最終決戦・ヴラーナ①
「気が付かれましたか……」
東進を続ける部隊の後方で、真面目男はヴラムの配置と損耗具合からそう結論付けた。
もともとこの一帯の地下には、いくつもの空洞がある。
空洞の下は粘土質の土であり、水はけが悪い。木々が根を張る土は砂雑じりの、水はけのよい土が多い。
その境目に、空洞はあった。
恐らく地下水の流れていた道で、ここ最近は雨が降っていなかったことで空洞になったと思われる。
最終的にはアイレンの近くを流れる川に合流するため、それを知ったヴラーナが利用できるのではないかと考えたのだ。
今回は念のために隠密型まで使って地下から仕掛けようとしたのだが……完全に当てが外れた形である。開始数分で、しかも先行突出してきた者に見破られたのは、わりと痛い。
しかし、真面目男の表情はさほど動いていない。
もともと、数人仕留めた段階でバレることを想定していたからだ。初手としては有効だが、そう長く使える策でもない。
バレたらバレたで、そのあとは地下に対し一定の注意を向けさせることが期待できるので、索敵能力の制限という意味では無駄ではない。
この後は、敵を振り回し、疲弊させ、叩き潰せばいい。そのための策が、ヴラーナ側にはあった。
真面目男はとりあえず地下に潜んでいた連中を地上に戻し、戦況の推移を見守った。
一方そのころ。
北上を続ける部隊の指揮官、軽薄男は独自行動を取ろうとしていた。
「仕込みは上々、細工は流々。仕上げを御覧じろ。と」
にやけた笑みを隠すことをせず、ヴラムたちに指示を出す。
レイナスたちが地下に潜ませたヴラムに気が付いたことは理解しているが、それは真面目男の策であり、彼の策ではない。趣味の違う者が行った策など、彼にとっては何の価値もない。よって、成功も失敗も、全てどうでもよかった。
興味があるのは、ヴラムの仕込みを減らしてまで作った、とあるモノの効果。
本当なら冬を待って戦いたかったが、相手はこちらの事情を汲んでくれない。むしろ、それを外すように動こうとする。
忌々しいと、軽薄男はそう思う。が、だからこそ成功した時は楽しいだろうと意識を切り替える。
「予想通りの面制圧。こっちを押し込んでからまとめてつぶす気だよなぁ。ご苦労なこった」
人類側、軍の戦術をそう評価する軽薄男。
正直なところ、軍の戦術にはこれと言って対策など取れない。
下手に密度を増せば一掃されるし、現状維持では軍の壁を突破することはできない。よって、できることといえば。
「面を避けるように大きく迂回……しかねぇよなぁ」
軍との交戦地域を避け、西から大きく迂回する部隊を用意する。真面目男も似たようなことをやっているだろうが、それぐらいしか打つ手はない。
最初からもっと部隊を細かく分け、超広域戦闘を仕掛けるといった手もあるのだが、その場合は指揮系統に不備が出る可能性が高く、地下を使った策も機能しなかった可能性が高い。そして軍の行動も予想しにくくなる。
であれば、ある程度ヴラムをまとめ上げ、軍の配置を誘導するほうが理に適っているのだ。
とりあえず。とりあえずだが、先ほどの指示に加え迂回命令を出す軽薄男。
「まあ? 面白いことになるだろうよ」
木々が邪魔して見通せるはずもないが、軍の方を見据えながら軽薄男は楽しそうに笑っていた。
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