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最終決戦・シャル②

 シャルの≪プリズム≫によって収束された≪薙ぎ払え≫はその出力に見合った結果として、超巨大オオカミの心臓付近を貫通した。超巨大オオカミの右前足の付近から左の腹にかけて直径1mの大穴が空いているので、確実に仕留めたと、その場にいた誰もが思った。シャルも上手く期待に応えることが出来たので、いまだ戦闘中とはいえ思わず満面の笑みを浮かべた。


 走る勢いのまま体を地面に投げ出し、木々をなぎ倒しながら横滑りする超巨大オオカミ。

 最初から進路上を危険と判断していた戦騎たちは無事だったが、多くのヴラムが下敷きになり、死んでいった。

 2㎞ほど地面を抉って、死骸はようやく動きを止めた。


 超巨大オオカミの外見は、強襲型(巨大オオカミ)のそれと同じである。2倍地下大きさに黒炎をまとっているという差分はあれど、基本は「とても大きい」「オオカミの姿」である。

 であれば、倒した後の懸念もまた同じとなる。


 「総員、退避!!」


 作戦に参加した全員が、一斉に非難を開始する。

 作戦に参加せずとも、近くにいた者も2㎞以上は離れようと全力で走る。


 強襲型は、倒した後に爆発する。近くで巻き込まれた場合、まず間違いなく死んでしまうだろう。サイズが大きいので爆発も相応に大きいと予想され、みんな逃げるのに必死だ。


 だが、その行動は別の結果を生んだ。



 倒したと思った超巨大オオカミは何事もなかったように起き上がり、周囲に怒号を響かせた。

 人間で言えば5㎝程度の穴が心臓付近に開いたというのに、それを無視するかのように、動きは滑らかだ。苦痛に震えるといった可愛げは無い。


「おいおいおいおい、どうやって倒すんだ、あの化け物」


 それをシャルの傍らで見ていたレイナスの頬を冷や汗が伝う。

 表情は完全に固まっており、目の前の光景を信じたくないという気持ちでいっぱいになっている。

 それはシャルも同様で、自分の努力を完全に否定されたかのような気持ちになった。先ほどまでの達成感は吹き飛んでおり、顔色は蒼白と言う他無い。

 そしてそれはその場にいる他の者にも同じことが言え、絶望が身を支配することを止められない。



 その生命力に呆気にとられ言葉を失う軍であるが、その後の行動にさらに驚かされることになる。

 あろうことか、超巨大オオカミは周囲にいた生き物――つまりはヴラム――を、捕食し始めたのだ。

 シャルをはじめ、軍の人間は全員が避難済みであり、超巨大オオカミの周りにはヴラムしかいない。それを、手あたり次第、食べている。

 食うたびに傷が癒え、回復しているのが傍目にも分かった。


「連装収束モードなら、頭を潰せば……」


 その光景は異様であったが、同士討ちともいえる行動に現実味は薄れ、驚愕はシャルの中を一周廻って正常な思考を取り戻させる。

 先ほどの攻撃が致命傷にならなかったのは胴体を攻撃したからであり、頭を吹き飛ばせば何とかなるのではないかとシャルは考える。


 心臓や肺は全身にエネルギーと酸素を送る重要機関であるが、潰したからと言って即死に至らない。人間でも、ギロチンで落とされた首が数秒間は生きていたという逸話がある。あの超巨大オオカミは体が大きい分、心臓の影響が小さかったのか。それとも闇術で生きながらえたのか。とにかく死ぬまでに傷をどうにかし、生き残ったという訳だ。


 ならば思考を司る頭を潰せばどうなるか。

 それこそ、即死である。

 残った肉体は痙攣したりするかもしれないが、それは不随意筋が条件反射で動いているだけである。生きているわけではない。



「もう一度、チャンスをください! あの化け物を倒せるかもしれないんです!!」


 自分の中で「頭を潰せば何とかなるかも」と結論付けたシャルは周囲の光姫にお願いする。

 いまだ驚愕から脱せずにいた光姫たちであったが、シャルの言葉にわずかな望みを得て、のろのろと動きだす。

 先ほどとは違う手順を踏むこと、それだけお願いする。


 そして、シャルたちが射程距離まで近づこうと敵のもとに駆けだそうとした瞬間、超巨大オオカミはアイレンとは正反対の方角に向けて走り出した。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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