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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第一章 最初の刺客
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18話 誰もが説明を求む。

 戻るなり目をつり上げ睨んで来るジニーに、咳払いが聞こえ顔を向ければ何故か顔を赤く染めたアリッサが気まずそうに目を逸らしてくると言う現状に理解が及ばず。


 エミーの問題が片付いたと思ったら、私の預かり知らない所で別の問題が起きていることに若干の頭痛を感じながらも、理由を知っていそうな人物に現状の説明を求めようと、怒り心頭と言った様子のジニーへと声を掛ける。


「一体何をそんなに怒っているのですか?」

「何を? 何を怒ってるかやて? あんな事しておいて、とぼけるつもりなん?」


 今にも殴ってやろうかと伝わってくるほどの苛立ち混じりの口調のジニーの様子から私が何かしたのだと理解するも。

 どう考えてもギルド内で此処まで怒らせる事に思い当たる節はなく。


「いや、惚けるつもりかと言われましても……ジニーを怒らせるような事をした記憶が無いのですが?」

「何処までもふざけた男やな! さっきエミーにしたことで怒ってんのや!」

「エミーに? したことと言えば……引っ張って、小突いて、説教をして、ああ……目を逸らすのでアイアンクローを掛けてやったくらいですが?」


 眉をひそめながら分からないと正直に答えた途端、胸ぐらを掴まれ怒りの剣幕で怒鳴られてしまう。

 暫く静かに聞き、何に対して怒っているのか漸く理解した私はエミーに取った行動を指折り数えながら答え。


「そんな事ちゃうわ! 嫌がるエミーに……き、キスしたやろ! それで怒ってんのや、仲間や思てたのにそないな事するやなんて!」

「ちょっと待って下さい、私がいつエミーにキスをしたと言うんですか?」


 聞き捨てのならない台詞に制止の掛け声と共に手を前に出し。


「は? したやろ、頭掴んで無理矢理、泣いてたやん」

「そんな事した記憶はありませんが?」

「嘘や! ならなんで震えながら泣くことあんねん!」

「はぁ……エミー説明してあげて下さい」


 否定する言葉も自分では信じてもらえないと判断すれば、片手で顔を押さえながら後ろでおろおろとしているエミーへと説明するよう声を掛ける。


「え、えっと~、キスされてませんよ? 寧ろ怒られてたんです……と言う訳なんです。 頭鷲掴むとか酷くないですか~?」

「なんやねんそれ、エミー何も悪ないやん。 まぁ多少抜けてるとこあるとは思うけど、それでも女に暴力振るうとかサイテーやな」


 話を振られて漸く落ち着いたエミーが説明を始め、全て語り終える頃には私に対しての愚痴の言い合いに変わっており、不満と軽蔑の籠もった視線を2人から向けられてしまう。


「ほら、そんな事より早くギルドカードの説明を聞きましょう」


 2人から向けられる視線に耐えられず目を逸らした私は、誤魔化すようにカウンターへと振り返り。


「はい、最低だと思います……じゃなかった、ギルドカードの説明を始めても宜しいですか?」

「……ええ、御願いします」


 会話を聞いていたのだろう、顔を見るなりジニーの言葉に同意を示し。

 一瞬の間が空いた後、にこりと笑みを浮かべながら間違えたと言い直してくるアリッサの表情から失言などではないのだろう。

 

 他人から見れば引き攣っていると分かる笑みを浮かべた私は、今度こそ話題を変える為にギルドカードの説明を頼む。


「では、説明を始めます。 ギルドカードをご提示下さい」

「はい、コレでええんか?」

「大丈夫です、ではギルドカードの機能を説明致します」


 全員に見えるようカウンターに置かれたギルドガードへ全員の視線が集まった事を確認したアリッサが説明を始める。

 

「まず最初に、このギルドガードは登録した本人しか使えず、登録者様より一定の距離を離れると自然消滅するよう魔法が掛けられている為、落としても悪用される心配は御座いません。 また、紛失した際は冒険者ギルドにて100アルカを支払って頂ければ再発行可能となっておりますので、慌てずに冒険者ギルドへとお立ち寄り下さい」


 一度口を閉ざし、周囲を見渡し理解していない者が居ないかを確認した後、再び説明を始める。


「次に、このギルドガードは登録者様の情報を逐一読み取り更新するように魔法を掛けられており、依頼の受注、達成、失敗、並びに害獣等を討伐した際は自動的に更新されます。 また、普段は見えませんが依頼達成数、討伐害獣の数や種類に応じて冒険者様のランクが自動的に変更されますので、“ランクチェック” と唱えて頂ければ確認出来ます。 それを見て受ける依頼の難易度の目安として下さい」

「そう言えば、ギルドの外で会った冒険者もランクがどうとか言っていましたね。 ランク別の強さの基準を教えてもらえますか?」


 依頼の難易度にもランクが適用されていると分かり、この世界のランクと強さを知っておこうと質問をする。


 それを聞いたアリッサは一度頷いて見せた後、カウンター下からボードを取り出すとピラミッド状の絵が描かれたボードを見せながら説明を始める。


「はい、まずランクは世界共通であり、下から『E、小型害獣にも命の危険があり』『D、数人であれば小型害獣を討伐可能』『C、単独で小型害獣を討伐可能』『B、数人であれば中型害獣を討伐可能』『A、単独で中型害獣を討伐可能』『S、数人もしくは単独で大型害獣を討伐可能』となっています」


 魔法なのだろう、説明に合わせてボード内に上に向かって伸びる赤い矢印が現れる。


「ランクを上げる方法については、倒した害獣の強さ、達成した依頼の難易度によって自動的に変更されます。 また、依頼の失敗をしてもランクを下がることはありませんが記録には残る為、依頼主からの信用が下がることを肝に銘じておいて下さい」


 ランクの説明を終えると、ボードを片付け次の説明へと移る。


「次に依頼について説明致します。 各ギルドには依頼の書かれた貼り紙をしている掲示板があり、その中から受けたい物を外して受け付けへとお持ち下されば、依頼を受注する事が出来ます。

受ける依頼の難易度については制限はありませんので冒険者様の自己判断でお願いします。 ではジニー・ダクルフ様、試しにこの依頼を受けてみて下さい “依頼受注” と宣言して頂ければ大丈夫です」


 そう言って『職員にギルドカードを提示する』と書かれた紙を差し出してくる。


「分かった、“依頼受注” すんで」

「有り難う御座います。 では、ギルドカードを確認してみて下さい」


 差し出された紙を手に取ったジニーが依頼を受けると伝えた後、指示通りカードを確認すると依頼リストの欄に『職員にギルドカードを提示する:依頼主 ギルド』と文字が増えている。


「へぇ~、ほんまに増えとるわ」

「ほんとだ凄いですね~。 わたしのは……増えてませんよ~?」

「説明致します。 パーティーであっても依頼を受注した方しか更新がされず、数人で受けたい場合は全員がその依頼を受注しなくてはなりません、一人でも忘れてしまうと共に達成したとしても依頼リストに更新されることはありませんので、受注忘れのないよう御気を付け下さい。 また、一つの依頼を数人で達成した際の報酬ですが、パーティーなら山分け、パーティー以外なら先に達成した方に全額となっていますので其方にも御注意下さい……説明は以上となりますが、ご質問は御座いますか?」


 全員が質問は何もないと首を振るとギルドカードを返しながら、ここ一番の笑顔を向け。


「では、皆様の御健勝と成功をお祈りしております」


 その一言を告げた後、別の冒険者の対応へと移っていく。


「さて、これからどうしますか?」

「あ、うちはちょっと寄りたい所あるさかい、此処で一度別れる事にするわ。 また夜にでもあんたらの宿に戻るから宜しく」


 小さく挙手したジニーはそう言いながら冒険者ギルドから出て行く。


「じゃあ、わたしは~、街の探索に行って来ます~」

「エミーは観光したいだけでしょう?」

「良いじゃないですか~、以前はすぐに魔王討伐に出たので、街の観光なんてしたことないんですよ~」


 ジニーを見送った後、エミーが真面目な表情で言うものの観光する気なのがそわそわする動きで何となく分かり、苦笑混じりに指摘する。


 気付かれていた事が恥ずかしいのか、信用されていなかったのが不服なのか、軽く頬を膨らませながら言い返してくる。


「まぁいいですよ、明日からは忙しくては見て回る余裕はないでしょうから好きにして下さい。 私は宿で休んでいますから。」

「分かりました~、行ってきますね~!」


 私からの返事を聞いて嬉しそうにギルドから出て行くエミー。


 その後ろ姿が見えなくなるまで眺めた後、自身も宿へ向かうべく歩き出す。


「誰か私のことを尾行していますね」

『カカカ、何か恨みでも買ったんじゃねぇのか?』


 ギルドを出て人気のない通りへと差し掛かった所で、明らかに後ろを付いて来る気配を感じ、周りには聞こえない程度の声でケルへと話し掛ける。


「記憶にはありません……と言ったら嘘になりそうですね。 心当たりが多すぎて困ります」

『カカカ、心当たりが無いのが普通だってのに何やってんだよ。 てか、あいつ等と一緒に居ててどうやって恨み買ってんだ』

「冗談ですよ、おおかた金目の物を狙って居るのでしょう。 多少慣れているようですが、所詮素人の尾行ですから」

『カカカ、プロに尾行とかされてたら、本当に何したんだよって話だけどな』


 尾行に気付いている事を悟られないよう歩く速度を一定に保ちながら歩き。


 ケルと冗談を言い合っているうちに路地裏へと入り込んでいたのか、行き止まりになるように設置されたフェンスのある通路へと出てしまう。


「へへへ、袋小路に入るたぁ、運がないなぁ」


 逃げ道を無くしたのを見計らうように。

 後ろからぞろぞろとゴロツキと言った格好の男達が下品な嗤い声を上げながら姿を現した。


『まったくその通りだぜ。で? 運のない奴をどうするつもりなんだ?』


 ゴロツキの台詞に合わせるようにケルがおどけた口調で聞いてくる。


「勿論、全員救って差し上げますよ」


 穏やかな口調でケルの質問に答えゆっくりと振り返る。

 三日月のような笑みを浮かべながら。





1ヶ月ぶりになりました、申し訳ないです、はい。

次こそは、と意気込みながら続編を考えておりますので、気長にお待ち下さい。

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