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包囲網突破

 本当なら脱出用に使う“双姫の加護”を街中で使う。

 危険な賭けであるが、出し惜しみをしてどうにかなる状況ではない。


 シャルの索敵術は自分たちの周囲を囲うように大きな集団が配置されているのがわかる。とくに後方の集団は大きく、一旦退いて大回りして迂回しようとすることが出来ない。もちろん左右にも大きな集団があるので、結果最短で逃げることが出来る正面突破が正解となる。

 あと、集団と集団の隙間を狙うのは基本的に「無謀」だ。恐らく隙間にはムカデトカゲが配置されており、足止めを食らったところで左右から挟撃されるのが目に見えている。


 無茶で無謀で合理的な判断なのだ。正面突破は。





「敵総数1200、縦列だけで見れば、100匹ってところ……かな?」


 シャルの索敵術、広域索敵により正面にいる敵の全貌を明らかにする。

 敵は建物を避けて大通りのみに配置されている。横に12匹が並び、綺麗に隊列を組んでいた。大通りそのものは15匹まで並べるのだが、3匹ごとに少し隙間を開けているので12匹並ぶにとどまっている。縦列を見ても10匹ごとに区切られているので、これは部隊ごとの運用を考え、動きやすいようにしているのだろう。

 完全に、軍隊的な考えが目の前のヴラムにはあった。


「リーダーが混じってるだろうね、それも複数」

「でも、やることは変えない……ですよね?」

「当然」


 だからといって、止まることはできない。

 街へと降り立った時から覚悟は決まっている。

 レイナスは二人から理力の供給を受け、“双姫の加護”を発動させた。


「(威力が高い? でも、受け取っている理力は少な目……。いや、シャルの理力が少なくて、そっちに理力が流れてる)」


 “双姫の加護”を発動させたレイナスであるが、すぐに違和感を感じた。

 訓練中より能力の伸びが大きいのだ。

 レイナスはなぜかと自分の中を流れる理力に意識を向けた。そうすると、リーゼの理力がシャル側へ流れてるのが分かった。

 通常、光姫同士で理力のやり取りなどしない。意味がないからだ。光姫は自分の保有する理力を使い、戦う。その常識からいえば、シャルがリーゼと契約して理力のやり取りをする必要はないし、現にそんなことはしていない(・・・・・)


 レイナスには深く考える間もなく、思考はそこで途切れた。

 この現象は、シャルの理力が枯渇寸前になっているから起きた現象である。もともと理力のすくないシャルであるが、それが枯渇寸前ともなれば戦騎とほぼ変わらない(・・・・・・・・・・)理力量しかないことになる。そしてリーゼから理力を受け取ったレイナスは、一時的にシャルより理力量が多くなる。契約は、「理力量のほうが多いほうから少ないほうに理力が移動する」ために一瞬シャルに移動し、レイナスの中で消費されるそばから理力がレイナス側に戻る。

 普段の訓練では、シャルとリーゼの理力が共鳴するだけで理力の質が変質・威力が強化されるだけなのだが、リーゼ側の理力が大きく、かなりの量が無駄になっている。その無駄になっている理力が一旦シャルにストックされることで無駄がなくなり、完全に使い切れるようになっている。その結果、普段より力が強くなっているように感じるのだ。

 また、シャルを経由した理力は質の変質がより大きくなっている。小さいことだが、これもレイナスの中では普段と違う感覚を生む原因となっている。


 “双姫の加護”で強化されたレイナスは、とうとう大通りに陣取るヴラムの群れを視界に捉えた。彼我の距離は300m程度。

 それはヴラム側も同様で、闇術による弾幕を展開しだした。


「≪風車楯≫!!」


 レイナスは剣を目の前にかざすと、手の中で回転させだした。回転は次第に速くなり、光術による強化でわずかに光っていた刃が輝く円盤となった。

 剣の刃は刃渡り70㎝程度。できた円盤は柄の部分を含めて160㎝といったところで、レイナスがわずかに体を傾ければ十分に体全体を隠せるサイズである。


 ≪風車楯≫にヴラムの闇術が着弾する。

 闇術を受けるたびに≪風車楯≫から輝きが失われていく。

 そのたびに、レイナスは再び理力を≪風車楯≫に注ぎ込む。


 一見すると一進一退の攻防みたいに見えるが、押されているのはレイナスである。

 負けているのは、消耗戦を戦い抜く理力と魔力の差。

 たった3人――実質一人――と1200匹のヴラムの勝負では、比べるべくもない。ただでさえ消耗を強いられた後の戦いだ。このままならば押し切られ、ぼろ屑にされるのは目に見えている。



 だが、勝負がつく前にレイナスたちはヴラムとの距離を詰め切った。

 レイナスは≪風車楯≫を解除して叫ぶ。


「リーゼ!!」

「≪薙ぎ払え≫!!」


 叫ぶと同時に少し身をかがめるレイナス。

 後ろを往くリーゼはジャンプし、光術最大の一撃を放つ。


 通常は横なぎで使う≪薙ぎ払え≫であるが、ここは縦に、ヴラムの中に道を作るように術を使う。

 ヴェロニカと違い、本来一人では使えない光術を無理やり使うために、威力も範囲も本来のそれよりかなり低い。たった2~300匹程度にある程度以上の被害を与えたが、ほとんどは生き残っている。


「上出来!」


 それでも。

 か細い道ができたのであればそこをレイナスたちは行く。

 ダメージを受け、態勢を崩したりダメージに呻くことしかできないヴラムにそれを阻むことはできない。無事だったヴラムも、まだ立っているダメージを負ったヴラムが遮蔽物になってしまい、闇術を使えない。統制がとれている分、味方殺し(フレンドリィファイア)を恐れて動けずにいる。


 そうしてレイナスらは、最後の包囲網を突破し、東門にたどり着くのだった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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