表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/100

5日目 帰還組②

 5日目、昼飯時。

 全員が昼飯を食べ終え胃袋を満たし終わったところで、予想通りそいつらは来た。


 先遣隊として向かってきたのは今朝と同じく500のヴラム。

 違うところは、朝は一塊で来たのに対し、今は散開し、多方面から襲いかかってきた事だ。

 ≪薙ぎ払え≫は大きな塊に対してはとても有効だが、散開され広範囲に散らばった相手には消耗に見合った効果が得られない。そうなると、使える光術はどちらかと言うと単体向けのものにせざる得ない。


「≪サテライトキャノン≫!!」

「≪フォトンレーザー≫!!」


 光姫の光術が飛び交い、先制攻撃を仕掛ける。

 当たったヴラムは吹き飛び、活動を停止する。だが、その死体を飛び越え新しいヴラムが殺到する。

 倒しても倒してもキリが無い。そう、つまりは――


「第二波どころか第三波、第四波まで来てるぞ! くそ、数が多すぎる!!」


 敵の戦力が、無尽蔵とも思えるほどに追加されているという事。

 波状攻撃による消耗戦を、強いられているのだ。


 単体で見れば、通常のヴラムなど戦騎や光姫の相手にならない。だが、数を揃え、戦術を持って運用されれば、雑魚とはいえ敵は脅威となる。こちらのリソースを削る、その役目を果たしているからだ。

 もっとも、ある程度陣形を組んでいる人間側に対し、先制攻撃で数を減らしたヴラムの通常種では歯が立たない。理力を消耗させるという意味では役目を果たしているが、それだけでしかない。

 下から上まで、ほとんどのものが気が付いている。このままなら自分達は耐えきることが可能だと。そして、このままで(・・・・・)終わるはずが無い(・・・・・・・・)と。

 戦場にいる全員が、戦いながらも新種のヴラムを警戒していた。



「来たぞ!! 上位個体だ! 数は100!! 足の速い奴だ!!」


 第8波まで迎撃し終えたところで、足が速い上位個体が投入された。

 ここまでの戦闘で、一人当たりの負担は3匹程度。倒したヴラムは4000匹とこれまで倒したヴラムの合計以上ではあったが、そこまで負担を強いてはいなかった。段階的に投入された事もあって、戦場が混乱しなかったからだ。おそらくこのまま戦っていれば20波10000匹ぐらいまでなら耐えきれただろう。

 敵もおそらく人間側を監視していて、埒があかないと上位個体を投入したのだと誰もが思った。足の速いヴラムであれば戦場を混戦にできる、陣形を崩してしまえばなんとかなると、そう思われたのだと。


 一部のものは意識が前に行きすぎないようにと周囲の警戒を強め、3日目夜に出てきた「気配の薄い新種」に備える。遠距離攻撃を主体とする者は先制攻撃を仕掛け、数を削る。それぞれが動き出した所で、「それ」が現れた。



 「それ」は急に現れた。

 姿形を例えるなら、それはオオカミに似ているが、鼻先から尻尾までは10m以上ある。

 小山のような巨体は高さにして5mもあり、見上げた者の首が痛くなるほど。

 全身に例の「気配の薄い新種」を張りつけたそれは、足の速い上位個体の逆側から襲いかかってきた。


 索敵術での発見が遅れたため、誰もがすぐには反応できなかった。

 その脚が無慈悲に戦騎たちを「踏みつぶした」。そのまま人間達の陣形など無視して駆け抜け、虫ケラのように人を踏み潰す。

 ただ走るだけだというのに陣形が引き裂かれ、戦場が混乱に陥った。前から来る上位個体と後ろから来る巨大オオカミの、どちらに対応するのかと翻弄される。巨大オオカミに挑んだ者もいたが、その強靭な脚に攻撃が通らず、無様に弾き飛ばされるか踏み潰される末路をたどった。


「脚を狙うな! 胴体と張り付いてる奴から潰せ! 自信のある奴は背中に乗ってブチ抜け!!」

「散開しろ! 固まったら逃げようがないぞ! 第三班は戦場を一旦離脱! 上位個体に専念するぞ!」

「第四班もだ! デカブツは五班と六班を中心に戦え!」


 混乱した時ほど上官の言葉が飛び交う。迷いを打ち消し戦線を維持することこそが人間の強みだからだ。部下は上の言葉を信じ、迷いと恐れを振り払って組織だった行動を開始する。


 90人ほどが本隊から距離を取り、遊撃部隊となって上位個体へ突撃した。数はヴラムと互角だが、全員が近接戦闘に特化した戦騎と光姫だ。一対一で戦えば確実に勝てる布陣である。


 残った本隊だが、このような化け物相手に戦うマニュアルなど無い。手探りの戦闘になる。

 まずは散開し、広く空間を確保する。それだけで巨大オオカミの突撃を回避しやすくなって、踏みつぶされる者は無くなった。一部、剣による攻撃を仕掛けて弾き飛ばされる者がいたが、それぐらいは許容範囲だろう。

 巨大オオカミの正面にいない光姫たちは≪ライトニング≫≪フラッシュボム≫≪エルフィンボウ≫などで胴体を狙い、攻撃する。張り付いていた新種が剥がれ、巨大オオカミの毛皮にも赤い血がにじむ。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


 と、そこでスティーヴの叫びが響き渡った。

 スティーヴは巨大オオカミの正面に位置取ると、左右の足を掻い潜ってから大跳躍。相対速度差を活かし、大斬撃を腹にお見舞した。


「ギャウゥゥンン!!」


 脚に比べ、他の部位は弱かったらしい。その一撃が決め手となって巨大オオカミは走る勢いそのままに横転した。横倒しになった巨体に何人か弾き飛ばされる。

 脚以外が弱点の巨大オオカミが横転したのだから、あとはひたすら攻撃するしかない。ここぞとばかりにレイナスも含む近接攻撃が得意な者が群がり、トドメをさす。


 見れば上位個体に対応していた者たちも勝利をおさめていた。

 索敵術による警戒は続けているが、周辺に新たな敵影は無し。

 100人近くが死亡し、300人以上が重症を負ったが、辛くも勝利を得ることが出来た。





 が、その勝利が幻想だと、すぐさま思い知る事になる。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


2月1日 誤字修正

× 自身のあるやつは →

○ 自信のあるやつは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ