最終決戦・ヴラーナ②
時間は少し遡る。
「なんだありゃあ!?」
軽薄男は、自分の用意した切り札、「配合種・強襲型」を貫いた光に度肝を抜かれた。
通常というより原則として、ヴラムは繁殖施設によって作られる。
これはヴラムという生き物を工業製品的にとらえ、例外をなくすための知恵だった。
彼らヴラーナというのは、生物としての強度においてヴラムに劣る。光術を使う戦騎や光姫などと相対するなど以ての外だ。そんな彼らがヴラムに対して安全装置を組み込み、絶対の服従を強いているのは当然だろう。それに命令に対し絶対服従であるのだから戦術面において指揮しやすいといったメリットもある。普通の部下は、指揮したとおりに動いてくれないのだ。
安全性を追求した反面、生産性に難があり、材料の調達などが厳しくなる。しかし離反・造反の可能性がある部下を持つより、そういった苦労を背負い込む方を選んだのだ。得難いメリットを多少の苦労で賄えるなら、それに越したことはない。
しかし今回軽薄男が用意した「配合種」はそのあたりの事情を一切無視したヴラムである。
強襲型に交配機能を追加し、産まれてくるヴラムには乱数で能力を付与する。乱数を用いることでコスト以上の生産性を得ようと考えたのだ。もちろんコストに見合わない失敗作が生まれることも考えたが、画一化されたヴラムでは軍に戦闘ルーチンを解析され、簡単に対応される危険性を考慮した結果でもある。
それに拠点を放棄してしまう計画を立てたのだから、今後の戦力補充を可能にする交配生産は、一応理に適う判断だ。
超巨大オオカミについて言えば、虫型のような全身防御に通常の強襲型を大きく上回る体躯を持ち、かわりに自爆機能がオミットされてしまったが、十分な結果を出していると軽薄男は見ていた。
巨大になった分、移動速度も上昇し、事前に配置せず援軍にすることで軍を攪乱。そのままアイレンに致命的な被害を与えて戦意か理性を奪い、軍を殲滅する予定だった。
まあ、最後の殲滅についてはただの希望で、実際は「それなり以上の被害を与えて狩り取られるかな?」程度の認識であったが。
そんな皮算用で投入した配合種があっさり片づけられたことに、軽薄男は戦慄した。
計画が狂うとか言ったレベルの話ではない。
あのような術をこの短期間で開発して見せた軍の底力を畏れたのだ。
軍の戦力分析が甘かった。いや、戦力の伸びしろについてまともに考えていなかった。
相手が次にどんな手を打ってくるかが予想できず、何が起こるかわからないといった不安が軽薄男の思考を狭めた。
戦場では何が起こるかわからないとはいえ、ある程度の予測は最悪な物も含めてシミュレートするのが常識だが、それをはるかに上回る結果を出されては混乱するのも道理だろう。
勝てないのではないか?
ここで終わってしまうのか?
そんな考えが浮かんだが、次の光景を見て軽薄男は狂喜する。
殺られたと思った配合種が起き上がり、無事な姿を見せたのだ。
回復のためのエネルギー補給に自分の駒を食べているがそんなことは気にもならず。
ただ自分の命運はまだ尽きていないことに安堵し、当初の予定通りアイレンに攻め入るよう指示を出した。
傷が癒えた配合種は怒号を響かせると、何故か軽薄男の方を向く。
何事かと彼は首を傾げたが――自分に向かって走り出した配合種相手に狼狽し。
あっさりと。
実にあっさりと軽薄男は踏みつぶされた。
その後、真面目男は突然の乱入者に驚きつつも、それを自軍戦力と判断し、指示を出した。
そしてそれが気に食わない配合種にやはり踏みつぶされ、その生涯を終える。
先ほど受けた激痛に激昂した配合種は、自分をそんな目に遭わせて尚使い潰そうとした愚か者に制裁を行った。
ついでに自分に命令しようとする弱者を殺した配合種は、次の目標を決める。
自分の体に傷をつけた、敵の排除だ。
指揮官のいなくなったヴラムが右往左往する中、配合種がシャルを狙って動き出した。
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