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仲間といるということ

 シャルにとって、努力というのは日常である。

 理力が足りないという、根本的な問題は解決する兆しを見せない。だから、他を強化して生き残るしかない。

 人の10分の1しか理力がないなら、消費を10分の1にする、それが難しければ同じ消費で10倍の威力を出せばいい――その無謀な考えを実践し、実行しようとしているのがシャルという少女だ。


 もちろん、努力だけでそこまで行くのは困難を通り越して不可能と言っていい。

 他の光姫の半分近くまで消費を減らし、他の光姫の3倍4倍まで光術の威力を高める。目標には届かずとも、普通に評価して異常と言えるところまで彼女は登りつめている。理力さえあれば、ヴェロニカと同等以上の天才と言えるレベル。学院の評価基準は横に置き、肩を並べて戦う者たちからは、シャルは高い評価を得ている。

 他の光姫と同じぐらい理力があったのであればここまでの努力を重ねなかったと考えれば、何が彼女にとって最善な状況だったかわからないところだ。


 劣等生という評価と、家族に認めてもらえない現実。

 この二つがシャルの心を縛る鎖だった。



 シャルが訓練を終えて帰途についた。

 時刻は夕方。郊外で訓練を続けるには難しい時間だ。なにより夕飯を抜くというのは問題があるので、あまり遅くならないように寮へ戻る。

 街中は夕飯時特有の温かい雰囲気であり、時折、民家の中から家族の笑い声が聞こえる。それを聞くたびにシャルは多少の羨ましさと、家族とうまくいかない我が身の不甲斐無さを感じる。


 何度聞いても慣れないそれは、憧れであり手が届かないところにある。

 いつかは自分も、と、たまに想像するが、知らない世界をうまく想像することができずに終わる。

 途中で先ほどのヴェロニカを思い出してしまい、ごちゃごちゃした考えのまま、自室のドアを開けた。



「お、シャルおかえり」

「先輩、お帰りなさい」


 自分の部屋のドア分けると、なぜかレイナスがそこにいた。

 完全に混乱する頭ではあるが、同室のリーゼを見ることで少し持ち直す。ルームメイト(リーゼ)が招いたことに気が付いたのだ。


「シャル、お前の意見も聞きたいんだけど、今大丈夫か?」

「う、うん」

「ほら、この間の大討伐で新種のヴラムが出てきただろう? 新種があれだけとは限らないしさ、今から出てくるかもしれない新種を予想しておこうって話になって。リーゼと二人で考えるよりも、シャルも交えて話をしたいんだ」

「……うん、分かった」


 レイナスとリーゼは向かい合うようにテーブルを囲んでいる。

 その間に置かれたノートには、いくつかの不安点と、そこを効果的に突くためのヴラムのアイディアが書かれている。そして、そこに対抗するための方法論まで話が進んでいた。

 自分の知らないところでされていた打ち合わせと思うと、シャルの心に少し陰りが生まれる。が、それを押し殺して打ち合わせに加わった。


「――で――だから――」

「え? でも――ですよね。ですからここを――」

「ちょっと待って、それよりも――」


 シャルの昏い思いは杞憂で、レイナスとリーゼはシャルの考えを真剣に聞き、それまであまり進んでいなかったところまで思考を進める。

 二人はシャルを頼みにし、予測から予定を立て、明日からの訓練メニューを考える。

 この三人だと座学についてはシャルが一番であり、1学年スキップのリーゼは全く役に立たない。よって二人で話し合ったところでレイナスの会話にリーゼがついていけなくなるのは明白であり、シャルがいないと文字通りの意味で「話にならない」。

 そのことに気が付いたシャルは、ほんの少し機嫌を良くする。


「で、シャルには威力特化の光術を使えるようになってもらいたいんだけど」

「ええ、任せて」


 それに、チーム内では役割分担も重要だ。

 たしかにシャルの仕事をリーゼに任せるという選択肢もあり、そのほうが効率が良い場合もあるだろう。しかし、シャルがそのまま仕事を受け持つことで全体の効率が良くなることはいくらでもある。

 シャルが不安に感じていた「自分の立場」というのは今のままでも勝ち取ることができるもので、他の誰かに取って変わられないよう努力を続ければいいことに気が付く。


(一人で悩んでると、悪いほうばっかりに考えが行っちゃうよね……。もしかして、ヴェロニカさんもこんなことを考えてたのかな?)



 シャルはさっきのヴェロニカを思い出しながら、仲間と遅くまで話し合っていた。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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