作戦会議
秘密というのは、知る者が少ないほど良い。
ただし、知る者を増やし、「公然の秘密」にする手段も捨てがたい。
学生たちという自衛能力を持つものは、一般市民に比べてパニックになりにくい。よって戦意を維持し、戦い抜く気概を見せたのは彼らにとって僥倖だった。もしも逃げる算段をするようであればヴェロニカが彼らを拘束する手筈になっていたからだ。
ありえない「もしも」をしなくてすんだヴェロニカは心の中で安堵し、主導したレイナスに惚れ直す。ささいな事ではあるが、愛があれば小さなことでも大きく評価されるのだ。
レイナスたちが加わったとはいえ、1日に狩ることができるヴラムというのは、実は増やせない。
1日で2000近く減らす計画を立て、ヴラムを細かく何度も誘導しようとしたのだが、1000を超える被害を出した後はまとめて動くようになり、今アイレンから20㎞のところに陣取っているのもそれが原因だという。一度西のほうへ、アイレンから引き離すように誘導しようとしたがそれもダメで、その場合も東へ移動したらしい。
レイナスたちもいろいろ考えてみたが、軍上層部をはじめ、すでに取り込まれ参加していた8年生などが出したアイディアをなぞるだけに終わる。
「……敵に、補充要員っているのかな?」
それを呟いたのは、7年生のクラスメイトの一人。従騎の少年だ。
「いや、数を削っても、それ以上に補充されたら減らないだろうなって思ったんだけど……」
彼が気にしたのは、今ヴラムがやっているのが「籠城戦」ではないかという杞憂。
そう、5万を50日かければ全滅させられるという考えも、2万まで減らせば勝機があるという期待も、ヴラムの軍団が増えないという前提に基づいている。
よって、補充されていたら、その規模によってはただの無駄足、最悪は敵の時間稼ぎに付き合っただけということになりかねない。援軍というか、新種による敵精鋭部隊が作られている可能性を、上層部は危惧していたのだ。
「5万の軍は動かない。1日に削れる量は増やせない。こちらの戦力には、余裕がある。たぶん」
「なあレイナス。もしかして……」
「ああ、少数による敵の本拠地襲撃。ヴェロニカも引き抜いて、陥落都市まで足を運んでみたい」
「無茶言うなぁ!!」
「いやいや、敵本陣を落とすっていうポーズをとれば、敵が引っ掛かって戻っていくかなーって?」
「疑問符付やないか! 自分でも言い切れんこと、勝手言うなぁ!!」
先輩たちの考え付いた最悪の予想を踏まえ、ヴラム生産拠点である陥落都市を偵察すべきだと主張するレイナス。一応、理はある。
「私? ええ、確かにダルムシュタットまで行くなら、強い私がいないと困るはずね。ただ、上を納得させるかどうかは未知数ですわ」
「やっぱり難しいか」
「当り前ですわ。何かあった時に、私がいるのといないのとでは殲滅力、生存力が大きく変わりますもの。上層部は私に甘いですが、そこまで許してはくれないでしょうね。一応、掛け合ってはみますわ」
一応だが、ヴラムを率いるヴラーナを探し出すのも目的の一つだ。大義名分を全面に押し出してはいる。
それに膠着状態で絶望を振り払えない現状であれば、どこかで博打に出るしかないという現実もある。レイナスたちの命を使い「次」に繋げるためのヴェロニカであれば、実力者以外の交代要員など考えられない。上層部も納得してくれるのでは?という期待もある。
また、敵はこちらに全兵力の半分以上を投入したのではないか、その分偵察はやりやすくなっていうのでは?と考えるンが人の常
いくつかの予測と推論はすべてまとめて提出することになった。
10日ほどして。
学生たちの熱意ある説得に学院側も折れ、ヴェロニカは最後まで同行できないが、威力偵察だけは許可された。
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