最終決戦・光姫
「飽和攻撃を! 上限を見極めなさい!!」
ヴェロニカの叫びが、戦場に響き渡る。
ヴェロニカは、現状の手札で何ができるかわからず、情報収集を優先すべきと判断した。
最低でも、化人に対し有効な攻撃手段の一つでも見つけなければ、なすすべもなく蹂躙されることになる。それだけは避けなければいけなかった。
考え付くのはシャルの≪プリズム≫による≪薙ぎ払え≫を収束させた一撃なのだが、その前に確認すべき項目もあったのでそれを優先した。
まず「相手の行動における優先順位」だ。このままシャルを狙うのであれば、それを軸に作戦を組める。
次に、「本当に有効打を与えることができないのか」だ。少なくとも、貫通力に定評のある≪エルフィンボウ≫は通じなかった。しかしそれが「黒い炎」だったから防げたのか、それとも体表の甲殻にも通じないのか、肌に相当する部分にすら通じないのか、それを確認したかった。
そして、相手の基本スペックだ。先ほどレイナスが攻撃されたときはそこまで脅威と感じなかったが、相手の攻撃、その上限も見極めたい。
それらの情報から、こちらの最強最大の一撃を確実に当てる手を考えねばならない。
ヴェロニカの責任は、重大だった。
この状況下で、シャルはかなり焦っていた。
目の前のヴラム――化人が防御特化であることは見て分かった。そして、その守りを突破できそうなのが自分の考案した≪プリズム≫による収束攻撃であることも。
現在≪プリズム≫の使い手はシャルの他に三人ほどいる。できれば彼女らを呼び複数個所から同時攻撃でもやりたいのだが、あいにく戦場は混乱していて、どこに連絡すればいいかシャルには分らない。
そして、シャルが今まで組んでいた光姫たちは、そろそろ理力の残量が心許なく、≪薙ぎ払え≫のような大技はもう使えないだろうことも痛かった。すでに三回使っているし、その前には普通に戦場で戦っていたのだから、シャルでなくとも理力が底をついておかしくは無い。逆に今まで温存が許されていたシャルの方に余裕があったとしてもおかしくないほど、彼女らは全力で戦っていたのだ。
難しい問題はさておき、今はとりあえず情報収集と、シャルも≪ライトニング≫で参戦する。遠距離攻撃には黒い炎の膨張で発生する防御幕を突破できない。いくつかの攻撃が重なって当たるときはほんの少し穴が開くが、ダメージを与えた様子は無い。黒い炎の下、甲殻の防御も相当である。
シャルの頭に、最大攻撃でも厳しいのではないかという疑念がよぎった。今までくらった攻撃に対処できる体を作ったのではないかと勘繰ったのだ。
「攻撃を集中すれば敵に届くわ! 狙える者は心臓の位置を狙いなさい!!」
防御幕の貫通を見たヴェロニカの指示で、攻撃は心臓があると思わしき左胸に集中し始める。
いくつもの攻撃が集まれば偶然重なるときもある。時折レイナスやほかの戦騎が背面に回って攻撃を仕掛けるため、化人は正面の光姫に上手く意識を集中できずにいる。
化人の基本スペックは戦騎のそれとさほど変わりなく、攻撃手段も殴り掛かるだけで、超巨大オオカミだったころのスピードとパワーがなくなっている。遠距離攻撃手段もあるかどうか疑わしくなるほど使ってこない。
もっとも、小さくなったことで的が絞りにくく、動きが細かくなって避けられることも増えたが。
化人との戦闘に切り替わってから三分ほど経過した。
幾人かの光姫は理力が枯渇し、戦線を離脱した。
化人の意識は相変わらずシャルを最優先とするものの、攻撃してくる全員を鬱陶しいと感じているのか、ある程度近くによればそちらに意識を向けることも分かった。
防御に関しては本当に対処法があるのか分からないほど重厚で、黒い炎を突破しても甲殻には生半可な攻撃が通じず、有効打は≪プリズム≫に賭けるしかないとこの場の誰もが痛感した。
肝心の「隙を作る」というのは難しく、戦騎並みの動きができることに加え、接近戦があまり有効でないのが痛かった。
少なくとも、黒い炎に武器が当たれば破壊され、運よく目に剣を突き立てた戦騎もいたが、それすら効かないのが分かっている。体をぐらつかせることすらできなかったので、物理的な影響すらキャンセルしているようだった。本来なら地面との摩擦係数とかそういったものの上限を考えれば、吹き飛ばすことぐらいは可能だったはずなのだが。
打つ手はあるのか。
軍を指揮するヴェロニカ、光術に長けたシャル。二人にはまだ光明が見えなかった。
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