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第31話 仲直り大作戦③

 歓喜の輪がとけて皆がばらばらに散っていった後も、メラニーはユウの手を握って離そうとしなかった。

 彼女をなだめながら、ユウは意識を失っていた間のことをペドロに聞いた。


 洞穴で倒れたユウは、ペドロが呼んでも軽く叩いても反応がなかったらしい。

 浅く呼吸はしているし身体も温かいままなのに、糸の切れた人形のようにユウは動かなくなっていた。

 その様はまるで魂が抜け落ちたようだったという。

 そんなユウの抜け殻を背負ってペドロは集合場所まで運んできたのだ。

 心からの感謝を伝えた後、ふと浮かんだ素朴な疑問をユウはペドロにぶつけてみた。


「ペドロは僕のこと見捨てないでくれたんだね」


 ペドロは少し驚いて見せたが、すぐにあっけらかんと答えを返した。


「あんまり俺をみくびるなよ。ユウ一人負うるくらい大した負担じゃないっての。それに、そんなことしたら流石に居場所がなくなっちまいそうだしな」


 珍しくペドロが満面の笑みを浮かべた。

 つられてユウの表情も緩む。

 ペドロも普段からこんな年相応の表情を見せれば、他の人達とも仲良くやっていけるのにとユウは思った。


 なかなかユウから離れなかったメラニーがシェンズ達のもとに戻り、辺りに二人だけになったことを確認すると、ペドロはユウの耳元でひそひそ話を始めた。


「あの穴のことはまだ誰にも言ってないからな」

「何で皆に教えなかったの」


 不思議そうにユウが尋ねると、


「プレゼントにはサプライズってのが大事なんだぜ。ユウがシェンズに贈り物をするまではあの石のことは知られない方が良い」


 とペドロは答えた。

 ペドロのことだ。実は他にも理由がありそうだったが、自分のことでそこまで気を回してくれたことがユウはうれしかった。


「それからこれも返しとくぞ。お前、倒れた後もずっと放さなかったんだぜ」


 ユウが手渡されたのは洞穴で見つけた神秘的な石の塊だった。

 明るい場所で見る濃紺の鉱石は、その中で幾つもの小さな光をパチパチと輝かせている。

 光にかざすとその瞬きはより顕著に生まれては弾けた。

 ユウもペドロも夢心地で石の中の光を眺めていた。

 人の心を魅了する不思議な妖艶さのようなものをその光は帯びていた。


 少しの間夢現(ゆめうつつ)をさまよっていた二人だったが、一つの問題に気が付いて我に返った。

 石はその神秘的な輝きを差し引くと、とても不格好で女の子への贈り物には向かないように見えたのだ。

 形・サイズだけで言えば、大きめのサツマイモといった様相である。

 シェンズがそのことを気にするほど繊細な感性を持ち合わせているとは思えなかったが、贈る側としては最善を尽くしたい。

 ユウは腕を組み、ペドロは空を見上げながら、うんうん唸っていたが一向に妙案は浮かばなかった。


 宙を彷徨(さまよ)っていたペドロの視線がある場所で止まった。

 しかし、渋い顔で首をかしげたペドロはすぐに別の方向に視線をそらしてしまった。

 しばらくすると再びペドロが先程の方向を見た。だがやはり渋い顔をして別の方に顔を向ける。

 ペドロはそんなことを何回も繰り返していた。


 奇行に気付いたユウが何を気にしているのか尋ねると、ペドロは黙って自分の視線の先を見るように促した。

 ユウが示された先を見ると、忙しそうに動き回る仲間達の奥にカール爺さんが一人座しているのが目に入った。


「あの爺さんならこの石を加工出来るかもとは思うけどよ……」


 ペドロらしくない歯切れの悪さである。

 ユウにしてもカールが他人と関わりを持ちたがらないのは承知していた。

 カールに頼むのは難しいように思えたが、代案も出てこない。


「僕、頼んでみるよ」


 何の根拠もなかったが、ユウは敢えて言葉に力を込めた。

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