

『承諾した』


 ケルの指示に従い、墓地を歩き回ること数時間、ようやく到着した場所は。


「まさか最初に転移した場所にあるとは、何処の墓に眠っている方なのですか?」

『カカカ、そこのエミーと刻まれた墓地だな』

「この墓ですね、まさかこんな若い子を蘇らせるのですか……」

『殺人鬼様が若い命は散らさせたくないとか考えてるのか? コレより小さい子すら手をかけたムクロ様が?』


 冗談だろ? と言いながらケタケタと笑っている。


 そんな事を言われなくても分かっている、それに可哀想などと思ったのではなく、最初見たときもそう、何とも言えない気持ちを感じていたのも、私自身の手で殺せなかったこと(救えなかったこと)が残念でならないだけなのだから。


『早く掘り返しちゃいな、いざ墓荒らし!』


(はぁ、まさか本当に墓荒らしさせられるとは、掘る道具もないし、きっと手なんでしょうね……)


「一応聞きますが、道具はあります?」

『カカカ、あるわけねぇ』

「ですよねぇ」


 深く埋められた棺を、手で掘り返すのだと考えると、泣きたくもなってくる。


「それじゃ、掘り返しますよ……ケルも手伝ってくださいよ」

『ムクロ様はブレスレットに何求めてんだよ』


 ふざけた会話をしながら、作業を進め、日が完全に落ちる頃、ようやく棺を掘り起こすことに成功する。


 棺の中をのぞき込み絶句してしまう。


『お疲れさま、どうだ? 何処か傷んでそうか?』

「いえ、痛むどころか、今さっきまで生きていたかのような美しさです、まるで時が止まっているかのように」


 棺の中の少女は、闇の中でも金色の髪を輝かせ、白い服に包まれた健康そうな肌には一切の死体特有の青白さが存在しない、ただ寝ているだけなのだと言われてしまえば、納得をしてしまうほどに綺麗な状態で入っている。


 しかし、それはおかしい。


「ケル……今は何年ですか?」


 その違和感の正体を確認するため、震える声で問い掛ける。


『ちょい待て……今はアルカディア暦165年だな、それがどうした?』

「この子が亡くなっているのが、およそ100年前なのですよ、それだけ経っているのに、朽ちていないのです、ましてや魂が残っているなんて、どう言うことでしょう?」

『あ~、その勇者っ、もしかしたら不滅の神から召喚された奴かもな、剣とかでっかい胸で抱いてるだろ』


 ケルの下ネタをスルーし、エミーの胸元を見ると、確かに銀色の剣を抱いている。


「抱いていますね、これは?」

『不滅の神が勇者っに授けた不滅のつるぎ “デュランダル” まぁ、不滅の勇者の証みたいなもんだ』

「私が着けている、ケルみたいなものですね」

『肯定だ、さて、若い娘に見とれてないで、さっさとアンデット化するぞ』

「見とれてませんよ……」


 と言うものの、実際は少し見とれてしまっていた、こんなにも美しい死体・・・は見たことがなかったからだ。


「ケル、やり方を教えてください」

『承諾した』


 即答された瞬間、ネクロマンサーの情報をむりやり頭の中に押し込まれているような、気持ちの悪い感覚に片膝をついてしまう。


『カカカ、ムクロ様情けないぜ、こんな情報くらいで膝をついてたら、コレから先の情報なんて発狂もんだ』

「この先が……あるんですか……それは楽しみですね……」


 まだまだ地獄はコレからだと、笑いながら言うケルに、汗をにじませながら笑みを浮かべ。


『そうかい、そうかい、楽しみにしてるぜ、では始めよう』

「我は魂を縛るものなり、我は死を弄ぶものなり、故に死者の安らぎを奪わん」


 呪文が黒い文字となり周囲に現れ、怖気の走る絶叫を響かせながら、死体へと巻きつくと身体に溶けるように消えていく。


『成功だ、目覚めるぞムクロ様』


 その言葉と同時に、死体だったものが、小さく身じろぎするのを視界の端に捉えていた。

遅くなってしまいました……楽しめてますか?

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