血戦(真)終
敵集団から脱出を果たした仲間を背に、ヴェロニカは一人背を向けた。
向き合う相手はヴラムの群れ。
理力の残量は≪薙ぎ払え≫三発を使用したため、三割を少し切ったところ。普通の光姫に比べればまだ余裕はあるのだが、これからやろうとしていることを考えれば、心許ないというより無謀の一言。
今から、死地にいる仲間を助けようというのだから。
自分の後ろに、レイナスがいる。
たったそれだけを支えに、ヴェロニカは前に向かって駆け出した。
行きについて言えば、敵を殺すのが目的ではない。味方と合流するのが最優先だ。
高速機動のために身体強化は最大で。使う光術は≪エルフィンボウ≫。駆けながらでは二発が限界だが一撃で最低一殺。進路上、どうしても邪魔になる敵と人間型のみを射殺していく。
「邪魔を、しないでくださいな!」
人間型を見ればすぐさま射殺し、肉壁のように並ぶヴラムを見れば弧を描くように横からまとめて複数匹を射殺す。
最小限の消費で最大限の効果を求めるように、ヴェロニカは死をまき散らしながら進んでいった。
20と少しのヴラムを殺し、2㎞を踏破したヴェロニカ。
彼女が仲間のところにたどり着くころには、中衛後衛の部隊は半壊し、乱戦に持ち込まれていた。
各々目の前の敵しか見えておらず、仲間や周囲に潜むヴラムに気が回せない。
そうなると、敵への対処が場当たり的になり、陣形を組んで面を形成することもできなくなる。そうなれば背面から攻撃を食らうことにつながり、無駄な損耗が増える。ヴェロニカが助けに来た時点で1500人いた軍の残存兵は、1000人を割ろうとしていた。
ヴェロニカは周囲を見渡し、軍上層部の姿を探す。彼女らは中衛にて全軍の指揮を行っていたはずだが、機能していないことは明々白々である。もし指示を出せるようであれば、隊列の組み直しぐらいはさせているはず。
多少の危険を冒してでも最高司令官の姿を求めるヴェロニカであったが、最悪の事態を想定し、合流を諦めることにする。
今この近くにいる仲間だけでも、彼女にはまとめあげる義務があった。
「光に導かれし戦士たちよ! この声が聞こえているなら私のもとに集いなさい!! このまま戦い続けても無駄死にするだけです! 私たちの戦い方を思い出しなさい! 戦士として! 軍として! 我ら『人間』の力を見せつけてやりましょう!!」
≪エルフィンボウ≫で周辺の敵を討ちつつ、場を固めるヴェロニカ。
安全地帯が出来れば集まった者たちも戦力を確認し、部隊を整え、軍としての体裁を取り戻していく。火力は不足しているが、戦力として、最低限のものはある。その足りない火力はヴェロニカが受け持つことで補うよう計画を立てる。
集まった者の中にはリチャードもいて、周辺の敵の編成を調べ上げ、最適な脱出路を探し出した。
軍は、再び動き出す。
まとまった戦力が連携をとって動けば個々の負担は軽減される。
独りで戦うなら全方位に気を張らないと拙いのだが、集団で戦うなら背中を預ける戦友がいる。負担が減るというだけでなく、精神的な支えができるのだ。その力は何倍にもなる。
特に敵が密集している場所ではヴェロニカが最後の力を振り絞って≪薙ぎ払え≫を使い、これを殲滅。
軍はそのままヴラムの群を突き抜けることに成功し、約400人が生還を果たす。
こうして3万匹のヴラムの交戦は仕切り直しとなり、ダルムシュタットへ舞台を移す。
残留していた100人に軍の生き残り600人を加えた700人は、1万4千匹のヴラムと戦うことになるのであった。
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