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死地に自ら赴く

「数がっ! 多い!!」

「≪フラッシュボム≫!! すみません、2匹抜けました!!」

「了解!!」


 レイナスたちは大量のヴラムに囲まれてしまった。

 最初は外壁の上、街側ギリギリを全力で走りっていた。走りやすかったこともあり、時速100㎞近くまで加速できた。

 が、すぐにヴラムは外壁の上に上ってきた。階段(・・)を使って。

 外壁には当たり前だが、下から上まで上る階段がある。壁の内側に設置されたそれを駆け上り、先回りをするヴラムが続出。通常個体が肉壁になり上位個体闇術による射撃でレイナスたちの行く手を阻んだ。

 レイナスたちでも弾幕を張られ、肉壁で動きを制限されては逃げる他ない。回避をする隙間もない壁の上から街中に降り立ち、今度は建物を遮蔽として使いながら走り抜ける。もともとの予定では、こうなったらさっさとダルムシュタットから撤収するのだが、あえてレイナスは街に突っ込んだ。外壁をそのまま走れば合計20㎞だったが、街中を直線的に移動すればショートカットになる。遮蔽物が多ければ先頭を避けることもできるという判断だ。

 しかしそれもヴラムに対応される。移動方向を予測され、待ち伏せを仕掛けてきた。ご丁寧に、あの隠密個体(ムカデトカゲ)を使っての不意打ちだ。レイナスが専用の索敵術を用意していたので致命的な傷は負わないものの、ギリギリまでいる場所がわからないムカデトカゲの攻撃は確実にダメージを蓄積していく。


 ダメージを負い続ければ、東門にたどり着くことなく、死ぬ。

 光術による回復もできるが、それとて無制限に使えるものではない。ましてや高速移動のためにリソースを費やすレイナスにできるはずもない。

 レイナスの持つ切り札。“限界解放(リミットリリース)”と“双姫の加護”。この二つも使えない。消耗が激しく、10分も持たないのだ。長く持つ“双姫の加護”ですら、持って5分。東門を抜けてから使用する手筈になっているため、ここで使えばその時点で「詰み」だ。


 要するに。

 レイナスたち3人は八方手詰まり。

 時間をかけて戦い門を越えてから死ぬか、この場で死ぬかの2択のようなものだった。



「さすがに数が多いな!」

「大討伐以上の戦闘時間ですよね!」

「……」


 レイナスとリーゼは軽口をたたき合う。現状は把握できているし、有効な手が「自分たちには」無いことを理解している。

 つまりは、外にいる仲間を頼みにしているのだ。だから軽口も口を突いて出るし、心に余裕がある。

 ただ、3人のうち、シャルだけは無言で難しい顔をしている。時折移動ルートの指示を出すだけだ。

 シャルは戦闘の邪魔にならないように自分で走っている。攻撃には参加せず、広域索敵でおおよその進軍ルートを決め、先導している。

 正直なところ、それだけの仕事でも最後まで理力が持たないというのがレイナスとリーゼの見解だ。

 ちなみにレイナスのほうはカツカツではあるが、一応最後まで持つはずだと考えてられている。索敵術に加え攻防でも消費を続けているが、大技の類を一切使わなければ何とかなる。省エネを追求した戦闘スタイルのレイナスだからこそ、何とかなるといったところだ。


「シャル、仲間を信じれば何とかなるさ。ピンチだけど、俺達、まだ生きてる」

「うん、そうなんだけど…………」

「んー、ここはレイナス先輩が何かご褒美でも約束するとか? ほら、アイレンに戻ってからデートとか」

「ははは、それもいいかもな」


 どこか陰のあるシャルをレイナスが励まそうとする。リーゼもそれに乗っかって、冗談程度に軽く合わせる。だが、シャルには空元気すらなかった。

 シャルは自分が足手まといと分かっている。ただしそんな自分でも、いないと二人の負担が増える。それを分かっているから、辛い。自責の念と軽い後悔がシャルを苛む。もともと、この囮にシャルは反対だったのだ。打ち合わせの時、レイナスの独断とまではいかないが強い要望を撥ね退けることが出来なかった為にこうしてここにいる。それが場違いに感じられた。


「レイナス、強気に賭ける? それとも堅実に行く?」

「……強気で。敵中突破?」

「うん」


 南門まであと5㎞を残すところで。敵の数が一気に減った。その隙を突き、うまく戦闘を回避しながら突き進む。だが、シャルには分かっていた。

 数が少なくなったのは、一か所に集めているからだ。東門を目指していることは敵のリーダー、おそらく昔戦った小型犬タイプのヴラムに筒抜けだろう。そいつが指揮をしていて、こちらの行動を潰しにかかっているのだ。戦力の一極集中は戦術の基本。分散して各個撃破される愚を回避するように動いている――ではなく、わざと隙を作って思考を誘導、罠にはめるつもりなのだ。


「ここで“双姫の加護”を使う。シャルは俺にしがみついていてくれ。リーゼは殿を頼む」

「「はい!」」


 ではどう対処するか。

 敵が集まっている部分に罠は無いだろうから、そこを突破する。危険度が高いように見えるが、何があるかわからない罠より、今まで見たことのある敵に対処するほうが確実だ。


 例えそれが、その後の“死”を確定するとしても。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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