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殺人鬼は勇者たりえるか~死霊術士~  作者: ピエロ
第零章 旅の始まり
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8話 説得と救出

 現在、さらわれた商人を救うため、街道を離れ、林の中を走っていた。


 広葉樹からなる林は、森林浴をしたくなるような木漏れ日が溢れ、小鳥達のさえずりは、魔物に襲われた人が連れて行かれているとは到底思えない程に穏やかな様子を見せている。


「本当にこっちへ来たんでしょうか~?」

「さぁ、何ともいえませんね、とりあえずはこの跡について行けば分かるのでは?」


 足下の何か大きな物を引きずって出来た跡を指さす。


「そうですね~、早く助けないと~、無事でいて下さいね~」

「死体の新鮮さから見て、1時間も経っていない筈です、急げば間に合うかもしれませんよ」

『カカカ、人助けとは、ドジ勇者っ娘は優しいじゃねぇか! そう言う奴は大好きだぜ!』


 間に合うかも知れないと聞いた途端に、エミーがさらに速度を上げて走り出す。


『ムクロ様、あんま遅いとまたハグレちまうぞ!』

「余計なことを言わなければよかったでしょうか」


 エミーの背中がどんどんと離れていくのを見ていると、ケルが急かしてくる為、溜め息をつきつつ、見失わないように速度を上げて追い掛ける。


 しばらく追いかけ続けていると、木の陰に隠れるようにして立ち止まっているエミーを見つけ。


「こんな所で立ち止まって、どうかしましたか?」

「魔物の村と思わしき場所を見つけたのですよ~、それで、無闇に突っ込むのは危ないかな~、と思いまして~」


 視線を先を追うと、そこには確かに小規模ではあるが、村のような物が作られており、緑色の肌をした小鬼のような生物が歩いている。


「ゴブリンと呼べばいいのか、分かりかねますが、確かに村を形成していますね……まぁ木造ですし、周りに火をつければ全滅できるでしょう」


 火をつけられそうな物を探し始めながら言い。


「だ、駄目ですよ~! 中には捕まった方も居ますし~、周りは林なんですよ~!? ここは私に任せて下さい~!」

「そうですか……分かりました、エミーの心意気に免じて任せるとしましょう、頑張って下さい」

「あ、ありがとうございます~?」


 慌てて火は駄目だと制止しにきた為、私は少し考えるような表情を浮かべた後、真面目な様子を装い任せると、あっさり引いたことにエミーは納得がいかないのか、微妙な表情を浮かべている。


「では、どうするのかお手並み拝見とさせてもらいます、後ろをついていくので安心して救出して下さいね」

「分かりました~、こっそり行っても見つかる可能性が高いので~、正面突破しますね~」


 エミーに向けて笑顔で言うと、力強く頷き剣を抜き放つ。


(あの表情、きっと何か勘違いしていそうですが、まぁいいでしょう、面白そうなので見させてもらいますか、と胸中で呟き、何時でも動けるように姿勢を少し下げる)


「突撃します~!」


 掛け声を合図に、村に向かって走って行くエミーを追い掛ける。


「ぐぎゃ!? ぐぎゃぎゃ!!」


 村に入るなり、侵入に気付いたゴブリン三匹が何かを叫びながら襲いかかってくる。


「やっ! はっ! ふっ!!」


今回は魔物だからなのか、躊躇する事なく三匹を切り捨てると、そのまま足を止めることなく走り続ける。


「エミーはこの生物の命は簡単に絶つんですねぇ」


 斬り殺されたゴブリン達を見る。

 

「わたしだって、殺したくはありませんよ~……ですけど、ゴブリン達は同族すら、グループの仲間でなければ集団で襲って殺すことがあるほどに好戦的な魔物なんです~」


 周囲を囲まれた為、走るのを止めたエミーは剣を腰だめにして構えている。


「だからと言って、殺す必要はあるのですか? 襲われた人が出たときだけ反撃して撃退すればよいでしょう?」


 私は次々と飛びかかってくるゴブリン達の攻撃を相手を殺さず、また殺されないように受け流していく。


「ムクロ様の言うとおり、普通ならそれでも構わないでしょうね~、ですが、今回はゴブリン達が村単位でここにいるのです、つまり近くの街を襲う危険があると言う事が問題なのでして~、殺すことを推奨するわけではありませんし、肯定する気もありません、わたし自身は弱い者の刃向かえない者の味方のつもりですから~、弱い者が抵抗も出来ずに死ぬ可能性を減らすのも勇者の役目だと思っているのですよ~」


 エミーは襲い来るゴブリン達を、無駄な動きをする事なく次々と切り捨てていく。


「結局は人間のエゴではないですか、なら私の考えもまちがいではないと思うのですが?」

「わたしは、ムクロ様のように死ぬことこそが救いだなんて思いません~! 死は本当に理不尽なものです、なればこそ出来るだけ長く生きて、自分の生き方に誇りを持って欲しいと思っています、命とは本来とても尊いもので~、他者を殺すという行為は、自分が生き残るために行うものでなければならないはずのものだとわたしは考えていますから~」


 囲んでいたゴブリンを全て斬り伏せた後、再び走り始める。


「なる程、つまり私の殺しには自身が生き残るために行っているものではないから認められないという事ですか」

「そう言うことです~」

『カカカ、流石のムクロ様も一本取られたんじゃねぇか?』


(確かに正論を言っているのでしょう、ですが、死が救いではないなんて事はありません、それを分からせるには今の状況では無理そう……ですね)


「分かりました、今回はそれを認めましょう、ですが、この先もその考えが正しいと思い続けることが出来るとは思わないことです、きっとその日は来ますから」

「なんと言われようと~、考えを改める気はありません~、ムクロ様の方こそ、必ずその考えは間違っていたと分からせてあげますからね~!」

『頑張れよ、ドジ勇者っ娘、ヘル様からもムクロ様の監視を任せれてるからな! 間違った方向に進まないようにするのも役目な訳だし、応援してるぜ』

「ケルさん、ありがとうございます~」


 今回の説得に成功したためか、私が苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべていると、エミーはケルの応援すると言う言葉に嬉しそうに返事している。


「はぁ、それより商人の居場所に目星はつきましたか?」

「いえ~、それが~、先程から小屋を覗いてはいるんですが~、見つからないのです~」


 私の言葉に残念そうに首を横に振る。


「こういう場合は、頑丈そうな建物、そうですね……あの小屋とかが怪しいですね、堅牢な建物が他にも無いことを考えると、ほぼ間違いはないでしょう」

「ムクロ様……分かりました、急いでいきましょう~」


 探す事に協力的になったのが、そんなに嬉しいのか、感極まったような表情を浮かべた後、緩んだ表情を引き締め、私が指差した建物へと駆けていく。



ーーー



 私が建物に着く頃には、すでにエミーは到着し、捕まっていた者を救出していた。


「ありがとうやで、ほんま助かったわ、命を助けてもろて言うことやないんやけど、今はお礼を出来るほどの手持ちがないんや……すまんなぁ」


 そう言って謝ってきたのは、先程助け出した人で、褐色の肌と青い髪を持ち、さらに特徴的なのが、耳が長くダークエルフと呼ばれていたものに姿が酷似していた、そして酷似しているだけあって容姿はとても美しい女性である。


「いえ~、お気になさらずに~、今回はたまたま間に合っただけの通りすがりですから~」


 そう言って、謝ってくる商人に対して、エミーは胸の前で小さく手を振り、お礼は大丈夫だと言っている。


「せやけど、命を助けてもろて、これで、はいさよならやなんて、商人としてのプライドが許さへんわ~、何か出来ることはないやろか」

「そう言われましても~、ムクロ様、どうしましょう?」


 そう言うと、二人して困った表情で私を見てくる。


「はぁ~……何故、私に振るのですか、そうですね、どうしてもお礼がしたいというのなら、私達を近くの街まで案内していただけますか? 私達二人して道が分からないもので、少々困っていたのですよ」


 額を押さえてため息をついた後、もともと考えていた、近くの街まで案内して欲しいと伝える。


「そう言うことなら任せとき! ウチがあんたらを必ず街まで届けたる、んで、悪いんやけど、もしよかったら街に着くまで護衛してくれへんか? もともと雇てた護衛はやられてもうて、道中不安やったんよ」


 私の提案に嬉しそうに二つ返事で返してくると、流石は商人と言うべきか、道中の護衛をする事を上手く取り付けてくる。


「わたしは構いませんよ~、むしろウェルカムです~、任せて欲しいくらいですよ~」


 エミーは役に立てるのが嬉しいのか、やる気に満ちた表情で頷いている。


「と言うことらしいので、護衛はエミーがきっちりとこなしてくれると思いますよ」

「えっ!? 一緒にしてくれないんですか~?」


 私は面倒だからと辞退すると、心底驚いたというような表情でこちらを見てくる。


『カカカ、ムクロ様、ドジ勇者っ娘が悲しそうな目でこっち見てるぜ』

「どう言われようと、私はやりませんよ……まぁ、危なくなれば助けるので、それでよいでしょう?」


 ケルが茶化すように言ってくる為、しないと首を振るも、エミーと商人の泣きそうな目でジッと見てくると言う行為に負け、しぶしぶ護衛をする事になる。


『ムクロ様? 何か今回はダメダメだな? もしかして、女に弱いとか? 弱いのか?』

「随分と楽しそうですね? 引きちぎりますよ?」

『カカカ、そりゃ困るな、それより早く追いかけてやれよ、魔物に襲われるぜ? 護衛さんよ』

「はぁ~、今回は完全にエミーのペースに巻き込まれてしまいましたね……」


 からかってくるケルへと、冷たい目を向けて脅すも、笑って流した後、早く追いかけた方がいいと言いながら再びからかわれ、今回何度目になるか分からないため息を吐きながら、二人を追いかけていく。

最近遅くなりがちですが、頑張って更新したいと思います。


感想などあれば、後々反映出来ると思うのでよろしくお願いします。

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