表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
3/26

1話 殺人鬼は墓地から出たい

 魔法陣の光が消え光が収まると、地獄の風景が一変し見覚えのない場所に立っていた。


 どうやら異世界へと問題なく到着したようです。


 キョロキョロと周囲を見渡し疑問が頭に浮かび上がる、もしかしたら頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるかも知れない、それくらい自分のいる場所が不思議でならない。


「なぜ私は墓地に立っているのでしょうねぇ。しかも、太陽の位置からしてまだ真昼のはずなのにこの墓地やけに暗いですし、こんなホラーな演出はいらないのですが」


 空を見上げても太陽は真上に上がっている事を確認できるというのに視線を下ろし墓地を見渡せばあまりの薄暗さに不気味さがより一層強まっている。


「あの演出が好きそうな女神様なら、わざとこの場所に送り込んでいてもおかしくなさそうですね。何の演出なのか理解しかねますが。まぁ、薄暗くても私には関係ないですし、むしろ居心地がいい感じがするくらいです。とりあえず今回の目的の整理をしましょうかね」


 ここに来るまでの女神との会話を思い出していると足りない部分が多いことに気付く。


「そう言えば肝心の情報などは聞けてないんですよね、ちゃんと聞いておけばよかったでしょうか」


 此処は何処なのか、使える能力スキルは何なのか、目的地は何処なのかなど考え出せばキリがない。


 わざわざ召還するなら普通は街などに転移させて、そこから情報を集め、仲間を集め、魔王を討伐しましょうとなると思うが、いきなり墓地に放り出してアフターケアもなしとは酷すぎる対応だと文句も言いたくなってくる。


 右も左も分からない異世界だからと言うこともありますが、何があるか分からない墓地のど真ん中でいきなり立ち往生してしまうのも面白くない。

 となると情報を足で集めるしかないですね。


「とりあえず、墓地の中を見て回ることにしましょうか、何か分かるかも知れませんし」


 何処までも墓が並んでいるのではないかと錯覚しそうなほど広い墓地を適当に歩き始める。



 あれから、しばらく歩き回って見たものの、先程から勇者と書かれた墓石ばかりが建てられている。

 ここは勇者の為の墓地なのかもしれない。


「何処の墓石を見ても、『何とかの勇者、魔王に敗れし勇者ここに眠る』と彫り込まれていますね、私も将来はここに名前を連ねるのでしょうか?」


 自分の名前が刻まれた墓石を想像するも、それはあり得ないなと苦笑する。


「まぁ、私みたいな者に立派な墓は似合わないという事ですかね」


 その後も、墓石の名前を次々と読み上げながら歩いていくと墓石が無くなり、私の背より高い柵が見えてくる。


「ここがこの墓地の端っこですね……ほぅ、柵の先が明るいと言うことは、この墓地には何かしらの魔法を施しているという事でしょうかねぇ」


 近寄っていくと、沈丁花をモチーフにした意匠を凝らした黒い柵の先は明るく、隙間から指を出そうとすると、柔らかい膜みたいなものに弾き返される。


「これは何なのでしょう、何とも癖になる触り心地ですね……」


 弾き返されるのが面白く、何度もポヨン、ポヨンと膜をつつく。


「と、こんな事をしている場合ではなかったですね。後は、出入り口を探しましょうか」


 墓地をぐるりと一周したあと、再び最初に居た場所に戻ってきた私は分かった情報を整理する事に。


 まず、ここは魔王に敗れた数々の勇者が埋葬されている墓地であること、見てきた墓石には全て勇者と刻まれていたので間違いはないでしょう。


 次に、此処が薄暗いのは結界のようなものが張られているからだと言う事。


 そして、重要なのがここの墓地には出入り口のようなものが見当たらないこと、柵に沿って一周したが出入りする為の扉が見つからなかった。


「コレは困りました。まずここからでる方法が分からない時点でいきなり手詰まりではありませんか」


 ため息を吐き出した私は次にする事が思いつかず、近くの墓石へと近寄り、何となく書かれている文字を読み上げる。


「エミー・ライトミル、十六歳、享年アルカディア暦65年、こんな若い娘でさえも勇者として駆り出され命を落としているんですね……この娘は本当に勇者などやりたかったのか、今となっては分からずじまいですか」


 幾人もの命を奪ってきたが、他人が奪った者の名を見るとなんとも言えない気持ちになる。


「そう言えば、ここって出入り口がないにも関わらずとても綺麗なんですよねぇ。全ての墓石に土埃が掛かっていないなんて、おかしいですね」


 しゅうとめのごとく目の前の墓石に指を滑らせるも汚れ一つ付かない事に首を傾げる。


「つまり、掃除をする者が必ず居るという事……この広い墓地をしらみ潰しに探すしかないですかね」


 目を凝らしても端っこの見えない墓地で探し回ると思うと、少々げんなりとしか気持ちになるも、ここで立ち止まっている訳にもいかず、再び墓地の中を散策することに。


「何も見つからない。いや、見つからないというより広すぎて見つけられていないのでしょう」


 墓石の数が多すぎて景色が変わらず、まるで同じ場所をグルグルしているような錯覚を覚えてしまう。


「いったい何人の勇者が亡くなったのやら……これ、私勝てるんですかね、いやまぁ死ぬのは恐くないのですが」


 コレだけの勇者が戦って勝てない相手に、私のような者が勝てるのか疑問が浮かぶが、どうでもいいかとすぐに思考を切り替える。


 太陽が半分ほど隠れる頃、よくやく墓以外の見覚えのない場所が見つかる。


「これは、木製の小屋、ですよね? もしかして墓守の小屋でしょうか、何か手掛かりが見つけられるかも知れませんね」 


 室内に入ると狭い部屋が視界に入ってくる。


 右手側を見ると簡素なベッド、正面には簡単な食器、小物類を入れている棚があり。

 左手側には小さな木製の机、その上には書きかけの日誌がおかれている。


「おかしいですね。つい最近まで生活していたような生活感がある……にも関わらず、小屋の外に足跡はなかったですし、とりあえず物色させてもらいましょう」 


 ベッドへと近寄り、ベッド下を覗き込むと、何やら雑誌が置かれている。


「イチャイチャパラダイス……墓守は男だったと。ベッドの下にはコレだけですか、なんて下手な隠し方なんでしょう、馬鹿なんですかね」


 雑誌をベッドに放り投げ、棚の方へ移動する。


「こちらには食器、筆記用具、何かの部品、ゴミ……指輪? とりあえず貰っておきましょうか、何かに使えるかも知れませんし」


 装飾のない黒い指輪をポケットに入れると、棚を漁るのを手を止める。


「今更ながらゲームの勇者はこんな事を平然としているんですよね。完全に泥棒じゃないですか、それ以前に住人の前で堂々とやってるのですから強盗ですか、よく住人が怒ってこないものです」


 ふと勇者が民家に押し入り、住人に見守られながら家の中を漁っている姿を想像してしまう。

 少し疲れてきたのかついつい思考が横道に逸れていく。


「いや、怒らないんじゃなくて、怒れないんですね、勇者に逆らったら勝てませんし」


 しばらく考えたあと、住人が勇者に怒らない理由を理解し、苦笑をこぼしながらメインの机の前に立つ。 


「さてと、日誌から読んでみましょうか」


 椅子に座った私は、机にある日誌を開き目を通す。


 すると、何も書かれていない日付の下に、文字だけが書かれていた。


 日付がないため分かりにくいが、ここの墓守が赴任ふにんしてきた時に書き始めたであろうページから読み始める。


ーーー


 月 日 晴れ


今日から、この勇者様たちが眠る墓を受け持つことになった。

頑張ろうと思う。


 月 日 曇り


ここに住み込みを始めてから、もう一週間ほどが経過した。

広い墓地だが、勇者様の為と思えば巡回も悪くないものだ。


 月 日 雨


最近になって気がついたのだが、何かこの墓地には住み着いて居るみたいだ。

この間も巡回中に何かを引きずる音と、唸り声が聞こえてきた。


ーーー


 ふむ、何やら雲行きが怪しくなってきた、この墓地は結界で守られていると思っていたのだが。


 とりあえず続きを読めば分かると思い、続きを読み始める。


ーーー


 月 日 雨


やっぱりここには何かが住み着いて居るようだ。

姿を見かけることはないが、最近やたらと近くで、唸り声を聞いている気がする。


 月 日 曇り


声が聞こえる頻度と、出てくる時間帯を調べた。

朝や昼の時間帯には時折聞こえる程度だが、夜になると一列巡回する度に引きずる音と唸り声が聞こえる。


ーーー


 やはり何かがこの墓地に住み着いているのは確定となりそうだ。


 この墓守も逃げ出せばいいものを、律儀に毎日巡回していたと思われる。


 精神が狂って来ていたのだろう、でなければ、逃げようという思考を持っていてもおかしくはない。


ーーー


 月 日 はれ


わたしは、キョウ、助けて欲しい、でアってしまった、あれは! ジュンカイしないと、人間じゃ、ナい


ーーー


「ここで途切れてしまってますね、このあと怪物に殺されでもしたのでしょうか」


 日誌を閉じるなり、背もたれにもたれ掛かり、嘆息する。


 ここを抜け出す方法は分からずじまい、また、下手に動き回れば怪物にも出会ってしまうかも知れないと言うこともあり、次の行動を決めかねてしまう。


「ここでまた行き止まりですか……早くこの墓地から抜け出したいのですが」


 ぐっと背伸びをして、反り返っていると、ベッドに放り投げた雑誌の隙間から紙がはみ出しているのが見え。


「ん?」


 ベッドに近寄り雑誌から紙を抜き取ると、ここから出る為の手順が書かれているメモだった。


「まさか、こんな所に挟んでいるとは予想外でしたね……なになに」


ーーー


・墓地から出るときの手順


深夜に出歩く番人から鍵を受け取る。


鍵を受け取ったら、番人から取り戻される前に出入り口を見つける。


鍵を持っている状態であれば扉が分かる。


ーーー


「この番人とやらは考えるまでもなく、日誌に書かれていた怪物のことでしょうね、墓地を徘徊する怪物の正体が番人ですか……鍵を受け取るって言っても、絶対穏便に受け取れないですよねぇ」


 ここに送り込んだ女神様は、こうなると分かってて送り込んだのか、まさか墓守が居るし、大丈夫だろう、なんて考えで送ったのではないかと考えてしまう。


「殺人鬼だからって、こんな扱いはひどいと思いますよ? せめて、普通に送り出して欲しかったです。まぁないものねだりをしても仕方ありませんし、夜中になったら行動開始しましょうかね」


 とりあえずは夜中になるまで眠ろうと決め。


 次の行動を決めた私はベッドへと寝そべると、意識だけは警戒させながら休むべく目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ