最終決戦・シャル③
配合種と軍の位置関係を整理しよう。
最初に近くにいたシャル達だが、攻撃後の横転で約2㎞東にすべり、その後南に向かって5㎞の場所にいたヴラーナを殺した。ついでに、さらに東に3㎞動いてもう一人のヴラーナを殺す。
シャル達から見れば、南東に7㎞の場所に配合種はいる。
そしてこの場所からさらに3㎞ほど東に目を向ければヴェロニカが率いる、軍の部隊がいた。
シャル達は元々北の部隊の東端にいたのだが、配合種を迎え撃つため部隊のやや中央まで移動していた。
もっとも、北の部隊については戦列を維持しておらず、現在は散り散りになってしまっているので「部隊の中央」などという言葉は配合種が現れる前の話だが。
逆に東の部隊は配合種と直接やりあう位置にいなかったことが幸いし、隊列はそのまま、部隊としてきちんと機能している。
故にヴェロニカの配置も部隊の南端のままで、変更はない。
配合種はアイレンまで約15㎞の位置に陣取っており、現在配合種から見て北西のシャル達を睨んでいる。
最後に司令官を失ったヴラムだが、これについてはまともな作戦行動をとる事が出来なくなっており、各自の判断で適当に動き出した。
場を離れるモノもいて大半がこの場を離れたが、2~3000匹のヴラムが留まって軍と交戦している。
今までのように作戦に従った部隊配置などは考えておらず、しかも配合種の事も敵認定しているので、配合種相手に攻撃を行っていた。
状況は、三つ巴の様相を呈していた。
レイナス達は、シャルの考える対策を確認していた。
≪薙ぎ払え≫というのは、普通の光姫では使えない者が多く、使えたとしても複数が集まり協力して漸くというほどに消耗が大きい。別に理力の最大値が足りないとかではなく一度に使える量の問題だが、ヴェロニカのように単独で使えるものがいる方がおかしいのだ。
よってこの場にいる光姫で何とかしようと動き出した。
レイナスは保険という事で近くにいた戦騎にヴェロニカを連れてくるよう頼み、互いの位置関係を確認する。
さすがに索敵術の範囲外ではあったが、あれだけの巨体だ。目視で探すのは容易だった。
「シャル、対策はあるのか?」
「大丈夫、だと思う。胸を貫いたって事は攻撃力は足りていたって事だよね。それも、過剰なぐらい。あとは致命傷を与えるのに必要な射線、頭から貫くだけの作業でいいと思うの」
シャルはさらりととんでもないことを口走った。
≪薙ぎ払え≫の≪プリズム≫による収束は、おおよそ1㎞で効果を失う。
先ほど、配合種は時速約400㎞で走っていた。
相手が時速400㎞で走るという事は、1㎞を9秒で走り抜けるという事だ。射程圏外から準備し、範囲内に入った瞬間に当てるとしても、タイミングはシビアだ。狙う事がではない。逃げることが、だ。
成功した場合、あの巨体の残骸がまき散らされるので可能な限り早く逃げなければいけない。さっきは生き残っていたので確認できたわけではないが、最期の自爆まで考えねばならない。
それを考えると正面からの攻撃というのは、無謀というか、自爆覚悟でしかできないことになる。
……配合種に自爆などないのだが、それを知る者はすでに死んでいるので誰にも分からない。よって、覚悟というか、自分の命をチップとして賭ける度胸を要求されるのだ。
それに、倒せない可能性というのも存在する。
頭を貫けば確実に死ぬというのは、生物に対する基本則をもとに出した結論だ。本来なら、心臓を貫いた時点で結着が付いていたはずだと思えば、頭を潰して確実に勝てると決まったわけでもない。
それに、相手が避けたらそれでおしまいという可能性も多分にある。
レイナスは、そのことをシャルに問うが
「私たちの余力を考えなければ、あと二発、撃てるの」
逃亡を一切考えていない答えが返ってきた。
「一撃で倒せなくても第二射で確実にトドメをさせばいいの。最初の一撃で行動不能まで追い込めば、安全に二発目でトドメをさせます。そう考えることもできますが、確実に倒そうと思えば初撃から殺しにいくべきです。二回分削り取れば、何とかなるはず」
シャルは自分の考えを訥々と語る。
考えを翻してほしいレイナスは救いを求めるように周囲の、他の光姫を見るが、彼女らも覚悟を決めているようだ。
特に相談する時間もなかったので、シャルの考えに光姫としてのプライドでただ同調しているだけ。この一戦、元々が決死の覚悟を求めるほど過酷な条件での戦いだ。余裕ができて生き残ることに意識を回してしまったレイナスの方が甘かっただけだとも言える。
「はぁ。分かった、全力でフォローするから――」
溜め息を吐き、シャルへの協力を決めたレイナス。
そこへ、配合種が向かっていた。
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2014年3月25日 誤字修正
× 考えをヒルがしてほしいレイナスは →
○ 考えを翻してほしいレイナスは




