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ダルムシュタット奪還戦(裏)

「おー、あいつら、全滅したぞ?」

「本当か?」


 陥落都市の一つ、西の果て、ブライザッハ。

 そこでヴラーナの二人は“仕事”をしていた。

 黙々と作業していた二人であるが、軽薄そうな笑みを浮かべた男が、真面目そうな男に声をかけた。

 リンクさせていた手駒(ヴラム)の全滅を感じ取ったからだ。


「ああ。前線に置いといた奴、9割は死んだな。ついでに失敗作(実験体)も」

「思ったより早いな……。あれから1月か。ラインはほぼ完成しているが、補充は2割といったところ。不味いな」


 それを聞いた真面目そうな男は眉をひそめ、難しい顔をした。

 二人は現在、急ピッチで新種のヴラムを量産しようとしていた。これが量産された暁には、勝利は間違いなしの最高傑作である。

 それが完成するまでの繋ぎなら2種類ほど生産体制に入っていたが、それでも予定していた戦力には程遠い。生産効率は極限まで高めてコストを無視すれば多少はマシになるが、その場合、多少でも敵に余力があればその段階で「詰む」ことになりかねない。

 完全に、想定外だった。


「もしかして、俺ら、負けそう?」

「うむ。本国と連絡が取れるまで、最低6年はここを維持しないといけないのだが。如何せん、戦力が足りん」


 ヴラーナの使う「(ゲート)」は常時使えるものではない。

 一定周期の中、かなりの費用をかけて、ようやく使えるものなのだ。

 この世界への門は、一度失敗している。今回も失敗しそうだというなら、ここにいる二人は見捨てられ、門は開くことなく終わるだろう。


「おー。いーねー、いーねー。超燃える。大ピンチじゃん」

「敗北は死を意味する。分かっているのか?」


 つまりは絶体絶命の大ピンチなのだが、軽薄男は楽しそうに笑っているだけだ。緊張感の欠片も無い。


「そんなもん当然だろ? リスクも無い勝負の何が楽しいよ?」

「理解できん」

「あひゃひゃ。お前でも理解できないことがあるんだなぁ」


 真面目男は、軽薄男の物言いに不快さを隠そうともせず睨み返す。

 だが、目の前の男の目には狂気などではなく、冷徹なまでの意思が感じられた。

 そのため、真面目男はため息をついて不快さを払い、平常時同様の真面目な顔で軽薄男を見据えた。


「……ふん。冷静さを失ったわけでもなさそうだな。まあいい。ひっくり返すための策を練るぞ」

「あ。俺にいいアイディアがあるんだけど、聞くか?」

「聞こう」


……

…………


 軽薄男の考えは分かりやすく、誰もが思いつくことだった。

 が、作戦に必要なヴラムはすべて現有戦力で賄え、新種も温存できる内容だった。

 ひっくり返すというには押しが足りないように見えるが、強引に勝利を掴もうとすれば相応の被害を覚悟しないといけない。堅実さは大事だった。


「貴様にしては中々の考えだ。あと30日、時間を稼ぐにはちょうどいい。戦力の補充が終わるまでの作戦ではあるが失敗は許されないことを考えれば……やはり、私が直接指揮するのが正解か。追加生産は任せるが、くれぐれも勝手な行動はするなよ」


 いくつかの懸案事項を脳内でまとめた真面目男は、作戦の上で指揮官不在は拙いと判断し、現場に出ることを決める。

 この場から離れるのは痛手ではあるが、作戦が成功すれば貴重な時間を得ることが出来るのも間違いない。多少のリスクを背負わずして得るものは無いのだ。

 残す軽薄男にくぎを刺し、準備のために行動を開始する真面目男。

 残された軽薄男はというと、いつもの薄ら笑いに変化が見られた。


 その顔に浮かんだ感情を文字にするとこうである。


「そんな忠告聞くわけねーよ」

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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