第21話 森林探検その後
ユウ達探索班が戻ったのは、まだ空が明るい頃だった。
大の男が20人以上も集まって、やっとの思いで運んだ巨大な猪は、残っていた女性達をとても驚かせた。
しかし、巨猪に沸いた女性達をより魅了したのは、ユウの背中から離れようとしない幼い少女だった。
メラニーはたちまち女性達に囲まれ、揉みくちゃにされた。
大きな獲物よりも、小さな子どもに心惹かれるのが女の性のようである。
「何、この子。可愛い」
「貴方、お名前はなんて言うの」
「私にも撫でさせて」
「あっ、逃げないで」
呆気にとられている男性達を余所に、女性達は我先にメラニーに襲いかかった。シェンズにヴィマラにサラ、オリガまでが加わっている。
「あー、もう嫌。どきなさいよ」
悲鳴にも似た叫びが聞こえた後、女性達の囲みを抜いたメラニーがユウの方へ走り寄ってきた。ユウの後ろに回り込み、身を隠す。
「どうしたの。急に」
「もう、何なの、あの人達。色々聞いてきたり、撫でまわしたり、抱きついてきたり。きっと悪い人達ね」
メラニーはユウの陰から頭だけを出したまま、不満を漏らした。
不信感に満ちた目が女性達に向けられている。
「メルちゃーん、こっちおいで。お姉さん達とお話ししよう」
「お話ししよ~」
シェンズとヴィマラがメラニーを誘いながら、近寄ってくる。
二人にとっては、「新世界」で始めて出会った年下の女の子である。お姉さん風を吹かせて、猫可愛がりしたいのだろう。
「皆、良い人達だよ。行っておいで」
頼みの綱のユウまでがこれでは、メラニーに逃げ場はなかった。
「そこから近寄らないで。それに、あんた達、みんなとっても臭いのよ」
その場にいる全員に聞こえるほどの大声を出した。メラニーに出来る最後の抵抗だった。
奇妙な光景が広がっていた。
40人の人間が、黙ったまま自分の体臭を確認している。シェンズとヴィマラは互いに臭いを嗅ぎ合っていた。
思い返せば、「新世界」に来てから一度も風呂に入っていないし、シャワーも浴びていない。
人によっては途中で川に入った者もいたかもしれないが、ほとんどの人間が身体を洗っていなかった。
すでにユウ達の鼻は麻痺していてわからなかったが、メラニーにはさぞ饐えた臭いがしたことだろう。
ユウも自分の手を嗅いでみたが、わからなかった。
「そんなに臭い?」
「ええ、とっても」
メラニーは自分の鼻を摘んでみせた。
「それなら~」
不意にユウとメラニーの後ろで声がした。
次の瞬間、急に背後に現れたヴィマラによって、メラニーは抱え上げられた。
「メルちゃんも一緒に、水浴びに行こ~」
ヴィマラの提案に、前方から迫るシェンズがすぐさま同意した。
「私も行くよ。ねえ、皆、ヴィマラがメルと一緒に水浴びに行こうだってー」
話はあっという間に広がり、結局、女性達はメラニーを連れて川に行ってしまった。
もちろん、
「男共、絶対に付いてくるんじゃないよ。」
と、オリガが釘を刺していった。
後には巨大な猪と呆然と立ち尽くす男性達が残された。




