レイナス
「俺とヴェラが結婚前提の幼馴染ってのは知ってるよな? とりあえず、その段階で考えてみてくれ。今の俺と、ヴェラは釣り合っているか?」
「実力を見ると……全然?」
「正直だな!?」
レイナスは軽い口調で話してはいるが、結構気にしていることだったらしい。
手痛い突っ込みを受けて涙目になった。
「……まぁいい。つまり、こういう事だ。『昔は釣り合いが取れていた』」
レイナスの欠点といえば、その理力許容量である。
他の戦騎に比べ、一度に保持できる理力が少なく、継戦能力に欠ける。また、光姫の送る理力に耐えるのも難しく、簡単にキャパシティオーバーになってしまう。
普通に、「才能が無い」ということだ。
「ほら。英雄の継承者として、俺も黒髪だろ? 昔は、まだ才能があったんだよ」
その後の話を要約すると、こうなる。
ヴェロニカと仲の良かったレイナスは、二人でどこかに遊びに行くことが多かった。
その日はあまり人のいないところを探検していて、拉致された。
レイナスは「人気のないところは危険」とヴェロニカを諌めたのだが、それでも強気な彼女に逆らえず、事件が起きた。
「人間への、ヴラム体組織の移植実験。そのモルモットに使われた」
当時のレイナスはまだ子供で、軽く人を殺めかねない力である光術を覚えるにはまだ早い。基礎の体術や剣術を学んでいた段階だった。
なんとかヴェロニカを逃がすことには成功したものの、自身はつかまり、実験台コース。
「結果は公表された通り。廃人コース」
レイナスはそこでニヤリと笑う。
二人は引いてしまっているが、本人にはすでに過去の話である。大したことではない。
「それをヴェラが助けてくれた。何とか人間に戻るまで約半年。当時ヴェラがおれに何をしてくれたのかは一切聞いていないけど」
そこで一回言葉を区切る。
少し間を置き、「自分が戦騎にこだわる理由」を口にした。
「結果だけ見れば、俺は「戦騎として役立たずになった」わけだ」
多少無理をしてでもレイナスは笑う。
「まあ、成績下位の理由というか原因と言うか。他でフォローして、ヴェラにも手を借りながらなんとかやってきたわけだ。その後の話はしなくてもわかるよな?」
その後については、結局引き離され、それでもギリギリのラインで首の皮一枚をつないできたという話。
シャルと出会う、直前の話だ。
「ちなみに俺が実験体にされた話は誰も知らない。公的には一切書面に残ってない話だから、調べるだけ無駄。嘘かホントか。自分の信じるままにしてくれ」
この「告白」に女性二人は声も無い。
「俺としては意地みたいなモンだよ。『ヴェラの手を借りなくても一人でやれる」「だから自分の生きたいように生きてくれ」「贖罪と恋愛感情は混ぜるな危険」ってな」
「フヒヒ」と意地の悪い子供のように笑うレイナス。
理由を聞いたその段階で、シャルは正しく目の前にいる男が「自分の同類」なのだと認識した。
「ラストバトルの前だ。マナー違反で俺も名乗ろう。レイナス=ウィシュフォード。しがない貴族の末席に名を連ねるものだ。爵位とかは無い」
余談ではあるが、「黒髪=英雄の子孫」はかなりの確率で貴族である。
これは貴族が英雄の血を取り入れることに躍起になった結果である。
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2014年3月21日 誤字修正
× 俺は「戦記として役立たずになった」わけだ →
○ 俺は「戦騎として役立たずになった」わけだ




