最終決戦・レイナス①
レイナスは北側の部隊、一番東側にいた。
今回の作戦でヴラーナを確実に潰し、今後、作戦行動をとれなくするのが狙いだからだ。
ヴェロニカの予想では、ヴラーナは前線に来ないという話だ。ならば、2分割されたヴラムの群、最奥に潜んでいる確率が高いという事。小心者なのか慎重なのかは横に置き、司令塔というのは敵に潰されないよう、後方に位置するのが常識である。下手に前線において早々に潰されれば、戦力がいくら残っていても戦争にならないからだ。
そして、可能ならば中央にヴラムを集中させたいといっても相手が乗ってこなかったとき。北の群は西に舵を取り、東端のレイナスたちに背を向ける形になると考えられた。そこを強襲し、一気に潰すのがレイナスたちの役目だ。
ちなみにヴェロニカは東の部隊の南端にいる。一番の激戦区であるが、最初の目的である「中央にヴラムを押し込み、一気に殲滅する」というのを考えた結果だ。同様の理由で最精鋭部隊が北の部隊、西端に配置されている。
朝方から動いたヴラムの群れに対し、即座に対応した軍。
軍とヴラーナは彼我の距離が約2㎞になるとお互いを認識し合い、進軍速度を緩めてジリジリと近づいていく。
残り500m。
その段階で、軍の方が先に仕掛けた。
先行したのはレイナスたちである。同様に東の部隊 北端の精鋭も突出する。
簡単に言えば、先行することにより敵の包囲を促し、密集地帯を作ろうというものだ。単独戦闘に長け、離脱能力の高さからレイナスともう一部隊が選ばれた。
「シャルは迎撃、リーゼは周辺警戒! 任せた!!」
「「了解!」」
相手は部隊同士の間隔を広くとっている。よって最初の方は囲まれるなど考える必要はない。各個撃破に近い形で戦闘を進める事になる。
「このっ! シャル! そっちに一匹行った!」
「はい! ≪ライトニング≫!」
レイナスとシャルが突貫する。
レイナスがやや前衛寄りで、シャルはその5mほど後ろで中距離。リーゼは更に50mほど後方に離れている。
最初に会った時とほぼ同じフォーメーション。
あの時との違いは、シャルがエンジン全開で戦っていることだろう。
二人は敵前衛を務める通常型相手に獅子奮迅の戦いをしてみせる。
レイナスはいきなり“双姫の加護”を使っている。
これはこの状態だとシャルの理力が減るたびにリーゼの理力がシャルに流れ、回復を促すからだ。リーゼよりもシャルの方が光術の威力と精度が高く、戦力として上なのでリーゼをサポートに回す形となった。
問題があるとすれば戦闘時間で、レイナスの維持できる“双姫の加護”状態は現在約10分。残り5分と、途中で解除する予定であるが、体への負担は大きい。暴れ終わり離脱した後は、レイナスのみ10分のインターバルを置くことになっている。
リーゼは≪アースソナー≫と同時に≪地形把握≫を展開し、隠密型を警戒する。
そのリーゼの感覚情報に、ふと違和感があった。
「先輩、地面に何か仕掛けてあります!」
≪アースソナー≫はヴラムの進軍を教えてくれるが、その反応がときおり途切れる。精査してみると「蝕」が発生する場所があるのだ。念のために意識をその近くに向けてみれば、地中に潜むヴラムがいた。
歩くよりもゆっくりと移動し、レイナスたちを無視してアイレンの方に向かっている。すでにリーゼよりも後方にいる個体も存在し、気が付く前に踏み越えていたようだ。
慌てて≪ライトニング≫でそれを攻撃するリーゼ。
土中、深さ1m程度のところにいた隠密型はその耐久性の低さもあり、一撃で潰された。
「地中を隠密型が移動しています!」
「気が付いたやつはこの場で処分! 戻った時に周辺へ連絡しても間に合うか!?」
「はい! 動きは遅いので何とかなります!!」
とりあえず、自分たちの任務と危険度を秤にかけ、優先順位を決めるレイナス。隠密型が地中を移動する速度はおおよそ時速2㎞。アイレンまでは10㎞以上あるので、約5時間かかる計算である。それなら5分ここで暴れてから戻り報告しても十分間に合うとリーゼは判断した。
そうしてリーゼが「モグラ叩き」をしていると、急に倒したヴラムが爆発した。
「厄介な……。人間型の自爆攻撃か」
その爆発の正体を言い当て、苦い顔をするレイナス。
リーゼがこれに気が付いていなければ、急に足元から攻撃を受け、レイナスは死んでいただろう。嫌な汗が流れるのもしょうがない。
理屈としては簡単だ。ヴラムは軍の18倍を誇る。ならば、2匹使い潰して1人殺せれば、損失は最小限に抑えられたと言っていい。数に勝るからこその戦術であった。
「状況が変わった! いったん後退して地中からの自爆攻撃をどうにかする! リーゼ、“双姫の加護”を解除してくれ!」
この戦法に気が付けなければ、軍は相当数の被害を受けるだろう。
自爆攻撃がどの程度混じっているかわからないが、トータルで見て優先順位が変動したとレイナスは判断し、後退を始めた。
戦闘開始から、3分の出来事であった。




