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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第一章 最初の刺客
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17話 ギルドカードと勘違い

 「このカードに手を添え、“此処に我が人生を記したり” と唱えて下されば、ギルドカードへの登録は完了いたします。 また、登録には一人当たり100アルカ必要となりますので、ご了承下さい」


 何十人も入る事を想定された空間には酒場のような雰囲気が漂い、等間隔に並べられた四角いテーブルの周りには如何にも荒くれ者と言った様相の冒険者達が座り、酒を酌み交わしながら今日の戦果や報酬の話題を持ち寄っているのだろう。

 賑わいを見せるギルドの奥には無数の紙が貼られた掲示板があり、それを窓口のカウンターへと持って行く事で依頼が受けられるという形になっている。


 そんなギルドの奥、受付嬢がいるカウンターに集まった私達は、ギルドカード作成の説明を受けていた。


 何故ギルドに居るのかと言えば、冒険者から鍵と金を譲って貰ってすぐに宿へと向かい休もうとした私を、ギルドカードが先だと二人に半ば無理矢理連れ込まれてしまった。時折見せる女性の結託力は恐ろしいと改めて実感させられる。


 そうそう、今説明をしてくれているのは、天井付近にある灯りを反射させキラキラと輝く金色の髪が似合う受付嬢で、名前は確かアリッサと言いましたか、その受付嬢がどうするのかと言った表情を此方へと向けている。


「100アルカ、ですか……此処に来て浅いもので、どれの事なのか分からないのですが」

「そうなんですか? では、わたくしから説明させて頂きますね」


 登録する為の手数料を聞かされるも、この世界においてコインの価値がいまいち分からず眉をしかめながら答えれば、一瞬驚いた表情を見せたアリッサがすぐに営業スマイルを浮かべ説明を始めてくれる。


「このアニマ大陸では、銅色のコインを1アルカ、銀色のコインを50アルカ、金色のコインを1000アルカとしていて、100アルカは銀色のコインを2枚と言うことになります」

「なる程…100アルカと言えば高い方なのですか?」

「いえ、一般市民の月収が約500アルカなので、其処まで高いと言うことはないと思われます。 それに、高ランクの冒険者になれば1000アルカを数日で稼ぐ方も居られますから」


 コインの価値は分かったものの、手数料が高いのかが分からず、更に質問を重ねるも、嫌な顔一つせずに説明をしてくれる。

 ようやく理解した私は、巾着より銀色のコイン6枚を取り出しカウンターへと置き。


「分かりました、ありがとう御座います。 コレで登録をお願いします」

「はい、確かに受け取りました。 では此方のカードをどうぞ、登録が完了しましたら、詳しい説明を行います」


 コインを受け取り何かを呟いた瞬間、淡い光を発しだしたのを見て頷くアリッサ、恐らく偽物ならば光らないのだろう。

 確認が取れたのか再び営業スマイルを浮かべ此方を振り向けば、プラスチックのような不思議な素材のカードを三枚トレイに乗せて差し出してくる。


「コレがギルドカードですか、では早速 “此処に我が人生を記したり” 」


 カードを受け取り呪文を唱えた瞬間、体から輝く小さな文字のようなものが溢れ出したかと思えば、カードへと吸い込まれ、左上から何かの文字が記されていく。


 隣を見れば二人も同様に文字が溢れカードへと吸い込まれていた、あの文字のような物が私達についての情報なのだろうかと考察していれば、自身の持っているカードへの記入が終わっていることに気付き内容を確認する。


ーーーーーーーーー


名前:(ムクロ)


職業:死霊術士


種族:人間


スキル:ネクロマンサー


討伐数リスト

一般人不明

盗賊18

ゴブリン10


依頼リスト

魔王討伐 依頼主:女神ヘル


ーーーーーーーーー


 前回の世界で殺した人間まで討伐リストに入っている事に一瞬驚き眉を寄せ、この内容を見られ追求されるのが面倒だと考えれば、そっとポケットへとカードをしまい。


「ん? あんたも登録終わったん? ウチのも見せるさかい、見せてや」


 登録が終わったのか嬉しそうに近寄りカードを目の前に掲げてきた為、見せる気はないものの其処に書かれた文字を読み上げていく。


「ふむ、職業はちゃんと商人なんですね、種族はダークエルフ、まぁわたしの知ってるエルフとは大違いですしね。 スキルが狩人の弓……これは何なんです?」


 大体予想通りの内容の中に、効果の分からないスキル名があり、それを指し示しながらジニーへと問い掛ける。


「ああ、これ? 弓を使えば視認できる距離である限り、百発百中に近くなるんよ。 防がれたり、ギリギリで避けられたら当たらんけどね」


 ジニーは指で示された部分を見るなり、弓を構えるような格好をしながら説明をする。


「便利なスキルもあったものですね、どうやって手に入れたんですか?」

「何言うてんの、スキル言うんは本来修業したり、学んだりして自力で覚えるもんやで? つまりは努力の結果なんよ」


 ふと、他にも便利なスキルがあれば手に入れてみようか等と考え、入手先を聞き出そうと問い掛け。

 それを聞いたジニーが呆れたような口調でスキルの入手法を説明し始める。


「え、つまりはスキルは貰ったり、産まれた時から持っていたりする物ではないって事ですか?」


 簡単に手に入るものだと思っていただけに手に入れる為にかなり大変な事だという事実に驚き、再確認するように聞き直す。


「当たり前や、最初からスキル持ち言うたら、神に愛されたごく一部の限られた人だけやで、つまり勇者とかはその部類やな」

「そうだったんですか。 私の場合は最初から持っていたので、てっきり他の方もそうなのだとばかり」

「ムクロ様は神様から聞いてないんですか~? わたしは教えてもらいましたよ~?」


 肯定するように頷いたジニーが、一部という言葉を強調するように人差し指を立て。

 話を聞いていたのか、納得して頷く私とジニーの間にひょっこりと顔を覗かせ、この世界の事を知らない事を不思議そうに聞いてくるエミー。


「実は……女神様を少しからかい過ぎまして、細かく聞く前に追いやるようにこの世界に飛ばされたのです」

「ムクロ様……よく消されませんでしたね~」

「ほんまやで、あんたアホやろ?」


 困ったように頬を掻きながら言えば、エミーとジニーが馬鹿を見るような視線を此方へと向けてくる。


 「あの~、登録はお済みになりましたでしょうか? 説明の方を始めたいのですが」


 雑談に変わり始めた頃、横から遠慮がちな声が聞こえ振り返れば、カウンターに座った受付嬢のアリッサが困った表情を浮かべて片手を小さく挙げている姿が視界に入ってくる。


「あ~、これは申し訳ありませんでした。 登録の方は全員終わりましたので、説明をお願いできますか?」

「はい! では、どなたかギルドカードの提示をお願いいたします」


 素直に謝罪をして登録を終わった事を伝えれば、ようやく説明出来る事に嬉しそうに返事を返してくるアリッサが、説明の為にカードを見せるよう言ってくる。


「はいは~い、私が出しま「少しお待ち下さい」


 バッと手を挙げ見せる気満々のエミーの言葉を途中で遮り他の者へ待つよう伝えれば、挙げた手を掴みその場から離れる。


「ムクロ様~、何処へ連れて行くんですか~……あぅ!?」

「エミーは馬鹿なのですか? 自分のギルドカードをよく見て下さい」


 手を引かれ驚いたような表情のまま、ふわふわとした口調で抗議の声をあげるエミーの額を軽く小突き言葉を止め。

 額を押さえ不満そうに膨れるエミーへとカードを見るよう促し。


「ギルドカードを? 種族……アンデッド? あ……アンデッド!?」

「驚きすぎですよ、出会った頃に言った言葉忘れているのではないですか? エミーは私が蘇らせたのですよ? アンデッドになってて当然でしょう」


 カードを見て、自身の種族に驚くエミーの姿に頭が痛くなったような錯覚覚え、額を押さえながら理由を説明してやり。


「あ~、そう言えばそうでしたね~、生前と何も変わらなかったもので、忘れていました~」

「しっかりして下さい。 それより、此処を見て下さい」


 溜め息混じりに注意した後、勇者の証にもなる『魔王討伐:依頼主 不滅神ローラン』の記載を指差し。


「あ! わたしに討伐を依頼した神様の名前が書いてます~」

「コレを見られたら一発で勇者だとバレてしまうでしょう。 此処で勇者である事がバレたらどうするつもりですか? まさか、このギルド内の冒険者全てを相手にするつもりなんですか?」

「え、えっと~、ついうっかりですね~?」


 全く読んでいなかったのか、今気付いたような反応をした為、眉を寄せ説教じみた事を言えば、スッと目を逸らし誤魔化すような台詞を言うエミー。


「うっかりではすみませんよ? 宿が埋まるほどの冒険者なんて相手にしていたら、魔王討伐どころか、この街から何時抜け出せるかも分からなくなります。 少しは頭を働かせて下さい、この脳味噌は何の為に入ってるんですかね? 要らないなら取り出しましょうか?」


 反省の色が見えないエミーの頭にアイアンクローを掛けて此方を向かせれば、苦言を聞かせながら今にも人を殺すのではないかと言う笑みを浮かべ。


「あぅ~、すみませでした~、離して下さい~」

「はぁ~、気をつけて下さいよ」


 痛みと恐怖からかカタカタと震え、涙を浮かべながら謝る姿に、手を離せば溜め息を吐き出し。


「いいですか? この街では不用意にギルドカードを見せないで下さい、返事は?」

「い、イエッサ~」

「はい宜しい、では行きましょうか」


 エミーの敬礼しながらの返事にようやく納得がいった私はお待たせしましたと言いながら受付カウンターへと戻る。


 待っていたジニーの顔を見れば目をつり上げ睨まれる事に気付き、そんなに戻ってくるのが遅かっただろうかと首を傾げ、何故怒っているのかを聞こうと口を開きかけるも咳払いが聞こえた為、中断してそちらへと視線を向ける、其処には顔を少し赤く染めたアリッサがいた。

ようやく17話です。


頑張りますよ~。

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