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夏の大討伐 1日目

 夏の大討伐。

 今回の大討伐では普段よりより念入りにヴラムの数を減らすことが決定しており、通常2日で1000近く狩るだけの予定を大幅に変更して、戦場は2か所、目標を4日で5000以上と定められた。


 今回、レイナス達は主力級として参戦する事になった。

 受け持つ場所は左翼。機動力のある戦騎が集まり、包囲網を作るのが仕事だ。


 周囲のレベルが上がった事と自身の力に振り回されている事から、レイナス本人はあまり強くなっていないという認識だった。だが、実際は3か月前より格段に強くなっており、シャルとリーゼの二人分の支援もあり、進化していると言えるほどだった。

 どうでもいいが、周囲の連中も強くなっているのだから、周りと比べているだけでは変化が無いように見えるのは当然だったりする。



 正面に配置された場合、戦闘回数は必然的に多くなる。

 一回のトレインで100ぐらいのヴラムが集まってくる。たまに200近くまで増えるが、それを殲滅する為に3000騎のうち500騎ほどの戦騎が動く。戦騎と一般的なヴラムでは戦騎の方が強く、格下とはいえ油断せずに数で押すのが通例だ。

 隊列は3交代制で、1戦ごとに前衛、中衛、後衛を受け持つ事になっている。これは無駄に披露させない為の配慮だ。

 前回の失策を繰り返さぬよう、討ち漏らしについては放置が決まっている。

 安全策に安全策を重ね、不慮の事故が無いように戦うのが大討伐。前回のアレは例外で、質と数を揃え、地形も利用して有利に戦えるようにする。それが軍の考えだった。


 このやり方の場合、集団に気構えが育たないのが問題だ。

 精神的な物を鍛えるには適度な困難の中が最適で、安全が保障された戦場では腐ってしまうと考える者も多い。

 しかし戦略的には数を減らさぬように育てる方が大事であり、戦騎たちもごく一部のエリートを除けば危険な戦闘は極力避けるようになってしまっている。

 アイレン学院ではそのエリートを育てるためのカリキュラムが考えられており、それがあの授業内容だという。

 その結果、アイレン学院の生徒とそのOB、OG(卒業生)は大討伐にはあまり意欲的ではない。ぬるま湯に興味が無く、個々で勝手に狩っていたいと考えている者が多い。実に軍隊に不向きな連中である。



 レイナス達はと言うと、こちらは非常に気合が入っている。

 レイナス達は今まで不遇な補助任務が多かったので扱いが良くなったと喜び、リーゼはここならヴラムをたくさん狩れると勇んでいる。


 近くに学生の姿は無く、残りのメンバーはほぼ現役の戦騎のみだ。

 彼らはレイナスの事を「将来的に見込みはあるが持久力に欠け、今はまだ足手まとい。ちゃんと守るように」と説明されている。よって、気合の入っているその姿に幼子を見るかのような生温かいまなざしを向ける。「あんまり前に出過ぎるなよー」「ちゃんと周りを見て、危なくなったら俺達に回せよ?」「気合を入れるのもいいが、冷静にな」などと声をかけている。全体的に好意的に扱われていた。一緒に戦うのだ、礼儀を失する訳にはいかないとレイナス達も周りとの会話を心がけ、連携しやすいようにと打ち合わせなどをする。

 そうして、待ち時間を過ごしていた。





 そろそろ時間だという頃になると、会話が途切れ、全員真剣な表情で待機するようになる。

 気配を消すようにして、じっと森に潜む。

 そして、100を少し超える程度のヴラムが見えてきた。


 戦場はレイナス達がいる森からすぐそこにある、かなり広い平原。

 布陣は基本のそれである。四角く並ぶ方形陣を3つ、横に並べた形をしている。右翼と正面二つが平原に分かりやすく配置され、森に左翼を隠す形を取っている。トレイン部隊は正面部隊の間を通り逃げるため、正面部隊は二つに分けてあるのだ。

 正面部隊前列は投げ槍(ジャベリン)大盾(タワーシールド)を装備した防御重視の部隊。そのすぐ後ろに弓兵を配置し、この2兵種が遠距離から先制攻撃を仕掛け、敵の突撃を受け止める算段になっている。

 一度敵の突撃を止めて乱戦になれば、盾兵は盾を捨てて剣に切り替える。ファランクスのように密集してしまうとヴラムの中に混じっているであろう上位種の闇術でやられることがある為、防御よりの戦術は使われない。それにファランクスは近接戦闘に弱かったりと、対人戦――それも光術普及以前の――でしか役に立たないのだ。

 一度足を止めてしまえば獣の姿をしたヴラムといえど動きは遅い。先制攻撃で数を減らした事もあり、不利を悟った個体から逃げようとしていく。が、両翼の部隊が先に包囲網を敷いており、後は数ですり潰すだけになる。

 レイナス自身は2匹ほど狩ることが出来たが、シャルとリーゼはどちらも成果なし(ボウズ)。もともと戦騎や光姫の方がヴラムよりも数が多いから、狩れない者の方が多かったりするのだが、リーゼはとても落ち込んでいた。

 レイナスとシャルはリーゼに対し、「今日だけであと4回は戦えるから」「今回は普通よりノルマが多いし」などと言って慰める。



 この日はレイナスが8匹、シャルは2匹、リーゼが1匹という結果になった。

 軍全体では1300匹のヴラムを駆逐する事に成功する。

 対して自軍の損害はゼロ。多少怪我人が出たが、光術で翌日に支障が無いレベルである。


 普段は散発的に襲ってくるヴラムもいるので周辺巡回も行われたが、そちらでは誰もが戦果無し。

 初日の戦場はある意味例年通り、特に何事も無く終わった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


余談ではありますが、戦闘能力を数値化してみました。持久力は計算に入れていません。

一般戦騎:100

レイナス+シャル(春の大討伐時):120

レイナス+シャル(限界開放):160

レイナス+リーゼ(春の大討伐時):80

レイナス(双姫の加護・春の大討伐時):500

レイナス(双姫の加護・夏の大討伐時):300


一般ヴラム:50

上位個体:90

リーダー:200


あくまで目安です。状況その他で変わります。

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