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夏の大討伐 3日目

 3日目は、移動から始まる。

 昨日までの狩り場は、通常の倍近い速度でヴラムを狩った為、1日移動に当てて、翌日と翌々日で狩りをする事になっている。

 全員が戦騎と光姫という、光術を使える者のみで構成された集団である為、1日の移動で200kmほど狩り場を“奥地”に移せた。


 “奥地”とは、まだ解放されていない大都市があるエリアの事だ。

 そこはヴラムの住処となっており、繁殖場でもある。

 この間まではヴラムを大きな障害として見ておらず、厄介な獣で、ちょっと入手が面倒な素材の元程度の認識だった。

 それがヴラーナがいると分かってしまったので、急遽、大都市内部の“大掃除”という運びになった。予定では1月先の話だ。

 今回の大討伐はその時に備え、移動中の障害を少しでも減らす事が目的でもある。


 大掃除をしても大都市の確保はできないが、敵の駒を少しでも減らす事に意義があるという訳だ。



 移動の途中で100か200はヴラムを狩ったが、それらは全て先行する部隊の話で、レイナス達は後続に配属された為に一回も戦っていない。

 先行部隊にいる学生はヴェロニカを始めとした、ほんの数人しかいない成績が総合評価Sの者のみ。他は精鋭で固めている。そちらはなかなか忙しかった。本体より数km程先行し、見敵必殺を繰り返しながらも討ち漏らしが無いように戦うのだから。先制攻撃をする為の索敵能力と、一撃で相手を殺す攻撃力を要求される。移動をしながらなので特に消耗が激しく、終わった時には全員疲れ果てていた。……翌日には復帰するのだが。


 夕方になったばかり、午後6時ごろに移動が終われば翌日に備え、野営の準備に入る。

 この時は学生は雑用で駆けずり回り、レイナス達もテントの設営や炊き出しなどに狩りだされていた。



「?」

「どうかしましたか?」


 夕飯のスープとパンを食べ終え、交代で見張りをしている最中、レイナスはふと違和感を感じ、足を止めた。


 周辺警戒という事で、本体より2kmほど離れた森まで来ているのだ。

 夜の森は暗く深い。木々が多い茂り光など一切通さない場所ではあるが、光術で暗視能力を得ているので苦にはならない。道なき道を歩く方が困難だ。

 レイナスの傍にはいつものように控えるシャルとリーゼの二人に加え、本職の戦騎と従騎、光姫がいる。合計六人であったが、レイナスに引っかかった違和感は他の誰も感じていない。

 レイナスはこの感覚を必死に思い出そうと四苦八苦しているが、他のメンバーは怪訝な顔をするだけで「何を気にしているんだろう?」と考える程度だ。危険(・・)など、意識していない。なにせ、彼らの使う複数種の索敵術には何も反応が無いのだから。


「全員戦闘準備!! 囲まれてる!!!!」


 しばらく考え込んでいたレイナスではあるが、違和感の正体に気が付き、声を張り上げた。前にいる本職三人はレイナスが何を言っているか分らなかったが、条件反射で武器を構え、戦闘態勢を取った。

 レイナス自身も剣を抜き、右を向くと、≪飛斬≫――剣による遠距離攻撃を行った。


 それは特に目標物を定めずに使ったはずだった。

 レイナスの能力は近接系に偏っているので威力は弱く、木を数本切り倒す程度で終わるはずだった。

 だが。


「グキュェエェエェ!」


 何も無いはずの場所で、奇怪な悲鳴が響き渡った。

 そこにいたのは多足の黒蛇という、異形の化け物。新種の、ヴラムである。

 何も無い場所から姿を現した。


「そのままだと見えないし分からない! 適当な攻撃で弾幕を!!」

「「お、応!!」」


 状況を理解し、動き出す他のメンバー。

 今いる場所で円陣を組み、迎撃に当たる。

 手当たり次第に放たれた≪ライトニング≫が他にもいたヴラムの姿を暴き出す。新種のヴラムばかり合計五匹がこの場にいた。



 レイナスが感じた違和感は、風だった。

 全員が別種の索敵術を担当する事になり、レイナスは≪地形把握≫の索敵術を使っていた。≪地形把握≫は範囲内にある空間を正確に把握する索敵術で、動く物の反応なども全て認識できるようになる。反面、処理する情報の多さからごく狭い範囲――レイナスだと半径20m程度――しかフォローできない。

 さて、その効果範囲内で、風が吹いたとする。そうすると足もとの草は流され、横に倒れる。たとえわずかでも。

 もしも。何も無いはずの場所の近くで、風により倒れる草が、倒れなかったら。何故その草が倒れないのか。それが違和感の正体だ。何も無い場所で風の流れが変わる事など無いのだから。


 風の流れが複雑に変わる木々の中だけに、その発見が間に合ったのは僥倖であり偶然の産物だ。今回はギリギリ間に合った為に敵に先制攻撃を仕掛ける事が出来たのだ。



 現れたヴラムの体は大きく、そのぶん攻撃が当てやすい。

 隠密行動に優れた代償か、基本的な性能は低く、一般的な上位個体とさほど変わらない能力しか持っていなかった。

 その為、数に勝り先制攻撃に成功した事で、この場の(・・・・)戦闘はあっさり片が付いた。


 しかし他の場所でも同じヴラムが出現したらしく、巡回に当たっていた戦騎と光姫数名分の被害が出てしまった。

 戦場には、暗雲が立ち込めていた。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


1月28日 誤字修正

× 昨日までの仮場は →

○ 昨日までの狩り場は

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