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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
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11話 道中雑談会

 翌朝、昨晩のゴブリン達の襲撃など無かったかのように、黙々と馬車は道を進んでいる。


 この馬車の速度はそこまで速いと言うことはなく、外を流れる山や森を十分に観賞することができる。

 二人の楽しそうな会話をBGMにしながら、私は御者台からぼんやりと荷台から外を眺めているとジニーが声を掛けてくる。


「なぁ、あんたさっきから何を見てるん?」

「救われている者達がいる方向を眺めているのです」


 私が何を見ているのかなんて、何故気になるのか分かりませんが、ジニーの訝しむような視線と口調を受けて、何を見ていたのかを少し楽しげな口調で返す。


「ムクロ様? どういうことでしょうか~? 他の勇者様達のいる方向が分かるのですか~?」

「勇者……そうですねぇ、確かに勇者達です。私は勇者達がいる方向を見ているのです、きっとそこでは救われている方が沢山いると思いますよ」


 私の返事の意味が分からないようで、分かったら気付かれていた事になるのですが、エミーは首を傾げながら当たりをつけて聞いてくる。

 その質問に、私は一瞬考える素振りをし。


 確かにあれ等は人間からしたら勇者と言う枠に入るだろうかと判断した私は、笑顔で頷き答える。


「そうでしたか~。わたしは以前、勇者様達と会ったことがないので~、一度会ってみたいですね~。一緒に魔王を討伐するのです~」


 私の返事を聞き、納得したのか一人で勇者に思いを馳せているエミーを放置していると。


「ん? ちょい待ち、魔王を討伐するって言った?」


 急にジニーが手のひらをこちらに向け、確認を取ってくる。


「ええ、そう言いました~、ジニーさんに言ってませんでしたっけ~?」


 聞かれたエミーはあっさりと頷き、伝えてなかったかなと呟き。


「いいや、言ってへん、言われてへんよ、魔王討伐ってどういう事? 魔王ってあの魔王やろ?」

「そうですよ~、あの人類の敵の魔王です~。わたし達は、その魔王を討伐するべく、旅をしているんですよ~?」


 ジニーは聞いてないと首を横に振り、信じられないと言った表情を浮かべ。

 頬に指を当てたエミーは、何をそんなに驚いているのか分かっていないようで、首を傾げている。


「えらい簡単に言うてるけど、魔王はすごく強くて、勇者にしか倒せへんって言われてるんやで? それをそこそこ腕の立つ一般人に、倒せると思うてんの? 行かん方がええ!」


 私達のしようとしている事の危険さを理解していないと思われているのか、ジニーはエミーの肩を掴むと真剣な表情で詰め寄る。


「えっと~、ジニーさんは勘違いと言うか、知らなくて当然なんですけど~、わたし達は勇者ですよ~?」

「……は?」

 

 詰め寄られて困った表情を浮かべるエミーはそっと肩を掴む手を包み込むように触れたかと思えば笑顔で答え。

 突然の告白にジニーはマヌケな声とともにポカンとした表情を浮かべている。


「わたしは不滅を司る神より遣わされた勇者で~」


 先に自己紹介したエミーは、私にも自己紹介してと無言で催促するように見つめ。


「私も言うのですか……死者を司る女神様より遣わされた者です」


 それに気付いた私は、しぶしぶそれに応じる。


「え? 死者なんですか~? それって死を司る女神様なのでは~?」

「うん、ウチもそう思うんやけど、何が違うん?」


 どちらも同じものとして理解しているのか、不思議そうに首を傾げている。

 

「はぁ……死とは生き死にを指しているのです。そして、私を呼んだのは死者の国を支配する女神様、つまり死んだ後の者を支配しています。だから、死者を司ると言ったのです、分かりましたか?」


 それを見た私は、呆れたと分からせる為に長い溜め息を吐いた後、簡単に説明をする。


「分かりました~、話は変わりますけど~。ムクロ様は最近、露骨にわたしの事を馬鹿にしていませんか~?」


 納得したと頷いた後、馬鹿にされていると気付いていたのか眉をしかめながら聞いてくるエミーの言葉に私はわざとらしく顔を逸らし。


「さぁ? 気のせいではないでしょうか?」

「絶対馬鹿にしてますよ~、もぉ~!」


 あからさまに適当に返事されていると分かったのか、ムスッとした表情を浮かべながら文句を言ってくる。


「痴話喧嘩はええから、で? その勇者って言う証明はあるんか? なんや二人からは勇者って感じのオーラを感じへんのよね、子供の頃に見た勇者は、立ってるだけでこの人は勇者なんやって分かったんやけど?」


 私達のやり取りをジニーは呆れた口調で止めてくると、言葉だけでは信じられないから証拠を見せろと言ってくる。


「証拠ですか~、証拠~……何を見せたら証拠になるんでしょ~?」


 エミーは腕を組むと、何か証拠となりそうなものはないかと頭を悩ませているのか、うんうんと唸っている。


「そんなもの見せる必要はないですよ、彼女に私達を止める権利はないのですから、そうでしょう?」 

「あ~、まぁそう言われたらそうなんやけど……ホンマのこと言うたら、命の恩人にわざわざ死にに行って欲しくなくて止めたかっただけや、せやけど、それは失礼やったね。すまんかった」


 悩むエミーを見て私は助け船を出すようにわざわざ見せる必要はないと答え。それにジニーは困ったように頬を掻くと同意するように頷き。

 少し黙ったかと思うと申し訳ないと言うような表情を浮かべ。

 行かせたくなかった理由を言いながら頭を下げ謝ってくる。


「そうだったんですか~、てっきりわたし達みたいな弱そうな奴は行くだけ無駄だ~、みたいな理由なのかと思いました~」


 それを聞いたエミーは怒る事なく、むしろ安心したとばかりにニコニコと笑顔を浮かべながらホッとしている。


「あんな失礼なこと言われたのに、怒らへんの?」


 頭を上げると、怒っていない事が不思議なのか恐る恐ると言った感じで聞いてくる。


「そんな事でいちいち腹を立てるような狭量な人間に見えますか? 見えているのだとしたら、そちらの方が失礼と言うものですね」

「わたしもそんな事で怒らないですよ~、むしろ心配してくれたありがとうって感じですからね~、ジニーさんは優しいですね~、どこかの誰かさんとは大違いです~」


 私は御者台から苦笑しながら答える。

 すると、エミーも便乗するように同意を示すと、ジニーに抱き付き頭を撫でながら、私をジトッとした視線を向けてくる。


「二人ともありがとうな、そう言ってもらえて気持ちが軽なったわ。命の恩人に借りばっかり作ってる気がするわ」

「そう思うのなら、街に着いたら、借りでも返して下さい、その時には約束の方も果たしてもらいますしね?」


 抱き締められたままのジニーは心底安心した表情を浮かべていたかと思うと、借りが出来たと苦笑いを浮かべ。

 それを見た私は、にこやかな笑みを浮かべながらその借りを返すタイミングと約束も忘れられないようにと強調するように伝える。


 「はいはい、ホンマにあんたは清々しいくらいにぶれへんね。あんまりそんなん続けてたら、誰も居なくなるよ?」

「ご忠告として受け取っておきますよ」


 ジニーは小さく肩をすくめながら返事をした後、真面目な顔で説教じみたことを言い。

 私は変える気のないと分かる口調で返し。


「もうええわ、あんたに何言っても今は聞かなさそうやし、エミーもそう思わん?」

「そうですね~、多分ムクロ様はそう言うの聞いてくれなさそうですよね~」


 気のない返事に呆れたと言いたげな表情を浮かべると、抱き締めてきたままのエミーへと同意を得ようと声を掛け。

 聞かれたエミーはうんうんと何度も頷きながらジニーの言葉に同意している。


「はぁ……そろそろ揺られ飽きたのですが、どれくらいで街に着きそうですか?」


 会話を終わらせるたいのと揺られ続けるのに飽きてきた為、到着時間をジニーにたずね。

 

「そうやね~。今はここら辺やから~、このまま行くとあと数刻すうこくもしたら着くと思うで」


 馬車内に地図を広げ現在地を指で示すと、そこからゆっくりと上へと移動させ目的地を指差しながら後少しだと答える。


「そうですか、ずっと座っているというのも疲れるので早く着いて欲しいものです」

「そうですね~。わたしは汗でベトベトなので~、お風呂に入りたいですよ~」


 エミーも自身の身体が汗でべたつくのが嫌なのか、早く着いて欲しいという意見に頷いていくる。


「そないな事いうてもコシュタ・バワーも困ってまうで、もう少しの辛抱やさかい我慢しい」


 私達の様子に苦笑を浮かべると、まるで母親のように注意してくる。


「おや? もしかして、あの遠くに見えるのが、目的地でしょうか?」

「そうや、あれが目的地、冒険者の街ドッグやで」

「あれですか~、大きな街ですね~、ちょっと待って下さ~い、もしかしてコシュタ・バワーでは入れないのでは~?」


 御者台から遠くの風景を眺めていると、石壁のようなものが見えてきた為、ジニーへと声を掛ける。

 その声を聞いて、荷台から覗いたジニーが頷き、目的地の街だと答え。


 その大きさに感心したように呟くエミーは、ふとコシュタ・バワーを見て、首がないことを思い出し、少し焦った口調で聞いてくる。


「あ~、確かにコシュタ・バワーの見た目やと、入れてくれなさそうやな、途中で隠して、歩きで街にはいるしかなさそうやね」

「そうですね、魔物を中に入れるほど、暢気な頭はしていないでしょうから」

「そうですか~……この子にも愛着がわいてきたのですけどね~」


 エミーは、コシュタ・バワーと離れるのが少し名残惜しいのか、首の根本を撫でながら残念そうに呟いている。


「コシュタ・バワーとずっと別れるわけではありませんよ、次の街に移動するときには、また呼びますので、それまでのお別れというだけです」

「そうでしたか~! 良かったです~、次の機会にもまた宜しくお願いしますね~」


 逃がしてしまう訳ではないと知ると、エミーは嬉しそうにコシュタ・バワーに話し掛け。

 感情が存在しないはずのコシュタ・バワーも嬉しそうに、蹄を地面に何度か打ち付けている。


「では、コシュタ・バワーにはこの付近で待機してもらって、私達は冒険者の街ドッグへ向かうとしましょう」


 コシュタ・バワーに人が来たら隠れるように命令し。

 私達は街へと向かって行く。


 名残惜しそうに、何度もコシュタ・バワーを振り返って見るエミーのせいで、少し歩みが遅くなったのは言うまでもないですかね。

もう同じ事ばかり言ってるので、謝罪しません、すみません。

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