3-2.2, 男共(+幼女)の休日
前話で男子陣がまったく出てこなかったので投下です。
ちなみに舞台はグリーンモール翠玉で、しかも土曜日という。
さてさてどうなるのやら♪
主な登場人物は、漸地風雅|(今回の語り役)、真田純、ダイア/エメラルド(幼女ver)、草間宏樹、歌西紀彦です。なお、草間と歌西は3−1.2話で声だけの出演はしているものの、今回名前は初登場の方々です。よく分からない場合は読み返してみると、美玲勢とその友達の方がいらっしゃりますが、それはこの二人です。
ではどうぞ!
〜火曜日の部活終了後〜
俺が美玲の親友、詞葉に何故か「虫ケラ」とか言われた後。その詞葉と美玲は何処かへ行ってしまったので、俺は純と二人で下校中。
ちなみに今の服装は、部活後のため学校指定のジャージ。
「なぁ風雅」
「んぁ?」
二人寂しく夜道を歩いてるときに、純が聞いてきた。
「今週の土曜日って部活あった?」
「いや、別に無かったと思うけど」
「土曜日暇?」
「暇……」
悲しいけど、俺は部活が無い休日だとまったくやることがない。寝てるかテレビ見てるか。
親が共働きで大体いないから、自炊はちゃんとするし、身の回りの事もきちんとする。普通の男子よりかは出来ると思う。
で、今週の土曜日は部活無いし、どうせ暇って訳。彼女なんていねぇし。
「俺も暇なんだよ」
「純もかよ」
「という訳だから、」
純はニヤッと笑ってから、
「男同士、どっか行こうぜ?」
と聞いてきた。ふむ、いい提案だとは思うけど、
「何処行くんだよ」
「や、なんか翠玉駅の近くに、“グリーンモール翠玉”っていうショッピングモール? が出来たらしいんだよ。結構大きい所らしいし、どうだ?」
へー、翠玉駅の近くにそんな所出来たんだ。
まぁ昨日まで二見区スタンプラリーっていうくそ疲れる企画に挑戦してて、そん時に翠玉駅に行ったから、ちょっと驚いた感じ。とりあえずは行こっかな。
「おう、行く」
「オッケー。何時くらいにどこ集まる?」
「時空のバス停でいいんじゃない?」
「じゃあ時間は10時くらいでいっか」
トントン拍子に話は進んでいく。まぁ二人だからこんなうまく進むんだけどな。
あ、ちなみに時空ってのはバス停の名前。え? 中二っぽい? そんな事聞くな。俺も知らん。決して『じくう』ではない、『ときそら』、これ大事。
「あ、じゃあな」
歩いていたら、左右に別れる分岐点についた。ここからは純と別行動になる。俺の家はここを左に、純の家は右に行くとあるからだ。そういう訳で、純は左手をヒラヒラと降りながら右の方へ進んでいく。
「また明日なー」
俺も軽く声をかけてから、左の方に進む。
「ただいまー」
俺は愛しの我が家に帰ってきた。
だがしかし、家の中から返ってくる声はない。
まぁそりゃ今は親いないだろうし。返ってきたら幽霊でもいる事になるだろうけど。
玄関で靴を脱ぎ、リビングに通じるドアを開ける。そして肩にかけていたバッグを投げ捨てる。
―――その時気付いた。ジャラッという音がしたから。
「あ、やべ」
そうだった忘れてた。バッグの中には制服とか教科書とかが入ってるけど、制服のズボンの中に、ネックレスが入っているのだ。しかもペンダントトップにはダイアモンドがついているものを。(何故持ってるかはスタンプラリー編参照) 急いでバックのファスナーを開け、ズボンの中にあるネックレスを確認する。
「ぶ……無事か……」
幸いなことに、ネックレスは無事だった。というかペンダントトップについている宝石のダイアの中にいる奴が厄介なのだ。
俺は宝石のダイアに話しかける。
「おーい、ダイアー」
『はいはーい』
俺がその名を呼ぶと、俺の脳内に声が聞こえ、宝石のダイアから光の粒子が溢れてきて、顕現した。
……幼女の姿で。
「……大丈夫か?」
「ピンピンしてるよ」
「なら心配無用だな」
この幼女=ダイアは誕生石の精霊らしい。ちなみに髪の色は銀色。
俺が心配してたのはダイアに外傷とかがあることだっだのだが、この様子じゃ大丈夫だろう。
でも一つ疑問が。今日はしょうがなく学校に連れてきたから、こいつの力で俺にだけダイアの声が聞こえるようにしてた。まぁおかげで何事にも集中出来なかったんだけど、部活の時はそうでもなかったのだ。ましてや下校中なんて、存在を忘れていたぐらいに静かだった。
「お前今まで何してた?」
俺はその疑問をダイアにぶつけた。
「え? 寝てた! だって長い時間寝とかないとヤバいんだもん。だけどさっきの衝撃で起きちゃった」
「ふっ……」
俺はソファーに倒れこむ。こいつに心配なんて本当にご無用なようだ。顔だけ右横に向けると、ダイアがいた。
「疲れたの?」
「頭が痛いわ……」
ダイアは心配そうな顔だけど、原因はお前だからな。気付いてないのか。銀色の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回してやりたい衝動を堪えながら、俺はソファーにまた顔を埋める。
そうしていたら、ダイアに聞くことを思い出した。顔の位置はそのままに、
「土曜日に純と出掛けるけど、ダイアも行くか? それとも置いてくか?」
こう聞く。そうしたら、
「もちろん行く!」
と、飛び上がっていそうなダイアの声が聞こえてきた。いや、見てないから分かんないけども。
「じゃあめんどくさいし幼女verで連れてくか……」
いくらなんでも休日にまで、こいつの声で憂鬱にはなりたくないし、幼女verで連れてくと心に決めた俺だった。
一度起き上がり、バッグの中から出したまんまで放っていた制服を、ハンガーに掛ける。
「てゆーかどこ行くの?」
「あ? グリーンモール翠玉だってさ」
「翠玉? エメラルドのとこ?」
「……あぁそっか」
ダイアは誕生石の精霊ということらしいので、誕生石に関わる場所に行くと人格が変わる。
土曜日行くことになってるグリーンモール翠玉も例外じゃない。近くに、というか翠玉駅の近くに、“翠玉の碑”っていう翠玉=エメラルドに関わる場所がある。で、ダイアよりかはエメラルドの方がのんびりキャラだから、下手な事はしないと思う。
「じゃあ尚更安心だな」
「なんかひどい事を言われた気がするけどお互いさま」
「じゃあエメラルドに言っとけ。純がいるから、設定は知り合いの子供ってことでいく。名前はエメな」
そう、純には真実なんて言えない。勘づいてるかどうかは置いといて、迷惑をかけないためにも部外者には真実を言わない、が俺と美玲と白夜で決めた約束だ。
名前は即興。エメラルドだし略してエメでいいっしょ。
「オッケー!」
「ならそれでいい」
まぁこれで平気だろうな。うん。
って言っても今は火曜日。計画日は土曜日。今から胸を踊らせるのは結構だけど、まだまだかか(ry
〜土曜日になっちった(笑)〜
いやぁ最近時間が過ぎるのがとっても速い気がするのは俺だけかな?いやいやそんな事はともかく、只今の時刻は午前10時。今俺はエメラルドと共に時空バス停にいる。なんで今もエメラルドなのかは、ダイアに無理を言ってお願いしたのだ。あっちに到着した瞬間、人格が変わったり髪の色が変わったりしたらめんどくさいし。
あ、ちなみに純もいる。
もちろんというかなんというか、俺が幼女(しかも外国人のよう)といると分かった時には、
「……ロリ」
「コンじゃねぇよ!!」
と言われそうになったので思いっきり突っ込む。
「えぇ!? 誰だよおま!!」
「あーっとな、俺の知り合いの子で、今預かってる」
「外国人なのか!?」
「だってあの親父が押し付けてきたんだよ。お、俺だって知らねぇよ」
すまん、親父。でも追及を逃れるためにはこれしか無いんだ。
それより俺は嘘くさくなっていないか心配だった。冷や汗も出てきてるし。
「あーまぁあの親父さんがなぁ……」
純はやや納得したみたいだ。安心。
「あ、でも一つ分かった事はあるぞ!」
「なんだよ」
「風雅、君はロリコンなんだな」
「違えええええええぇぇぇぇぇぇえええぇぇえぇえぇ(ry」
「名前なんていうの?」
「エメですー。よろしくお願いしますねー」
「いい子だなー。あんなロリコンの元に置いておくのは惜しいぜ」
「そうですかー? まぁ風雅はアホですからねー」
「言われてやがるwww 風雅ざまぁwww」
「おまいら酷いぞー」
あのー、俺ってそんなに盛り上がるネタになりますかね。ていうかエメラルド改めエメも酷いよ。うん。
「あーバス来たー」
軽い現実逃避もしながら、俺はわざとらしく言った。
「よし、乗るか」
「そうですねー」
「というかエメは乗車料金何円なんだよ」
まぁエメの本当の姿は精霊な訳だから、実際の年齢なんて知らん。俺が聞くと、エメは顎に手を当てながらちょっぴり唸る。
「普通に子供料金でいいと思いますよー?」
「ならそれでいいわ」
その時、バスがバス停に停車したので俺たちは乗り込む。ちなみに、駅までのバス料金は大人300円、子供150円だ。俺は一応エメの保護者(?)なので、合計450円を払う。
「どこに座りますかー?」
「まぁエメはなんだろうが俺の隣な」
「どっちかっていうと、風雅はシスコンか」
「何でだよ!」
「私、風雅の妹になった覚えはありませんよー?」
「ハハハ、そうだなエメちゃん」
「この人達もうやだ!」
純はともかく、エメはそんなにSだったのか。何気に酷いんだけど。
俺は溜め息を漏らして、後ろの方にある二人席の近くまで移動する。階段を上ってすぐ、正面から左側の席だ。そこにエメが歩いてきて、窓側に座る。俺はその後に座る。純は後ろの席に座る。
はい、という訳で、俺が少々酷いことを言われた以外にはイベントが無く、移動しちゃいました。
「翠玉駅ー……うぇーい……」
「なんか気持ちいいですねー」
「エメちゃんそうか?」
なんか俺は色々怠くて、バスから降りた途端に思わずひきつった笑いを浮かべながら、歩き始める。後ろからはエメと純がついてきていて、振り返ると、エメの髪がより濃い緑色になっている気がした。それで体をぐーっと伸ばすエメ。やっぱ自分の本拠地(エメラルドに関わる場所、またその力が宿っている場所)だと気分もいいのかもな。まぁ純はそんな事分からない訳で。
「で? こっからはどうすんの?」
「直通バスに乗る。以上!」
「便利なこって……」
そもそも俺たちを誘ったのは純だし、俺が聞いてみるけどちゃんと調べてきたと思われた。にしても、またバス移動かよ。でもエメは文句も言わないし、純はさっさとバス乗り場へ移動してしまうから、俺は心の中にそれを抑えて、純についていく。
移動が完了し、今俺たちがいるのはグリーンモール翠玉の近く。というかバスの降車場。
「さー行くぜー」
「というか何しろと」
先陣を切って進もうとする純を、俺の声で遮る。女子ならともかく、男子が洋服買うとかおかしいだろ。という訳で。
「ここのゲーセンは大きいらしいんだよ!」
「ゲーセンてちょ……」
ここまで来てゲーセンかよ。折角だから何かイベントでもないのかよ。
「別に私はいいですよー。なんでも来いですー」
エメに関しては放っておく事にするけど、ゲーセンだけはつまらなさすぎるっての。どこに行くかも定かで無い中、俺たちは入り口に歩き始める。
その時、こんな声が聞こえた。
「脱出ゲームやってまーす! よかったらどうぞー!」
「脱出ゲームぅ?」
思わず声を漏らした俺。休日だし、こういう企画をやっているらしい。よく見てみると、何やら特設の建物が見えた。
「お、なんかやってんな。行くか?」
純が興味を持った様子。俺たちに聞いてくる。
「じゃあ行きたい」
「楽しそうですねー」
「よし、決定ー」
始めっからやってみたいな、と思っていた俺はともかく、エメもあっさり決めた。という訳で、目的地が脱出ゲームをやっているらしい特設の建物となった。
「えーっと、一体何がどうしてこうなった」
「俺に聞くな」
「私も知りませんー」
只今俺たちは脱出中。お分かりになる通り、迷っています。はい。
「結局何がどうすればよかったんだ」
「あの分岐で左に曲がっておけばよかったんじゃね?」
「というかー、最初で強がった純さんも悪いかと思いますよー? 引き止めなかった私と風雅も悪いかもしれませんけどー」
「さーせん……」
幼女に怒られる悲しい中二男子の図。いや、もう俺の言う事も純の言う事もエメの言う事も全部一理あるようなこの状況。本当に何がどうしてこうなった。
「しかもあの二人を拾った事もめんどくさくなった一因ですしー?」
「ちょおまエメ、Sっ気ヤバい」
エメがかなり毒舌である。でもおかしい事はあったのだ。
「……俺が触った途端に、新たな道が開ける方がおかしかったんだよな……」
俺の声はエメにだけ聞こえたみたいで、神妙な顔になる俺とエメ。
「幼女か……」
「何お前、今度はそっち系に目覚めた? ま・じ・で????」
あれこの二人誰だ? っていう問いには後で答える事にするけど、事の始まりはこの脱出ゲームを始める時。大体20分前の事。
「よし、やろう」
「えっと、これは三つから選ぶのか。入口を」
「普通に初級でいいんじゃないですかー?」
脱出ゲームは別途費用がかかり、その料金分を払った俺たちは、三つの入口が並ぶスタート地点に立っていた。
やるったって、入口が三つあるのだ。比較的優しい初級、ちょっと背伸びして中級、そして、
『迷ったって責任は取らないんだからね!?』
……上級。
それぞれの入り口にはグリーンモールのテーマキャラクター、『みどりん』(人間)が象られた看板が設置してあり、上にあるようなコメントと、みどりんの絵が描いてあるのだ。あ、女性。うん。みどりんの姿は想像にお任せします。
初級と中級のコメントはいい。ただし上級に至っては、何故かツンデレキャラである。謎である。別にぐっとくる訳でもない俺にとっては、「痛いわー……」と思う事しか出来ない。
「いや、エメちゃん。ここで初級なのは男の名が廃るんだ……!!」
「廃るとは思わねぇけどなー」
「迷ったってしりませんよー?」
「まぁのこのこ初級に行くのもどうかと思うから、中級くらいでいいんでないの?」
「上級にきまっとろうが!!」
「「えー……」」
何故か妙に強く主張する純に、俺とエメは少しあきれ顔になる。はっきり言って、リスクは負わない方がいいかと。純はなんというかその男としてのプライドらしい。逆に言えば俺が冷めてる事にも繋がるけど。まぁ俺だって興味が無い訳じゃない。流石にこういうのは展開が見えてるから止めとくだけの事。
「という訳でお先ッ!」
「あ、待ておま!!」
ツンデレみどりんがいる上級の入口に、勝手に突き進む純。このゲームは難易度を決めたらもう変えられない仕様になっていて、誰か一人が行ってしまったら行かなければならない、って訳。別に置いていけばいいわけでもあるけど。流石にそれは酷いっしょ。
「しょうがないですー。行きましょうかー」
「……そだな」
もうしょうがない、と判断した俺とエメも上級の入り口に進んでいった。
「ほれほれこっちだ」
「はぁ……。迷ったって知らねぇぞ……」
まぁわくわくするちゃあわくわくするけども、迷ったら洒落にならないぞ。ちなみに迷ったは迷った時で、最初に料金を払う時発信機みたいのを持たされていて、もうダメだと判断したらそれを起動させれば係員さんが迎えに来てくれる。それは嫌でしょ……。
今の状態は普通に立体型迷路。いや、この迷路のままだったらまだよかった。
「か、鏡の迷路……?」
「だな」
「ですねー」
そう、少しの距離を進んでいったと思ったら、今までの茶色いいかにも作った感満載の壁ではなく、どこもかしこも壁が鏡張りの迷路になったのだ。ちなみに一番張りきっているのは純。珍しいのか何なのか、今回の俺は冷静に見ておく事に徹している。
「まぁいい。進まにゃならんのは変わりないな」
「お前本当にキャラ変わってないか?」
「それを言ったら私の立場ありませんねー」
「んーあぁそだな」
俺とエメの会話はともかく、純が先行して鏡の迷路を進んでいく。全部鏡だから右も左も全部自分達の姿が映ってるし、どこが行き止まりなのかも手探りで行くしかない状況。
「おーい純待てブベファッ」
「ざまぁwww」
「お決まりですねー」
もはやこういう所ではお決まりの鏡に正面衝突、というのを思いっきりやらかした俺。嘲笑う純、観覧に徹しているエメ。
「鼻打ったー……」
やっぱりこういうのは地味に痛い。痛い。痛い。いつかの高跳びして左手首を地面に強打、しかも捻挫なんていう出来事を思い出したのはここだけの話。
「でもしょうがないだろ。こういう所じゃお決まりなんだからよ。あ、こっち行き止まりだ、そっちは?」
「ここもダメですー」
「お前らがどこにいるのかも分からなくなってきた」
「あーでもこれ結構怖いな。出られなくなる事はないけど、やっぱ恐怖感あるわ」
確かに、と純の言った事に頷く俺とエメ。こういう閉鎖空間だし、しかも独特の空気があるからちょっと焦り気味で脱出口を探しているのは事実だし。
「お、おい。こっち来いよ」
「なんだよってうわ」
「檻みたいですねー」
「なにこれ……。あ、ゴムになってて進める所があるのか」
次に俺たちを待ちうけていたのは、先ほどよりも難易度が増した気がするような鉄格子の迷路。今度は四方を鉄格子で囲まれてるし、さっきより感覚がおかしくなりそうだ。抜け道は鉄格子がゴムで出来ている箇所で、そこも区別がつかないから触っていくしかない。
「風雅はエメちゃんとそっち探して。俺はこっち探す」
「おっけ」
いきなり二手に分かれた迷路。純が左を指差し、俺とエメはそっちの方に行く。純はまっすぐ行く。
「えっとここは違う、行ける。また鉄格子っと……」
これは結構精神的に怖くなってくるな。そんな感じでかなり早く鉄格子を触っていく俺。ちなみにエメは俺の後をついてきている。
「こっちが正解っぽいですねー」
「だな」
俺達が進んでいるルートは正解らしく、目視出来る所に大きなスペースがあった。ちょっと進んだらそこに行けそうだった。そのまま純を呼ぼうとした時、先に結構焦ってる純の声が聞こえた。
「おい、風雅!! こっち来い!! まっすぐ来い!!」
「何があったよ……。わーった!!」
あまりにも純が焦っているようなので、俺はそう返事した。エメとアイコンタクトをして、さっきまで通って来た道を戻っていく。そして、分かれた分岐でまっすぐ進む。ちょっと鉄格子とゴムをかきわけていったら、そこには純と……、
「だ、誰だお前ら」
知らない男子二名が四方を完全に鉄格子で囲まれていた。もう少し近寄ろうとしたら、
グォォォン……
「な……んだこれ……?」
何故か視界が歪み、めまいがしたと思ったら、純の近くに来ていた。
「気のせいか……?」
「気のせいじゃないですよー?」
「え?」
エメが思いっきり真剣な顔で俺の独り言に答えたので、俺はエメを思わず凝視してしまったのだが、それよりも純が早く言葉を発した。
「えっとこいつらは何故かはまってた。俺も無理。マジで鉄格子だこれ」
「お、俺は草間宏樹だ」
「俺は歌西紀彦。風雅だよな、リア充の」
「違うわ!!」
こんな時にリア充疑惑やめれ。それと思い出したけど、今週の火曜日|(3−1.2話の時)に話してた男子二人組がこいつらだったな。ちなみに草間は太り気味。
にしてもあれだ。男4人ってどうよ。まぁエメ(幼女)がいるけども、一応女子だけれども、本当は精霊だし、今いるちゃんとした人間は男4人だ。まぁ力を持ってる俺を普通の人、ってカウントするのはどうか、と思うけど。
でもまず解決すべきは、絶対にはまることのない鉄格子に二人がはまっているということ。超常現象でもおこったのだろうか。一応確認という事で俺が鉄格子を触ってみようとする前に、
「えっと、お前らは上級に入って、見事迷った挙句に何故か鉄格子にはまってるのな」
純が二人に聞いた。まぁこれも聞いとかなきゃいけない事か。
「あぁそうだな。宏樹がツンデレなみどりんとやらに惹かれて」
「お前だっていいな、とか言ってたろ!」
「さて、なんのことやら」
「何にしてもお前らはヤバい状況なのに、よく暢気に話してられるな」
鉄格子で閉じ込められた二人は、ある意味パニックになっていてもおかしくないとは思う。けどこいつらは暢気に話してるとか。まぁ極限状態すぎて精神がおかしくなっているともいえる。だけど記憶がしっかりしている、ということはただこいつらがかなり能天気なだけだと思う。
ギャーギャー言っている二人は放っておき、俺が二人を囲んでいる鉄格子に触れてみた。すると、
グォォォン……。
「またか……!!」
また視界が歪み、足元がおぼつかなくなる。エメもおかしい、と思っているらしい。顔に出てる。でもこの後が問題だった。
「……あれ? ゴムになってね?」
「え?」
「うん」
「あ、出れる」
なんと、鉄格子の二つがゴム製になっていたのだ。当然二人は抜け出せる事もでき、神様ぁぁぁぁとか狂喜乱舞している。いや、おかしいから。色々と。
それに二人が出れるだけでなく、俺たちが先に進む道も出来ていた。
「じゃあ先進むか」
「でも俺たちの方行ってもいいと思うけど」
「行くだけ行ってみよう」
「まぁいいわ……」
明らかにおかしいルートを進むのはよくないとは思うけども、行ってみるだけ、という言葉にしょうがないと思って五人で先に進む。
という訳で、まっすぐ行ったら迷ったという事。そんで知らない男子二人は、草間と歌西、ってこと。
「あーでもどうするか……」
純も流石に困った様子で髪の毛を掻く。
「戻ればいいんじゃねぇの?」
「いや、俺もやろうとしたけどなんかな……。道の構造が変わってるっぽいんだよ……」
「は?」
「大変なことになりましたねー」
「あ、でも俺達が閉じ込められてた時、発信機を起動させたんだけど、係員さん来なかったぞ」
「怖かったな。今も怖いけど」
「えー……」
草間と歌西が言うけど、これじゃあマジで俺たち迷子かよ。出られないし、しかもどこかおかしいみたいだし。
どうするものか、と俺たちが立ち止まって唸っていると、なんか俺の膝くらいからとてつもないエネルギーを感じた。何だ何だ? と思い下を見ると、そこにはエメがいた。
まぁ当然っちゃ当然なんだけど、さっきまでエメラルドグリーンだった髪の色は脱色して真っ白になり、しかも目の色が左目は緑、右目は柘榴色、っていうのかな? そんな色になっていたのだ。心なしかエメの体から光が放出されてるように見える。
「おい、エメ? どうした?」
俺はしゃがみこみ、皆からエメを隠すようにしてから聞く。すると、
『あ、今は精神の表面具有をしてるんですー』
「表面具有? あーあれか。その、内面にある人格を、外面で二つ一緒に存在させてるって奴か」
『当たりですー。風雅にしてはよく分かりましたねー』
「俺はそんなにアホなのk」
『アホです』
「酷っ。それで? そんな事してるのはなんでだ?」
そういえばエメは誕生石の精霊だったよな。だったらこういう芸当も出来るって訳か。
『そうですねー。今は―――エメラルドとガーネットが存在しています……。あ、今はガーネット状態です……。そして、ガーネットの石言葉は真実。即ち、歪んだ空間を元の姿に戻し、あるべき姿にします。でもこれは真実を手繰り寄せるだけですが……』
なるほど、だから右目の色が柘榴色なのな。宝石のガーネットの色は柘榴色だったし。
「で、今からやるの?」
『いえ、私達だけでは少々力が足りないので。ここの空間、かなり歪んでますよ……』
「あーなるほど。さっきから気になってたのはそのせいか」
ちなみに今までの会話は他に聞かれないよう、結構小声である。
『という訳なので、風雅。あなたには私達の力を一時預けます。あなたは元々力を制御するに十分な人材なので』
「『風を知る』力のあれな……。まぁいい分かった。やるならちゃっちゃとやろうぜ」
『分かりました。あ、少々気持ち悪くなると思いますが、責任は負いませんので』
「……ぉぅ」
そういうと、エメなのかガーネットなのか分からない幼女が、俺に向かって両手をかざす。その間には光が俺に吸収されていく。
「全然平気だけど」
『では思った以上に風雅は器が、力が強大なのでしょうね。それでは最後に』
幼女が力強く右足で踏み出したかと思うと、俺の中になにやら知らない力が混在していることがはっきり分かった。ドクンドクンと、心臓の鼓動が早くなる。
「はい、これで風雅にはガーネットの真実の力が宿りましたー。後で回収しますけど」
「なんか物騒だな」
もう表だって存在している人格はエメのものだけらしく、髪が元のエメラルドグリーンに戻っている。
「さ、ちゃっちゃと脱出しますか」
「いや、それが出来ないから今こうやって悩んでるんだろ」
「そうだそうだ」
「なんかやるん?」
当然のように俺が言うと、全員で突っかかって来る。
「まぁまぁ行けるだけ行ってみようぜ」
表の言葉はこんなんでいいか。そして俺は、ガーネットの真実の力を受け取った時から勝手に知っていた。力を発動させる言葉を。
「……(柘榴石よ、俺は真実を求める者)」
本当は「俺」が「我」らしいけど、流石にそれはまずいだろ、って事で勝手に編集。でも俺の中にある力が、心臓の近くに集まって来るのが分かった。ちなみに、この時点で目が柘榴色になっているらしい。
少し歩みながら、俺は最後までその言葉を言う。
「え、風雅……か?」
純はあまりにおかしい俺の行動に、思わず声をかけてくるけど、構ってなんかいられない。
「(その力を信じてやっから、真実を見せろ!!)」
なんか適当に思われるのは、俺が編集したから。それでもちゃんと力は応えてくれた。一度に柘榴色のオーラが俺の体から発散され、周囲を包んでいく。少しだけエレベーターに乗っているような感覚に襲われた後、俺たちは脱出ゲームの出口付近に移動していた。よかった、成功したみたいだ。
ふぅっと俺が溜め息を漏らすと、力が解除された気がした。目の色も元に戻った気がする。
「はい、お疲れさまでしたー。脱出ですよー?」
「ま、そゆこったな」
「お、おぅ……。でもなんか変な気がするようなしないような……」
流石純。こういう所よく気が付くな。だけどこれはちっと語れないだよな、ごめん。だけどそんなしみじみとした気持ちは、草間と歌西の言葉で全てが崩れる。
「よっしゃあああ!! 出れたぞおおお!!」
「外の空気ってうまいんだな。お前むさ苦しいし」
「いや、太ってるのは認めるけども」
「認めんのか」
「ははは……」
「こいつら見てるとどうでもよくなってきた」
「そうですねー」
もうこいつらは天然の奴ららしい。その場その場で、そのまんま環境に対応しちゃってるし。
「なんか腹減ったな」
「もう昼だな」
「食べに行きますかー?」
「そだな。お前らはどうする?」
「行く」
「二人ぼっちはあれなんで」
俺と純の会話に色々混ざって来た人達と一緒に、俺たちはフードコートを目指す事にした。
―――だけどこの時知らなかった。脱出ゲームの係員さんに聞いたところ、鏡の迷路や鉄格子迷路なんて作ってはいない、と。それはパンフを見た所で、十分に俺とエメは驚愕した。つまり、最初から俺たちは偽物の迷路にはまっていた、と。これは作為的としか思えない。ちなみに草間と歌西は俺たちの前に入ったらしく、不運だったとしか言いようがない。
ごめんなさい、10000文字越しました。長くなったと思います。しかもまだまだ書きたい事があるので、続きます。
ではまた。




