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第23話 幕間劇或いは少女たちの水浴び

 シェンズとヴィマラ、二人の少女は目の前の光景に圧倒されていた。

 20人近い女性が川辺で沐浴している。もちろん、全員が裸である。


 二人とも成人女性の裸といえば母か祖母くらいしか知らない。

 自分たちとは違う大人の身体をまじまじと見入ってしまう。

 肉付きが良い者もいれば、細身の者もいる。月光を反射する雪原のように白い肌の者もいれば、太陽に照らされた熱砂のように輝く肌の者もいた。

 各々が違っているのに、皆、大人っぽく見えた。


 一方で自分達はというと、どう見ても女性の身体なのに、目の前の“大人のお姉さん”たちとはやはり違う。

 シェンズは溜息をついた。

 歳を重ねて大人に近づけば、母親のような美人になれると思っていた。しかし、未だに自分の身体は薄いままだ。

 隣のヴィマラも子ども的な体型ではあるが、シェンズよりも肉付きが良い。

 身体の輪郭も女性的で滑らかな曲線を描いている。


 シェンズは無意識にヴィマラのへそあたりに手を伸ばしていた。やわらかく吸いつく肌を指先でなぞる。


「うひゃひゃ、シェンズ、くすぐったいよお」


 ヴィマラが突飛な叫びを上げて、恥じらうように頬を染めた。


「ヴィマラの肌って、もちもちで気持ちいいね」


 手を止めずにシェンズが素直な感想を述べた。


 シェンズの指に弄ばれて身をよじっていたヴィマラだったが、隙を見て反撃に出た。

 ヴィマラの両手がシェンズの脇に滑り込む。


「お返し。わあ、シェンズのお肌ぷるんぷる~ん」


 くすぐり合いに興じるシェンズとヴィマラに、オリガとサラが近寄ってきた。


「ずいぶん楽しそうだな、二人とも。良ければあの子も仲間に入れてやってくれないか」


 オリガの示した先ではメラニーが一人で川辺に座り込んでいた。


「私たちが誘っても、イヤだ、って言われちゃって。二人ならメルと年も近いし、きっと一緒に来てくれると思うの」


 サラにも重ねてお願いされた。

 大人に頼まれて悪い気はしない。

 シェンズとヴィマラはメラニーの方へ駆けていくと、すぐに手を引いて戻ってきた。

 メラニーは激しく抵抗していたが二人掛かりではかなわない。


「放しなさいよ。あたし、あんた達と水浴びする気なんて、これっっぽっちもないんだから」

「えー、一緒に洗いっこしようよお」


 二人はメラニーの意見を聞く気など、全くない。


「それに、私達とは仲良くしておいた方が良いわよ。私達は『魔法』が使えるんだから。一緒に来たらメルにも教えてあげるのにな~」


 メラニーは「魔法」という言葉を聞くと目に見えて動揺した。(まぶた)を見開き、目を輝かせて聞き返す。


「『魔法』って、あの魔法?」

「そうよ。私達すごいんだから」


 まだ一度も「魔法」を成功させたことのないシェンズが、小ぶりな胸を張る。


「う、嘘よ。あんたたち、あたしを騙す気でしょう。悪い人なのね」


 一瞬、シェンズ達に取り込まれそうになったメラニーだったが、持ち前の警戒心で踏み留まった。


「そんなに信じられないなら、見せてもらえば」


 サラの提案に、メラニーは疑いの目を向けていたが、最後は首を縦に振った。


 あっという間に人の輪が出来た。

 輪の中心ではヴィマラが仰向けの姿勢で川面に身体を浮かべている。

 シェンズとメラニーはヴィマラのすぐ隣、特等席に陣取った。


「シェンズ、もうやってもいいかなあ」

「いいよ。やっちゃえ、ヴィマラ」


 シェンズの号令を聞いて、ヴィマラが目を閉じた。

 その場でヴィマラの身体は水面に浮いている。幾らか待っても変化はない。

 メラニーは抗議の声を上げようとしたが、シェンズの人差し指によって唇を塞がれため、それが出来なかった。


「しっ、静かに。始まったよ」


 静かだった川面に波紋が起きた。そして、ゆっくりとヴィマラの身体が浮き上がる。

 周りの女性達から歓声が上がった。

 メラニーは驚きのあまり声が出ず、魚のようにパクパクと口を開けたり閉じたりすることしか出来なかった。


 ヴィマラが人の頭を越えて昇って行きそうになると、シェンズがヴィマラに飛びついた。


「ヴィマラ、そこまでよ」


 大声に気付いたヴィマラが目を開けると、二人は勢い良く水に落ち、大きな水しぶきが上がった。

 水面に顔を出したシェンズとヴィマラが笑いだすと、つられて全員が笑いだした。


「どうよ、すごいでしょ」


 シェンズがメラニーに声をかける。自分が「魔法」を使ったわけではないのに自慢気だ。


「本当にすごかったわ。それで、あんたは何を見せてくれるの」


 興奮が冷めないメラニーの質問に、シェンズは少し考えてから答えた。


「私は……、まだ練習中よ。そのうちもっとすごい『魔法』を見せてあげるわ」


 再び笑いが起きた。


「ここにいる全員が『魔法』を使える、そんな日が来るのもそう遠くはないかもな。『魔法』の方はうまくいっているのだが……」


 誰に聞かせるでもなく、オリガがポツリと発した言葉に気が付いた者はほとんどいなかった。

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