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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第一章 最初の刺客
23/26

20話 嘘か真実か

 地面に押し倒されると言う事態から数分後。


 冒険者や一般人で賑わう大きな民衆食堂にて、空から降ってきた奇妙な熊の着ぐるみとテーブルを挟んでいた。

 ウエイトレスが注文した飲み物をそれぞれに配り、離れていったことを確認した私は落ち着いた口調で話を切り出す。


「君は……名前から聞いておきましょうか」

「あ、はい……自分はテディ・フェルトと言います」

「で、突然追いかけられ、空から突撃された私に何か言うことはありますか?」

「そ、そそ、その事に関しては、も、申し訳ありませんでした!」


 殺気すら漂う笑みを見て危険でも感じたのか、摩擦熱でテーブルに火を起こすつもりなのではないかと思う勢いで頭を擦り付け謝罪をしてくるテディ。


 あまりの必死さにそれ以上責める気にもなれず溜め息を吐き出した私は本題を切り出す。


「まぁいいです、それで私を捕まえた理由を聞きたいのですが」 

「えっと……実は助けて欲しいんです!!」

「拒否します」


 指を合わせ躊躇う素振りを見せたかと思えば、割れるのではないかと思うほど強くテーブルへと両手を叩き付け頭を下げて助けを求めるテディ。

 菩薩のような笑顔を浮かべ即答で切り捨てた瞬間、時が止まったかのように動かなくなること数分。


「え……え~!? 内容も聞かずに拒否しないでよ~!」

「や、やめ……止めて下さい、脳が揺れる」

 

 拒否されたことに漸く気付いたのか悲痛な叫び声と共に襟首を掴むと激しく揺さぶってくる。


「聞きます、聞きますから。手を離しなさい」

「ありがとう!!」


 生命の危機を感じ慌てて話を聞く事を承諾。

 明るくなった声と共に漸く解放され、痛む首を撫でながら目で続きを話すよう促す。


「助けて欲しいというのは、ある魔物に掛けられた死の宣告という呪いの解呪を手伝って欲しいんです!」

「死の宣告とは?」

『カカカ! ムクロ様は厄介事を寄せ付ける呪いでも掛かってんのか?』


 テディの説明を聞いた瞬間、今まで黙っていたケルが楽しげな口調で言葉を発する。


「ブレスレットが喋った!?」

『カカカ! あまりのイケボイスだからって騒ぐなよテディベアちゃんよぉ』

「で、ケルは何か知っているようですが、死の宣告とは何なのか説明してくれるんでしょうね?」


 驚いた様子のテディとそれをからかうケル達の会話を遮り、質問を投げ掛ける。


『カカカ! せっかちだと女にもてないぜ? で、死の宣告ってのはな相手の死期を自在に操る呪いって言えば分かりやすいだろう。例えば本来60歳まで生きる人間がいるとする。そいつに三日後に死ぬという死の宣告をすれば……あら不思議、宣告通りにぽっくりってな』

「何て滅茶苦茶な、まるで死神のような力ですね」


 説明された呪いの内容に頭痛を覚えるかのように額を押さえ小さな呟きを漏らす。しかし、そんな強力な呪いを掛けるには何か厳しい条件が必要なのではないかと言う考えが突如として頭に浮かぶ。


「ケル、その呪いの発動条件は何ですか?」

『まぁ滅茶苦茶だよな。確かにムクロ様の考える通り発動には条件がある。1つ、呪いを掛ける相手に姿を見られる事。2つ、心の底から恐怖を抱かれる事。3つ、2つの条件を満たした相手に直接宣告すること、だな』

「ふむ、確実に呪いが成功すると言う訳でもないようですね」

『それでも力ない相手には必殺とも言えるだろう、何せ魔物に恐怖しない一般人なんて早々いねぇからなぁ』

「成る程、理解はしました」


 私達の会話を間抜けな雰囲気を漂わせながら聞くテディへと向き直れば、残っている疑問を解消する為に探りを入れていく。


「さて、会ったのは初めての筈ですが、何故私なのですか? 解呪を専門にしている方やギルドなど他に幾らでも方法はあると思うのですが」

「なんて説明したらいいのかなぁ」


 椅子へと座り直したテディが悩むような素振りに益々疑う気持ちが膨らみ、疑念に満ちた視線を向ける。

 

「何か言いにくいことなのですか?」

「正直に言いますと……一目惚れ、です」

「……すみません、私の耳がおかしくなってしまったようでして、もう一度御願いできますか?」


 予想もしていなかった答えに、浮かびそうになった僅かな戸惑いを冷静な表情で気付かれないよう隠した私は、聞き間違いではないかと聞き返す。


「だ、だから……その、一目惚れしちゃったん、です」


 照れているのだろう、先程からのシリアスな雰囲気を崩すかのように恥ずかしそうに俯き告白をしてくるテディ。


『ヒュー、ヒュー、初対面の着ぐるみを落とすなんて罪作りな男だねぇ!  あぁ、元々罪人だっけか?』

「ケルは黙ってて下さい。燃やしますよ?」

『カカカ! ムクロ様から離れらんねぇのに燃やしたら腕も一緒に燃えちまうだろ? もうちっと脅す言葉を考えた方がいいかもな』

「あはははっ。二人って言っていいのか分かんないけど、凄く仲良しなんだね」

『カカカ! 当然だぜ、共に死地を乗り越えた仲間だからな』

「はぁ……」


 もはや御約束のようになってしまったふざけた遣り取りを見て楽しげに笑うテディの姿に、続けて文句を言う気にもなれず小さく溜め息を吐き思考を切り替える。


「それで、本当にそれだけの理由で解呪を手伝って貰おうと思ったんですか?」

「ムーちゃんは疑り深いね。それだけじゃないよ、実は勇者にしか呪いを受けた自分の姿は見えないって言われたんだ」

『ムーちゃん、ムーちゃんだってよ。やけに可愛いあだ名じゃねえか、カカカ、カ!? 割れる、割れちまう!』


 激しく目を明滅させながら笑うケルを無言で鷲掴み、そのまま砕かんばかりの力を込め握り締めた瞬間、焦ったような叫び声が辺りへと響き周囲が何事かと此方を振り返るのを横目にテディへと話の続きを促し。


「それは誰が言ってたんですか?」

「呪いを掛けた魔物だよ、ムーちゃんも聞いたことあるんじゃないかな。死を予言する者、デュラハンって」


 聞き覚えがある所ではなく、旅の目的でもあり、魔王討伐するならば後々必ず戦うであろう幹部の名前に無意識に口元に笑みが浮かぶ。


「えぇ知っています、知っていますよ。良いでしょう、テディさんの解呪手伝って差し上げます」

「本当ですか!?」

「私が嘘を言うとでも?」

「い、いえ……ありがどう、ありがどう御座いまず」


 余程嬉しかったのだろう、着ぐるみで表情は分からずとも肩の震えや嗚咽から泣いていることが分かってしまう。


「肝心なことを聞いていませんでした。ケル、デュラハンを倒せば解呪は可能ですか?」

『ああ、可能だ。寧ろ、解呪するなら倒すのが一番手っ取り早いだろうな』

「それを聞けて安心しました」


 なら、取る行動は一つですね。


「さて、死の宣告ですが残り何日なんですか?」

「ぐす……っ……えっと、実は今日の夕日が沈む頃が刻限なんです」

「それはまた……急がなくてはなりませんね」

 

 と言っても、何処に居るのか見当も付かないうえに私だけで倒せない確率が高い……エミーが近くに居ないのは痛いと言わざるを得ませんが。


「考えていても仕方ありません。日が沈むまでにデュラハンを探し出し討伐しなくては行けませんからね。まずは別れてデュラハンの目撃情報を探しましょう」

『そうだな、異存はないぜ』

「自分もありませんです」

「では、急ぎましょうか」


 二人の意見に頷いた後、やる事も決まった私達は早速行動に移すべく立ち上がりテーブルに銅コイン数枚を置き食堂を出て行く。

 

「あ、そうでした。集合する時間を決めておきましょう。今は太陽が真上ですから、そうですね……少し日が傾く頃に一度、手掛かりが無くてもギルド前にて集合するとしましょうか」

「分かりました」


 ギルドへと向かう道中、大切な事を決めていなかった事を思い出し、空を見上げ太陽の位置を確認した私はテディへと集合する時間を伝えた後、不安を抱えているのが声からも感じ取れゆっくりと振り返った私は両肩へと手を置き。


「必ず救って差し上げますから、負けずに頑張って下さい」

「はい!」


 真剣な表情で励ましの言葉を掛け、それに力強く頷く姿を見て肩から手を離し。


「ムーちゃんは本当に優しいですね」

「そんな事はありません、ただ困っている人を放置できないだけですよ」


 祈るように胸の前で手を握ったテディの言葉に作った微笑みを浮かべながら善人が口にしそうな返事を返してやり。


「で、ではムーちゃん。自分は向こうを探してきますね!」


 突如上擦ったような声を出したかと思えば、声を掛ける間すらなく土埃を巻き上げながら走り去っていく。


「はぁ、少々疲れましたね」

『柄にもなく優しく接してたじゃねぇか、何だ? 本当に惚れちまったのか?』

「馬鹿を言わないで下さい。そんな訳ないでしょう」


 茶化してくるケルの言葉に冷笑を浮かべれば、今まで店の外で待機していた傀儡を引き連れながらテディが走り去った方角とは反対の道へと歩き始める。


『んじゃ、何でテディベアに優しくしたんだ?』

「理由は簡単ですよ。デュラハンが死を見届けるためにテディの前に現れる可能性がありますから。傍に置いておく為の演技という奴です」

『カカカ! 惚れたって言ってくれた女もムクロ様に掛かったら魔物を引き寄せる道具扱いか。流石は殺人鬼、血も涙もねぇなぁ』


 本当に不思議だと声のトーンを下げて問うてくるケルに理由を説明するも、返ってきた予想通りの答えに小さく溜め息をこぼし。

  

「本当に失礼なブレスレットですね。私は救ってあげようとしているんですよ?」

『ムクロ様が与える救いってのが生きる事に繋がってる気がしねぇんだが?』 

「まるで私が無差別に殺す人間みたいじゃないですか」

『違うのかよ』

「違いますね、少なくとも私は無差別に人を殺めたりはしませんよ。絶対にね」


 足を止め話はお終いだと言外に態度で伝えた私は後ろを歩く数体の傀儡へと振り返りデュラハンの情報を探すよう指示を出すと、ゆっくりと虚ろな瞳を軽く伏せ了承の意を示し雑踏に紛れ何処かへと消えていくのを確認し再び歩き出す、情報が集まるだろうギルドに向かって。

長らくお待たせしました、申し訳御座いません。

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