表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
2/26

0話 異世界へ行く殺人鬼

 地面を踏むという当たり前の感覚に違和感を感じゆっくりと目を開ける。


 目の前には一切の隙間なく漆黒に塗りつぶされた異様な空間と、この場に似つかわしくない天蓋付きの赤い豪華なベッドが一つ置かれている。

 状況を把握する為、辺りを見回していると突如聞こえてくる幼い声。


「ようこそ地獄へ。妾はこの地獄の支配者、女神ヘルである」


 驚いて視線を向けると、先程まで誰も居なかったはずのベッドに少女が腰掛けていた。


 第一印象はとにかく白いとしか感想が浮かばない。

 髪も服も白であり、肌も一度も日に当たった事は無いのではないかと思うほどに白いものの、病的というより綺麗で幻想的という言葉の方が当てはまるかもしれません。


「ぬしは幾多の命を奪い、幾多の尊厳を踏みにじるという決して許されることのない罪を犯した。よって、ぬしは地獄へ行くことが決定している!」


 神だと聞いた後でも少女に威厳のようなものは感じられず、それどころかおごそかに罪状を読み上げる姿は愛らしく無性にからかいたい気持ちになり、指先を自身の額にトントンと当てながら言葉を投げ掛ける。


「頭……大丈夫ですかね?」


 私を消滅させる事すら容易いだろう少女に対し、痛い子でも見るような表情で見るというオプション付きで。

 一瞬だけ固まり睨むような視線を向けてくるも我慢するような表情を見せた後、再び台詞を口にする。


「しかし、そんな罪深い者にも罪を償う機会が与えられた!」


 ゆっくりと少女が立ち上がると。

今まで座っていたベッドが一瞬で消え代わりに少女の両隣に光に照らされた空間が現れる。


 少女の視線を受け照らされた両手の先を見ると、左手側には転生と書かれた地面が、右手側には地獄と書かれた文字が存在している。


 ふむ……と視線を地面に向けながら顎に手を当て考え込む素振りを見せるも、実際は先程のからかいに反応してくれていないことを思い出しニヤリと笑みを浮かべ。


「恥ずかしくありません? 見てるこちらとしてはて面白くていいのですが」


 チラリと私を一瞥するも発言を無視しそのまま選択肢の説明を始める。


「一つはこの地獄にて、罪を償い終わるまで、永遠と続く激痛に耐え続けるか、もしくは異世界を救う勇者として、魔王を討伐する旅にて善行を積みその罪を償うのか」


 反応のないことに少々飽きてきた私は説明の途中で口を開く。


「いえ、もう結構です。私そろそろ寝たいのですがよろしいでしょうか?」


 プルプルと小刻みに震え出した少女は我慢の限界に達したように大声を出す。


「いいわけあるか、このたわけ者! 最後まで静かに話を聞くことも出来ないのか。こっちもやりたたくてやってるんじゃない、仕事だからやってるんだぞ!」

「いやいや、いきなりそんな事いわれましても。 せめて最後まで威厳保って下さいよ」


 地団駄を踏みながら文句を言う姿はすでに威厳も何もなく、年相応の少女といった感じになっている。


「威厳を保てと言うのなら話くらい聞け! と言うか、地獄で何さらっと寝ようとしているのだ、ぬしは馬鹿なのか? 状況も理解できんのか? んん?」


 瞬きをする間に距離を詰められたかと思うと私の胸にぐりぐりと人差し指をめり込ませてくる。

 これがまた地味に痛い。


「いやまぁ、話が長すぎるのですよ。こう、用件だけをまとめて伝えてくれませんかね?」


 無礼にも怒っている少女の頭を無意識に片手で押さえ近寄れないようにした後、空いている方の手で親指と人差し指で縮める動作をして見せる。


 それを見た少女はこめかみに青筋を立てると短く言い捨てる。


「いいだろう! さっさと異世界へ行って、魔王を討伐してこい殺人鬼!」

「いやいやいや、用件じゃなく命令になってます。と言うか、殺人鬼を異世界に送り込んでいいのですか?」


 その投げやりな発言に苦笑を浮かべつつ気になった部分を確認する。


「はははは、妾がそんな事の対策もしてないわけがないだろう、悪さなど出来ぬように監視をつけるわ!」

「なる程、上手く考えましたねと言いたいところですが、なぜ殺人鬼なんです?」


 問題ないという笑う少女になぜ犯罪者を選んだのか理由が分からず眉をひそめ質問をする。


「手短にと言ったり、質問してきたり忙しい奴だ、理由は3つ」


 指を三本、私に見えるように立てる。


「1つ、様々なタイプの勇者を送り込み、可能性を高めるため」


 一本だけ下げ、残り二本を立てたまま続ける。


「2つ、神々によって送る性質が違うのだが、妾からは悪人しか送り出せぬ」


 そして、最後の一本になる。


「3つ、殺すことに躊躇しない者を選びたかったから、まぁ妾が与える能力スキルの事も考えると、ぬしが適任だったのだが」


 言い終わるなり、何処かから椅子を取り出した少女は、それに座るとすらりとした足を組む。


 いくら幼い体型とは言え、何処か妖艶な魅力を感じさせ組まれた足を眺めてしまう。


「何処を見ている、何処を……まったく、それで納得はしたか?」

「ん? ええ、納得しました、もちろん私に拒否権などないのですよね?」

「むろんだ、あるわけがない……まぁ、大人しく異世界へ行って、魔王を討伐することだな、そしたら罪を償ったとして、罰も免除してやる、悪い話ではないだろう?」


 確かに悪い話ではない、それだけに怪しさも感じられる。

 それ以上に私にとっては敵だけという縛りはあるが殺人を許されたようなものであり、受けないと言う選択肢は存在しなかった。


「慎んでお受けいたします」


 私は片膝をつき白い少女、女神ヘルへと頭を垂れる。


「よきに計らえ、妾からぬしへの監視と、妾の能力スキルの一部を使用可能にする権限を持つアクセサリーを持たせよう」


 立ち上がり目の前まで歩いてきた少女は私の手首に髑髏のブレスレットを装着すると、再び椅子へと座り直す。

 少女が私から離れるなり足下に巨大な魔法陣が出現しグルグルと光を放ちながら回り始める。


「これは、とても私にとって重要なことなのですが……」

「なんだ、申してみよ」


 私の言葉に頷き、先を促してくる。


「はい、死体は私が好きにしてよろしいのですよね? 立ちはだかる敵も魔王も」

「よきに計らえ……」


 その時の私は、とても残忍な笑みを浮かべていることだろう。 

今回は短いですが、次からはもう少し長くなるよう頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ