ヴェロニカ
ヴェロニカは基本、一人で戦う。
実力があるというのが一つ。
もう一つは、レイナスへの義理立てのようなものであった。
実力があるからワガママも通せるし、実際にやっていくことができた。
他の光姫数人分の働きができたので、学生の身分でありながらすでに現役光姫の中でも上位に位置するところまで上り詰めた。
多くの人間の賞賛と羨望を一身に集める光姫。それがヴェロニカだ。
しかし彼女の心が満たされることはない。
彼女の心は、レイナスにのみ向いていた――
森の中、切り株に座る少女が一人。
休憩中のヴェロニカだ。
「まったく。らしくありませんわね」
先ほど、シャルとした会話を思い出してヴェロニカはつぶやく。
ヴェロニカはアイレンの周辺を単独で巡回している。索敵範囲は約3㎞。その広範囲索敵をもってしても1日に5~6匹しか見つからないが、ヴラムを狩り取り、使える素材として町に持ち込む。その繰り返しである。
無為に時間を使っているわけではなく、こういった事もちゃんと訓練になる。長時間の持続的光術使用や部分的な身体強化など。“ついで”にできることは意外と多い。
ただ、そうして繰り返される日々は、一人でできるからと孤独に励む時間は、事務的に、機械的に、無感情に過ぎていく。
だからシャルに気が付き、声をかけたのはただの気まぐれだ。
悩んでいたシャルに発破をかけ、自信を持てるように促したのも狙ってやったことではない。
少なくとも、本人はそう考えている。
ヴェロニカは夕飯にと用意した白パンを光術で軽く温め、同じく温めたスープに浸して食べる。
どちらもそれなりのお値段ではあるが、彼女ほどの高級取りであれば問題ない額だ。
軽めの夕食を終えると目を閉じて軽く回復を促す。もちろん周辺の警戒は怠らない。
すると、目を閉じて視覚以外の感覚が鋭くなったせいか、町からかなり離れたほうにヴラムの気配を感じた。
「お仕事、ですわね」
自身の理力残量が十分であることを確認すると、ヴェロニカはヴラムに向けて駆け出した。
見つけたヴラムは、すべて上位個体だった。
数は20匹。ここ最近で一番の群れである。
「距離は十分、まだ見つかっていない。周辺に巻き込みそうな人もいない。先制攻撃で半分以上削れますね」
ヴェロニカの有効射程はおおよそ1㎞。ヴラムの足を考えれば、10数回は一方的に攻撃できる。
遠距離攻撃をするヴラムがいないわけではないが、それでも射程は200mが限界のようだ。ヴェロニカをはじめとした行為には全く及ばない。これはそのように光術を発展させてきた先人の努力あってこそだが。
「≪エルフィンボウ≫、発射」
弓に矢をつがえるイメージで光術の矢を作る。それを同時数本一度に放ち、ヴラムを射殺す。都合5発の≪エルフィンボウ≫は自動追尾の補助で7匹のヴラムの脳天を射抜いた。矢より殺害数が多いのは、1本で複数射殺すことに成功したからだ。
すぐに襲撃者に気が付いたヴラムは獲物めがけて走り出す。
ヴェロニカは近寄られる前に数を削ろうと次弾を撃つが、ゆっくり力を扱えた先ほどと違い、急ぎ撃ったそれは1回につき2本が上限。それが最速ということで、ヴラムが近寄るまでに4回8本の矢を撃てた。
20匹いたヴラムもすでに5匹。5匹しか、ではなく5匹も、である。
数というのはなかなか侮れない。ヴェロニカにとって基本格下でしかない上位個体ではあるが、死角を突かれては不覚を取る恐れがある。索敵術によりフォローされていようと、油断は禁物なのだ。
ヴェロニカは身体強化、特に移動速度を上昇させて距離をとる。そして、後退しながらも≪エルフィンボウ≫を撃ち続ける。移動しながらなので先ほどよりも条件は悪くなり、一度に1本しか撃てない。
それでも2分移動し3㎞動いた時には敵を殲滅し終えていた。
「素材の回収……面倒ですね」
何㎞も移動しながら20匹もヴラムを殺したわけだが、おかげさまでその死体は森に点在することになった。最初のほうに殺したヴラムの死体など、もう探すのが面倒でしかない。
しょうがないので一回で持てる範囲だけ持ち帰ろうと決めて、3匹分のヴラムを回収して街に持ち込むヴェロニカだった。
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