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作戦会議、二人の溝

 急ぎ向かった方がいいのだが、まずは少女の回復を待つレイナス達。

 来た方角は分かるのだが、彼女の案内なしで向かえば時間のロスとなりかねない。ならば回復の時間を待つ方が最速になるという判断だ。


 5分ほどの短い休憩ではあるが、少女も光姫の一人。≪光術≫により万全ではないがしばらくは走ることができるところまで回復する。先ほどまではどこに味方がいるか分かっていなかったので休むことなく走り続けたのだが、今は戻るべき場所と頼るべき仲間を知っている。冷静さを取り戻し、効率を考え動くことができる。

 なお、休憩時間中にレイナスと一緒にいたクロスたちのペアは追加の救援を呼びに本陣に向かっている。大雑把な位置と敵の規模を聞いたのだが、ヴラムが30匹、うち≪闇術(マグス)≫を使う上位個体が3匹ほど確認されている。逃げる前に10匹は倒せたが闇術を使える個体は倒しておらず、状況はかなり悪い。


「7年生のレイナスとシャルロッテだ。成績は二人ともC-だが、持久力に難があってのものだ。瞬間的な戦闘能力はBとも引けを取らない。メインは近接戦闘になる」

「6年生のリーゼです。成績はBで、火砲支援がメインです」


 簡単に自己紹介を済ませ、互いの役割を確認する。

 リーゼのスタイルは遠距離攻撃がメインで、レイナス達は近接戦闘がメインとなる。この場合、相性はいいようで少し問題がある。

 後方支援のうち、火砲支援は前衛との連携が肝になる。下手な火砲支援は味方殺し(フレンドリィファイヤ)となって、無い方がマシというのが定説だ。


 ある程度回復したが完調ではないリーゼに合わせて3人は走る。距離にして森の中を10㎞。合流まで10分といったところか。平均時速が60㎞も出ているが、それが≪光術≫の恩恵だ。


「私は今回 先制攻撃をした後少し高いところから敵を攻撃。合流を防ぐようにして分断に徹します。お二方は突貫、仲間3人を連れて早々に撤退。あとは元の位置に向けて撤退、本陣と合流というのが私のプランです」


 リーゼにしてみれば近接系2人という話なので、頭の中で組み立てられそうな作戦はそれだった。

 しかし、不安要素はある。


「包囲しているのであれば壁は薄い。突貫は悪い選択肢ではない。が、中の連中が逃げ出せない要因、≪闇術≫使いのヴラム(上位個体)をどうするかが肝心なんだが? そこが抜けている以上、同意するわけにはいかない」


 レイナスの声音は冷淡だ。自然と、自分の意見を見下されたという意識でリーゼが食って掛かる。


「だったら! 他にやりようはあるんですか!? あなたたちは持久戦ができない以上、どうやって動くのが最善だっていうんですか!」


 レイナスの意見が正論だという事は、リーゼにもわかっている。しかし、他に手がないのも事実だ。

 仮にこの三人で囮などをして敵を誘い込むとしよう。

 中にいる連中には本体の来る方向、つまり来た道へ逃げてもらいたいので、逆に移動し、陣取る必要がある。

 次に、上手く囮になれた場合、敵が中の連中を無視してこちらを包囲しようとすると予想される。

 この場合、最低でも自分たちが相手を突破するだけの決定力がないと、二次遭難に等しい、「助けに行ったはずが助けてもらう側になる」という本末転倒な状態に陥る。

 当たり前だが、レイナス達二人が加わったところで戦力差は覆せない。殲滅は全滅にしかならないという事だ。


「アホか。俺たちのするべきことは時間稼ぎ。救出の手伝いは援軍に押し付けるだけでいいだろ」

「ですが! それで間に合わないなら――」

「本職が支援についていただろ。その人達は?」

「……」

「撒いて勝手をしたわけだ。上の連中に成果を見せて、結果で黙らせればいいと」


 6年生は初めての実戦である。多少腕がいい(成績がBだ)からと言って、護衛や指導の戦騎が付かないわけがない。当然のように、リーゼたちにも戦騎と光姫のペアが一組ついていた。成績アップのため、実戦経験をより多く積むために彼らから逃げて勝手をやったりする自意識過剰な学生は毎年一定数存在する。ただ、それでも本当に逃げ切れるはずがないのだ。おそらく今も遠くから彼らの支援をしていることをレイナスは知っていた。

 言われてはいないがレイナス達にも監視というか、成績評価のための本職が付いているハズなのだ。それをアテにするつもりはないが、いざというときは助けてもらえるという安心感がある。

 知っているものと知らない者の間にある余裕の差が、この二人の間には存在した。


 どうでもいいが、理力節約のためにシャルロッテはレイナスに抱きかかえられているのに必死なので会話には参加できない。



「では、何をするつもりですか?」

「中の連中への圧力を減らす。突破できると思われない程度に敵をはがして各個撃破。時間をかけてでも安全確実に敵を減らす。それだけだよ」

「ですがそれでは!」

「半分は自業自得。本職が一組増えるだけで生存率も生存可能時間も大幅に増える。後は、まー、できることを無理のない範囲でやるだけさ。経験値の低い俺達でもできることを、な」


 最初こそ、その本職がいても全滅しかかるような緊急事態かと思っていたが、なんてこともない、それなりに危険で身入りの期待できる案件と分かってからのレイナスは少し冷たくリーゼをあしらっている。

 それが分かるからリーゼもレイナスに反発するように喋っているし、二人の意見が一致する兆しはない。

 原因はレイナスの持つ劣等感が半分、リーゼの気位の高さが半分。

 年上ではあるがまだ16歳のレイナスにそういった意味での余裕はない。反射的に同士・敵を区別してしまう程度に劣等感がある。

 逆にリーゼはそれなりに優秀だがさらに上がいる事もあり貪欲に上を狙っている。そんなリーゼに年上とはいえ自分より下の成績の人間が見下すような物言いをすれば、上手く目上への態度をとることもできない。たとえそれが自分の仲間を助けようとする人であってもだ。



 二人は短時間の間に強烈な溝を作っていった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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