表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/100

幕間:闇夜の二人

 アイレンから西に20㎞の地点。

 そこにヴラムの群れはあった。


 先日ダルムシュタットでほぼ崩壊したわけであるが、フルダからの増援――指揮官型が率いていたため、合流が遅れた――により息を吹き返している。

 合流前までの状況では身動きが取れず、増援の合流前までは戦々恐々としていたヴラーナの二人であったが、今は今後の方針を打ち合わせることができる程度に精神が回復している。


古巣(ブライザッハ)に今から戻って、立て直し出来ると思うか?」

「無理ですね」


 弱気な案を出した軽薄男だったが、その案は真面目男に切り捨てられる。


手駒(ヴラム)を増やす手段がないのです。貴方も見たでしょう、あの都市(ブライザッハ)に向かうアリの群れを。根こそぎやられたとみて、間違いありません。「楽観論に任せて戻ってみたけど何もありませんでした」は、最悪ですよ 」

「それじゃあ、フルダとククスハーベンはどうだ? あいつらの戦力を考えれば、そっちはまだ手付かずじゃね?」

「……ここに私たちがいる時点で、難しいですね。間違いなく追跡され、そのまま潰されお終いでしょう」


 ここ最近、ヴラムは大量生産されていた。

 それは通常の生産速度を大きく上回る状態であり、そう長続きするものではなかった。結果だけ言えば、もうヴラムを作る材料がほとんど無い。材料の調達も難しい。

 本拠地であったブライザッハが無事なら、まだ何とかなっただろう。しかし運悪くそこを落とされた以上、打つ手はなくなった。

 つまり、ヴラーナに戦力の補充はできない。


 人間側がそれを知らないなら多少のハッタリはきくように思えるが、人類側は「全戦力を集結させている」「『門』(ゲート)は破壊済み」「『門』のあるところが本拠地だろう」などという各種情報を持っているので、それができるなどとヴラーナたちも現状を楽観視していない。


 ここでアイレンを落とし、半数以上のヴラムを生き残らせるのに失敗すれば。確実に負ける。

 ヴラーナ二人には後が無かった。



「だったらさぁ、強攻して勝つ見込みはあるのかよ? 無駄死には趣味じゃねぇぞ」

「無いとは、言いません」


 撤退に反対された軽薄男は真面目男に食って掛かる。意見を言わない奴に否定的なことを言われるのは苛つくのだ。

 だが真面目男に腹案があったようで、軽薄男は興味深そうに見返した。


あの都市(アイレン)を無視して、奥を目指します。あの都市が防衛ラインなら、戦力はあそこに集結していると考えるのが妥当ですから。でしたらそれを無視して敵の内地をたたくのです。補給がなくなれば戦えないのは、どこ世界でも同じでしょう?」


 真面目男の提案に、軽薄男はあからさまな侮蔑の表情を見せた。


「オイオイ、その作戦が実行できたとして、奴らが俺たちに追いつくことだって考えられるんだぜ? 楽観的過ぎやしないか?」

「二手に分かれ、追跡を拡散します」

「はぁ~。寝惚けるなよ。ただでさえ少ない戦力をこれ以上減らしてどうするよ? どっちもやられてゲームオーバーだろうが」


 真面目男の後方攪乱戦術は、捨て石にやらせる類のものだった。

 たしかに人類側に打撃を与えることはできるだろう。しかし軽薄男の指摘する通り、追撃されて終わるのがオチだ。


「しかし、あの都市(アイレン)を落とすよりは、有利に戦えるはずです」

「野戦の方が都合がいいのは確かだけどよ、先がねぇつって(と言っている)んだよ」

「貴方の言こそ、先を見据えない愚か者の発想でしょう? 引いてどうするのです。私たちに余力は無いんですよ!?」


 馬鹿にされ、考えを否定された真面目男は軽薄男に食って掛かる。

 先ほどとは逆の構図である。


「だからさぁ、退けばいいじゃんか。で、連中が来たら同じことを繰り返す。攻めてきたら、それを躱して攻め込むだけだ。足の速いのを使って俺たちは先行。他はバラけて進めば奴らに打つ手はねぇ。多少被害は出るだろうが、あの都市(アイレン)を潰してそのまま他も潰す方が、まだ勝機が見えるんじゃね?」


 軽薄男の考えは、軍を積極的に振り回すことで経済的に疲弊させる戦略を組み込んでいる。


「俺達の追撃など出来ずとも、全力で戻って防備を整えるだけでしょうが」

「それはそれで、連中は疲弊してるんじゃね? 疲れたトコたたくのは基本だろーが?」

「一度成功した作戦を何度もやれば、対策の一つでも取られるでしょう。繰り返すのは愚策ですよ」

「チッ」


 策とは虚を突いてこそ意味がある。確かに繰り返すのは良くない。それを分かってしまった軽薄男は舌打ちして相手の言い分を認める。


「で、結局どうするんだよ」

「敵をおびき出して、そこでたたく。これしかありませんね。周辺の地形を調べていますが、面白いところを見つけました」

「ふーん。じゃあ任せるわ。俺はちょっくら散歩でもしてくる」

「待ちなさい! ……ふぅ、あの豪胆さは見習うべきなのでしょかね」


 当面の方針が決まったところで、軽薄男はその場を去る。

 その顔が愉悦に歪んでいたことは、もう一人の知るところではなかった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


2014年3月16日 誤字修正

× 全戦力を終結させている →

○ 全戦力を集結させている

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ