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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第一章 最初の刺客
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22話 デュラハン討伐クエスト(中)

「成る程、分かりました。では、そこへ誘導しておいてください」


 ぞろぞろとギルドを後にする冒険者達に混じり生気のない男が一人近づき小さく耳打ちをしてくる。

 その報告に無意識に笑みを浮かべた私は男へ簡単な指示を出すと無言で頷いた男は瞬く間に他の冒険者に紛れ姿が見えなくなる。


 ふと賑やかな通りに不自然に通行人が避けて通る場所があるのを見つけてしまう。

 どうやら着ぐるみ姿のテディを避けて出来たもののようだ。


「こうやって見ると完全に不審者ですね。私も無関係なら完全にスルーしていましたよ」

『カカッ! それには同意するが、恐らく通行人にテディベアちゃんの姿は見えてないと思うぜ』

「どういうことでしょうか?」

『テディベアちゃん自身になのか着ぐるみになのかは知らねぇが、認識阻害辺りの魔法が働いてるようだ。見てみろ、通行人がちらりともテディベアちゃんの方を見てねぇだろ?』


 ケルに促され通行人を観察していると確かに誰一人としてテディを見ることもなく避けている事に気付く。


「確かに通行人には見えていないようですね」

『それよりいいのか?』

「何のことです?」

『カカッ! レディを待たせるたぁ、悪い男だねぇ』


 ケルの言葉にハッと空を見上げると、既に太陽が少し傾き始めていた。

 思った以上に時間を取られてしまっていたようだ。


「あ、ムーちゃん!」


 私に気づいたテディがパァと花を咲かせたかのように嬉しそうなオーラを漂わせると手を振りながらとてとてと私の側へと駆け寄ってくる。

 一瞬、主人を見つけて喜んで駆け寄ってくる犬を想像してしまったのは内緒にしておきましょう。 

 

「待たせてしまったようですね。すみませんでした」

「大丈夫だよ自分もさっき来たばかりだから」

「……それは良かったです」

「ん? どうかした?」


 待ち合わせしたカップルのようなやり取りに違和感を覚え僅かに黙り込んでしまう。

 その僅かな間を不思議に感じたのか首を傾げるテディ。

 

「いえお気になさらず。とりあえず歩きながら得た情報を話し合うとしましょうか」

「はい! えっと、結論から言うと収穫ゼロでした。ごめんなさい」


 隣を歩くテディが情報を得られなかったと開き直った口調で報告をしてくる。

 もとより有益な情報を手に入れられるとは思っていなかったが、ここまで明るく言われると嫌味も言う気にならないのだなと苦笑する。


「そうでしたか。こちらはギルドに協力を取り付けましたので、人海戦術で見つけられるかと思いますよ」

「ほんとう!? よかった、これで助かるかもしれないんだね」


 私の報告に嬉しそうな声を上げるテディ。――突如、甲高い電子音が鳴り響く。


「ん? いったい何の音でしょうか?}

『カカッ! ムクロ様の懐から聞こえているんじゃないか?』

「ああ、もしかしてこれでしょうか」


 ケルに指摘され懐から取り出すと音の発信源はギルドカードだった。

 止めようとあちこち触って確認するも使い方が分からず、いつまでも鳴り続けるギルドカードを汚いものでも触るようにつまみ上げ首を傾げる。


「止め方が分かりませんね」

『おいおい、それでも若者か? こんな事も分からないなんて恥ずかしすぎるぜ?』


 扱い方に困る私をケルはいつものように挑発してくる。 

 

「冗談言ってると酸を掛けて溶かしますよ、早く使い方を教えなさい」


頭に響く甲高い電子音に苛立ちもつのり、些細な挑発にも過剰に反応してしまう。


『カカッ! お~怖い怖い、もしかしてムクロ様は自分の腕も溶かすつもりなのか? カッ!? 分かった! お、教えるから離してくれ!』


 馬鹿にするような笑い声に苛立ちが限界に達した私はケルの頭部ともいえる飾りを掴み力を込めていくとミシリと鈍い音が聞こえ始めた。

 その音に焦るケルの言葉にようやく苛立ちも落ち着き手を離す。


「まったく、初めからそういえば良いのですよ」

『カカッ! ムクロ様は少し余裕がなさ過ぎると思うぜ?』

「何か言いましたか?」

『んぐっ……、何もねぇよ。止める方法はカードに向かってストップっていや止まるぜ』


 軽口を言うケルを睨むとうめき声の後、不満そうな声で方法を話しだす。


「ストップ……本当に止まりましたね。こんな簡単な言葉なら余計なことを言わず教えてくれれば良いものを」

『カカッ! ただ単に教えたら面白みがねぇだろ。それで内容は何なんだ?』


 本当に止まるのを見て呆れ混じりに文句を吐き出す。

 文句を軽く受け流したケルはメッセージを確認を促してくる。


「分かっています。なになに……テディさん良かったですね。デュラハンが見つかったようですよ」

「やったー! これで助かるんだ!」


 喜びから飛び跳ねるテディに厳しい現実を伝えることになる。


「それが、戦況が良くないようなので急いで私達も向かった方が宜しいかも知れません」

「ふぇ!? じゃ、じゃあ急がなきゃ」

「場所はこの町の外。開けた草原のようですね。行きましょう」


 それを聞き途端に焦りだすテディの言葉に頷いた私はギルドカードに記されたマーカーが指す示す方向へと走り出した。


ーーーーーーーーーー


「こんな酷い……うっ」


 あまりの光景に吐き気を催したテディが地面にうずくまってしまう。


 一面血の海に染まった草原には無数の四肢や首を無くした肉塊が無造作に転がり。錆びた鉄のような臭いが充満する中を首なし馬に乗る黒い甲冑を身に纏ったデュラハンが自身よりも大きな鎌を手に逃げ惑う冒険者たちを蹂躙していたからだ。


「おや、来るのが少し遅かったようですね」

『カカッ! ヘル様も仕事に追われて不満たらたらだろうぜ』

「忙しいのは嫌いそうですからね、あの女神様は」 


 見回すと何十人と参加していたはずの冒険者は片手で数える程になっていた。

 この凄惨な空間に似合わないケルとの緊迫感のない私達のやり取りにすべての視線が此方へと向く。


「ふむ……逃がした餌に目当てのものが掛かったようだ。我が輩はデュラハン、魔王様直属の配下が一人である。貴殿達の名は?」

「私ですか? 名乗るほどのものではありませんよ」


 震えるテディを一瞥した後、デュラハンは自ら名乗りだす。

恐らく武人のような性格なのだろう、此方にも名前を尋ねてくるのが何よりの証拠だ。


『こいつはムクロ様で、俺がアシスタントシステムのケルだぜ! 覚えとけよ!』


 面倒だからと答えなかったと言うのにケルが自慢げに答えている。

 このブレスレットはいったい何をしているのでしょうか。


「ムクロとケルだな、しかと覚えた。貴殿達も我が輩を討伐に来たのであろう? 遠慮はいらん、掛かってくるがいい!」

『カカッ! ムクロ様、敵からのお誘いだぜ、どうするんだ?』

「は~、仕方がありません。テディさんとの約束もありますし」


 楽しげなケルの言葉にため息を吐き出し。

 悠然と首なし馬の上で鎌を構えるデュラハンへと視線を向ける。


「――ん? あれはもしかして私が蘇生させたコシュタ・バワーじゃないですか?」

『あの魂の縛られ方は確かにムクロ様のコシュタ・バワーだな』


 思わずデュラハンの跨る馬を二度見してしまう。

 何故あの馬に乗っているのでしょうか。


「つかぬことをお聞きしますが、その馬はどちらで?」

「こやつか? 我が輩が此方へ向かう途中、襲撃にあい愛馬を失い困っていたところを助けるかのように現れたのを手懐けたのだ」

「成る程、素晴らしい出会いだったのですね。有難う御座います」


 いくら知能がないとはいえ敵の脚代わりになるとは呆れてものも言えませんね。

 だからといって殺してしまうと後でエミー達に文句を言われそうですし、取り返す方針で行くとしましょうか。


「お待たせしてしまいすみません。では改めて行きますよ」

「構わぬ、さぁ来るがいい」


 開始の掛け声とほぼ同時に矢のように走り出した私は途中で拾いあげた盾を投擲、それをまるで紙を切るかのようにあっさりと両断するデュラハン。

 すぐさま足元のハルバートを掴み懐へと潜り込みがら空きの胴目掛け振りぬくも鎌の柄を使い防がれてしまう。


「流石に余裕といった感じですね」

「ふん、素人の攻撃など恐れるに足らぬわ」


 軽い会話をしながらも剣戟は止まらず。

 デュラハンの鎌による激しい斬撃を受け流しながら隙をうかがうも、逸らせない攻撃を数回受けるだけで武器は砕けてしまい、その度に息絶えた冒険者達の装備を即座に拾い上げ対応していく。しかし、数十回と繰り返す頃にはその武器すらなくなり風圧だけで切り裂かれかねない攻撃を慌てて大きく避け距離を取る。


「それにしても、あれだけの冒険者を相手にさせたと言うのに一切の疲労の色が見えないとは。流石は魔族といったところなのでしょうか」

「相手にさせただと? どういうことだ」


 私の言葉にピクリと反応を示すデュラハンが訝しげな様子で問い掛けてくる。


「なに、何十人と言う冒険者をぶつければ多少は傷を負わせるなり、疲労を蓄積させられるかと思ったのですけど。予想通り過ぎて無駄な作戦でした」

「貴様! 命を何だと思っておるのだ!!」


 命を軽々しく扱う私の所業に血のような瞳で此方を睨むと大気が揺れているのではないかと錯覚するほどの怒号を上げる。


「何をそんなに怒っているのか理解に苦しみますね」


 柄を残し粉々に砕けてしまった剣を投げ捨て軽い調子で肩を竦め。


「貴殿は勇者であろう! 何故、冒険者達をむざむざ死地へと差し向けた! ここまで渡り合えるなら最初から貴殿が戦っておれば無駄な犠牲を出さずに済んだはずだ!」


 私の答えに目を見開いたデュラハンが更に怒気の籠もった叫びを上げ続ける。


「何故、貴方がそんな事を気にするのですか? 敵である人間が減ることは嬉しい事の筈ですが?」

「我が輩達は人間を敵などとは思っていない。人間と神が結託し我が輩達を敵と決め付け排除しようとしているのではないか!」


 どういうことでしょうか、てっきり魔王が配下に命令をして人間を襲っているのだと思っていたのですが。


「ケル、なにやら話が違うのですが? 魔王は人類を滅ぼそうとしているのではないのですか?」

『カカッ! おいおい、ムクロ様ともあろうお方が敵の言葉を真に受けるのかよ。あんなの動揺を誘う決まり文句みてぇなもんだろ? 深く考えるな“敵は魔族でムクロ様は人間の勇者だろ?”』


 ケルの言葉に違和感を感じるもそれに対する答えが分からない私は、その言葉通り深く考えることをやめ敵であるデュラハンへと視線を向ける。

気付けば1年ぶりの投稿です。待ってない人も待っててくれた人も申し訳なく思ったり思わなかったり。

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