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血戦、初戦、囮

 戦いが始まれば、終始優勢。

 各地の戦いは常に勝利の報告が上がり、『(ゲート)』の破壊報告さえ上がった。

 わずか、1日の出来事である。



「やられたっ!!」


 ドンッ!! という、机を殴る鈍い音が会議室に響き渡る。

 普通なら、その日の勝利に浮かれる場面である。

 だが。


「敵本隊は他の都市へ離脱……!! 新種の情報は一切手に入らず、潰したのは僅か2000匹の雑魚のみ!!」


 そう。

 ブライザッハは、囮に使われたのだ。


 偵察部隊が調べた時に、都市内部にいたヴラムの数は約18000匹。

 交戦どころか目視すらしなかったが、新種も3種類確認された。ダルムシュタット同様、下水路を使って調べたからである。

 偵察部隊が引き上げてから攻め入るまでの時間的誤差は6日。たったそれだけの間に、最低限の足止め(イケニエ)を残し。敵主力は他の都市に合流した。ダルムシュタットが狙われていないと考えるのは、軍の進路から一切、敵勢力が検知できなかったからである。

 最短であるがゆえにこちらの行軍ルートを予測され、一本とられた形である。


「新種を含む最低でも16000匹のヴラムが! 他の都市のヴラムと合流する! こちらの対処能力を大きく超えかねないぞ、これは!!」


 今回、敵がどのような手段をとっているのかわからないが、『門』の破壊すら許したことから、南北どちらかの都市で徹底抗戦を行い、最悪自滅覚悟の泥沼を望んでいるだろう。

 かつての英雄が言うには「『門』は簡単に設置できる物じゃないし、一回壊せば当分大丈夫」らしい。

 そんな『門』の破壊が成ったというのは、相手が相応の覚悟を決めたということであり、最悪、勝利でなくこちらの破滅を望みかねないということ。嫌な考えだが、アイレンより東に向かい、民間人を殺すことに専念するなら、その望みは叶うだろう。なにせ、生産者のいない国など、どこにも存在しないのだから。


 つまり、現状は急ぎダルムシュタットに戻り防備を整え、そこですべての敵を迎撃しなければならないのだ。

 負けたらその時点ですべてが終わる。

 敵の目的が時間稼ぎと言うなら、この上なく成功したということだろう。


 防衛対象さえなくなれば戦力の一極集中もできるし、今後は手持ちの戦力でやりくりすればいい。

 『(ゲート)』も命よりは価値が低い。

 割り切られてしまえば、これほど的確な決断も無いと言える。



「ですが、『門』の破壊は成りました。次の大戦で勝利すれば、我らの完全勝利です」


 苛立ち、行き場のない怒り。それが充満する中に、冷静怜悧な声が響いた。

 軍の最高幹部である女傑だ。


「敵の増援は今後無いと思って大丈夫でしょう。今いる敵を滅ぼせばすべて終わる。何か問題がありますか?」

「しかし! 現有戦力では不安が残ります!」


 宥めるように、諭すように。

 落ち着いた声音も苛立ちの乗った不安に遮られる。


「喚いても現状は変わりません」

「っ!」


 最高幹部たる老女の指摘が、現実である。

 ここでどんなふうに騒ごうと、自軍が増えるわけでもなければ、敵が減るわけでもない。

 敵を追撃するにしても、賭けに出て外せば後が無い。

 戻って迎撃。それしか選択肢が無いのも確かだ。


「急ぎ全軍に伝達を。今すぐダルムシュタットに戻ります!」



 人類の苦境は、これ以上時間を使えないところまで来ている。

 あとは、この決断が間に合うかどうかだけである。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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