最終決戦・レイナス③
「散れ! 散開して逃げるぞ! 4回目、南に5㎞!!」
レイナスはそう叫ぶと、シャルを抱きかかえ、他の光姫とともに駆けだす。
他の光姫はというと、彼女らも自分の戦騎に掴まり、逃走を開始している。
最初は纏まって逃げることを考えたレイナスだが、その場合は誰が狙われているか分からず手詰まりになる。最低限、≪薙ぎ払え≫+≪プリズム≫のコンボが出来なければ勝ちは無いのだが、誰が狙われているかをまず確認しなければならない。
よって安全確保のために目標を散開させ、囮役を選ぶ必要があった。
幸い、配合種の走りはとても速く、トップスピードの時速400㎞まで容易く加速し、「そのまま止まることが出来ずに駆け抜けていった」
その後、狙いはシャルたちだとばかりに2度ほど同じことを繰り返す。タイミングを計る暇こそないが、常に全力で走る配合種の突進を回避するのはそこまで難しくない。レイナスら戦騎は目配せで逃亡経路を共有。アイレンから引き離しつつ、ヴラムを轢き殺させることに成功している。
レイナスはこのことから、相手に戦闘経験がなく、ただ大きな力を思うが侭に振るう子供のような存在だと看過した。
ただやみくもに突進し続ける姿は愚かと言う他無く、減速してでも十二分に殺傷能力があることを理解できていない。もっと細かく攻撃すればいいのにと、敵ながら馬鹿じゃないかと呆れていた。
ついでに言うなら、他の光姫を巻き込むようなコースを選び、誰でもいいから潰して≪薙ぎ払え≫を使えなくするのが良い手と思うのだが――それはレイナス自身が自分たちの事情を正しく理解しているからだと思い直す。
ただし。
子供のようだというのであれば、学習し始める危険性があった。
今は大丈夫だが、効率よく戦う方法を考え出せば、優位はあっという間になくなる。よって即断即決即実行が肝要だ。
レイナスは思考する。
自分たちのところに何度も来ることを考えれば、先ほどの攻撃が脅威認定されたと思われる。よって、攻撃がこちらを狙ったものとして判断しなければならない。
シャルの考えを実行するには、最低限、1分程度の猶予が欲しい。≪薙ぎ払え≫は複数人で行う場合、光姫同士の接続というか、同調を必要とする。それだけで30秒近く必要になるのだが、その30秒は抱きかかえ、逃げ惑う今ではカウントできない時間だった。
現状では、駆け抜け、止まり、反転して突撃を繰り返す配合種に40秒程度の猶予しかもらえない。あと20秒近くを稼がなければ、勝機は見えてこない。
加減速を行っているので、約4㎞の間を行ったり来たりする配合種。その4㎞の中間点にレイナスたちはいるのだが、行って帰っての40秒を1分にするには、いくつか方策がある。
まず、相手との距離を取る方法。相手の突進に合わせ、こちらも相手に向かってく。上手くやれば10数秒は稼げるだろう。ただし、回避が困難で全員が切り抜ける確率は5割を割り込むだろう。当然、却下である。
シャルが狙われているのだからそれをうまく使いたいところだが、これをやるには全員一丸となって挑戦する必要がある。色々と、制約が厳しいのだ。
次に考え付くのが戦騎による突貫。相手が「ダメージを与えたことによる仕返し」を考えているのであれば、攻撃することで攻撃目標を選び直させることが出来るのではないかという話だ。戦騎たちでは攻撃力が足りないので却下である。
レイナスなら“双姫の加護”でギリギリ行けるかどうかという話なのだが、それをやったらシャルの理力が尽き、≪プリズム≫の使い手がいなくなる。本末転倒だ。
いくつか考えをまとめ、現有戦力ではなんともならないと判断するレイナス。
先ほどヴェロニカのところに使いを出したので、それを期待するのが最善と結論付ける。彼女であればレイナスと同等の挙動で最初の案――突進を回避して距離を取る――が実現できるだろうし、単独の≪薙ぎ払え≫でダメージを与え、囮になってもらうといった選択肢もある。
最初に思った即断即決即実行とは程遠い結論であったが、レイナスは致し方ないとこの場は切り捨てた。
現在レイナスたちがいる場所へヴェロニカが来るまで、距離にして6㎞。
使いを出して、連絡を得たヴェロニカが来るまでレイナスの推測で15分程度だろうか。それから5分は経過しているので、残り10分程度。
もしかしたらヴェロニカが自発的に動きもっと早く来てくれるかもしれないが、甘い考えをレイナスは捨てる。あと15回、すべて回避すれば大丈夫だと自分を奮い立たせる。
思考する間に4回目の突進をかわし、集合した仲間に考えを告げる。
戦いはそろそろ終わりを告げようとしていた。
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