光姫候補生
レイナスのパートナー、光姫の少女、シャルロッテ=グル=エルグライア。
肩より少し下まで伸ばしたゆるふわの金髪をリボンでまとめ、碧眼に涙をためている。顔を見ればわりと美少女、スタイルも悪くないのだが、どこか残念な雰囲気を纏っている。今は成績不良のギリギリ生徒だ。
戦騎と違い光姫はDを取った時、留年する事になる。もちろん、パートナーとは別れなければいけない。しかし、留年する光姫に対する風当たりは強い。誰ともペアになれず、強制的に組まされ、疎まれるのが現実だ。なにせ、2回留年で光姫候補生から外され、戦場以外で働く事になるからだ。例えば医療関係で治療士として働く事になるのだが、それはそれで立派な仕事なのだが、留年2回で“部署流し”された元光姫などは元々そこを希望してきた者より扱いが悪い。そんな事情もあって成績にはみな一喜一憂するのだ。
「うっうっうっうっ、もう余裕が無いのにぃ~~」
このシャルロッテ嬢、すでに一回留年していて、すでにリーチ状態だったりする。
本人の努力が足りない訳ではなく、才能が足りないのだ。
光姫の仕事の中で最も重要な役割は戦騎への≪理力≫供給。戦時下に置いて複数の戦騎へ理力を供給するという事は、保有する最大理力が高い方が優秀という事になる。そして彼女の最大理力量評価は、D-。つまり、最低。ぶっちぎりの不合格者である。他の成績にA+とSがあるので生き残っているが、正直、いつ学院を去る事になっても不思議のないレベルであった。
シャルロッテは王家の血を引く娘だ。それと同時に、黒髪の英雄のひ孫でもある。母親が英雄の孫娘で、当然のように黒髪を望まれて生まれてきた。
しかし、産まれてきた彼女は父親と同じ見事な金髪。最低ラインの理力を持ってはいたが、周囲を失望させ、期待や愛情などと縁のない生活をしてきた。しばらくして生まれた第2子が黒髪の男子だった事もあり、親とは全く顔を合わせる事が無く、見捨てられて生きてきた。
さすがに下働きの人間はそんな彼女を不憫に思い優しく接してきたが、それでも親の愛情に飢えるのは当然の帰結と言えた。
光姫として立派になれば振り向いてもらえると信じ、ただひたすらに修練を重ねてきた。学院でも一番努力を重ねているのは彼女だろう。
だが努力の甲斐なく、彼女の弱点である最大理力量は未だに増える気配が無い。
このままでは、という焦りが燻る。
その焦りを胸に残したまま、シャルロッテは一人で訓練場に向かう。
たった一人で。
「≪ライトニング≫!!」
シャルロッテが呪文と共に杖を振ると、杖の先端より閃光が迸る。
光術の中でも基礎の攻撃術、≪ライトニング≫。レーザーのような光術で、単体に少しダメージを与えることしかできない。基本的には牽制用となっている。
しかし、彼女のそれは他の者の≪ライトニング≫とは威力が違う。的にした石ころは砕け散る事無く消し飛んでいる。地面に直接石を置いたので、余波で地面をえぐり飛ばしている事から、その威力の高さがうかがい知れる。的を消し飛ばしてなお威力が減衰していないのだ。もちろん、≪理力≫の消費は他の光姫とさほど変わらない。
理力量D-、光術制御A、身体強化B-、支援光術A+、攻撃光術S、防御光術B-、総合成績C-。
これがシャルロッテの成績だ。
他が軒並み好成績にもかかわらず総合成績が低いというのは、理力量の重要性、ひいては数の力が侮れないという事。光姫の試験の中には戦騎と従騎を使った試験もあり、数を揃えられるとまず勝てないのだ。彼女のパートナーであるレイナスは一騎当千の基礎能力を持っているが、光術を上手く扱えない為に、実戦形式での成績はかなり低い。光術無しなら学内最強とまで言われているにもかかわらず、だ。
現代戦がいかに数と光術に影響されるのかが分かってしまう話である。
シャルロッテは訓練場の端で光術を繰り返し使う。
≪理力≫がすぐに枯渇するが、今までの経験から少ない休憩である程度は回復するようになっている。
回復したらまた光術を使う。≪理力≫が尽きたら、休む。それだけを、淡々と繰り返す。体になじませ反射的に使えるようになってなお、使う事が呼吸をするかのようなレベルになることを目指して。
今の自分で足りないなら、もっと強くなるしかない。ただ、それだけだった。
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