血戦(真)直前
急遽、ダルムシュタットへの転進を余儀なくされた人類たちの軍。
荷物は少なく、速度優先での行軍に慣れつつあるため、その行軍速度はいつになく速い。いや、軍そのものに焦りが見えていることもあるだろう。普段ならば即交戦になっても対応可能な余力を残しつつ移動するのに、今回はペース配分を無視した、疲れの残る移動を続けていく。
結果、その努力は実り、転進から4日目。
ついに、ヴラム30000匹の群に追いつく。
…………戦力を半減させた状態で。
「敵の移動を考慮して、体を休めるのに使える時間は3時間です」
この言葉に、レイナスたち現場で戦う戦騎や光姫は苦い顔をした。
焦りと強迫観念。
無理な行軍。
それらが、戦士たちから戦う力を奪っていた。
光術を使えば確かに早く移動できる。
――肉体への疲労も増加するが。
移動時間を増やせば、通常の5割増しで進軍できる。
――疲労を回復する時間を失うが。
はっきり言えば、コンディションは最悪。
1日休みを入れ、その後戦うのが常道だろう。
しかし、ここで戦わねばダルムシュタットが再び落ち、そのままアイレンにまで魔の手が伸びるだろう。
ダルムシュタットには補給物資の管理のため、少数だが戦力が存在する。
もし落ちれば、軍は食料を含む軍事物資の大半を失い、少数とは言え戦力を損なうことになる。
疲労を無視し、状況だけ見てベストなのは、ダルムシュタットにヴラムが取りついた隙を見て攻撃すること。
そのための猶予が3時間。
こちらの移動速度と相手の移動速度、それらを考えた結果だ。
誰もがこの状況を「仕方のないこと」と分かっている。
しかしだ。戦える状態でないのも、また事実なのだ。
作戦としては、ダルムシュタットに敵が取りつく直前で後方より強襲。
全軍一塊となって、速度を優先し駆け抜ける。
あとは街に入り、通常の防衛戦を展開。状況にもよるが、アイレンにまで引いて体を休めつつ、そっちで決戦と言うのがベターな案らしい。
下水道を使う案も考えられたが、敵と交戦せずに街へ入るよりも、後方を突いた方がより効果的という意見が主になった。
「洒落になってないな」
「……」
「ここで勝てば、終わりです!」
レイナスたち3人は、体を休めるついでに背中を向け合い、肩を当てながら寄り添う。
「じゃあ、少し景気づけと行くか。『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』」
「誰と結婚するんですか先輩!? それに、それは死亡フラグです!!」
「……」
レイナスとリーゼが分かりやすいボケと突っ込みをするが、シャルは一人、黙ったままだ。
二人は空気の重いシャルのテンションを引き上げようとするが、うまくいかない現状に頭を悩ませる。
「なぁ、シャル。不安か?」
「……」
「そんなの、みんな一緒だ。みんな、不安なんだよ」
「……」
「こんどこそ、とっておきの話をしよう。俺が、戦う理由だ」
読んでいただきありがとうございます。
ここ最近、短くてすみません。
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