続く日常
学院での生活になれたレイナス達の一日は、意外と平和である。
来た当初は毎日のように行われた手合わせも、一月経てばあまりない。見知った者たちと腕試しをする事はあっても、新規の挑戦者というのはもう現れなくなっていた。ほぼ全員とやっただけとも言うが。余裕を持ち、自分のペースで鍛錬できるようになった。
6年生の不意打ちについては、賞金首システムの弊害なのか。賞金無しであった為に、自然と下火になっている。逆に8年生に挑む側になる程だ。
普通に授業を受け、訓練に励む。
これはシャルとリーゼについても同じことが言え、彼女らは彼女らで平和に過ごしている。
日々の鍛錬を怠る事は無いが、充実した時間を過ごしているようだ。
その日の授業は光術ありの演習。
レイナス達は一組で三人編成という事もあり、チームでの成績は上位になる。
よって、戦うのも同じ上位組であるスティーヴたちであった。
「悪いけど、今日も勝たしてもらうからなぁ」
「ぬかせ。今日は俺が勝たせてもらう」
レイナスとスティーヴの戦績は4:6でスティーヴが勝ち越す。
光術による強化無しなら、レイナスの方が強い。その状態では8:2でレイナスが優勢だ。
しかし光術ありになると勝率は反転し、スティーヴが圧倒的に優勢になる。その訳は――
「ハハハ! そんな大振り、当たらんでぇ!」
「ちぃっ!」
レイナスの一撃を、スティーヴは避け続ける。刺突を主体に、剣で何度も攻撃する。一方的に攻撃しているように見える戦いだが、余裕があるのはスティーヴの方という展開だった。
レイナスはシャルとリーゼの二人から理力供給を受ける状態“双姫の加護”状態で戦っている。その状態では普段できない身体強化の最大出力が出来るのだが、いまだにその力を使いこなせていなかった。出力は普段より三倍まで上昇しているのだが、その感覚を覚え、型を慣らし、自分のものにするには時間が足りなかった。出力不足時代に会得したいくつかの技があったのだが、この状態で使えば自爆は必至。総合的に見れば限界解放の時の方が強いという結論になる。
攻撃するというのは、その次まで考えて行う必要がある。高い身体能力に振り回されるレイナスは、本来の技量を発揮する間もなく――
「残念~」
スティーヴに剣を弾かれ、チェックメイト。
この二人が戦っている時に限り、光姫同士の戦いは休戦状態。男だけに勝敗を任せているため、スティーヴ達ペアの勝利が決まった。
「あ゛ー」
「フヒヒ、まだまだやなぁ」
“双姫の加護”によりレイナスは一撃の鋭さと重さは増したが、そのぶん単位時間当たりの攻撃回数が減り、直線的になりがちになってしまった。ある程度格下には圧倒的ではあるが、同格以上の相手にはカウンターの餌食になる事が増えた。
かといってシャルとの限界解放は発動時間が短く、リーゼの理力は完全に制御しきれず出力が低くなる。総合成績を見れば前よりマシだが残念な「C+」。それが現在のレイナス達への評価だった。
もっとも、ごく一部を切りとってみればピーキーな性能だけに使い道があるというのがクラスの共通した意見だ。使える場面は限られるが、最大限にパフォーマンスを発揮できるシチュエーションを考えるのはみんな楽しいらしい。全体的に見て、好意的に扱われている。
「まあ、数こなすしか無いやろうなぁ。あんじょうきばりやー」
「分かってるっての」
スペックが大きく変わるというのは、それまでの感覚が逆に足を引っ張るという事でもある。通常状態から身体強化に切り替える事が出来て、ようやくそれに馴染んだところで今度はもう一段階上の感覚を持たねばならないのだ。言われたように数をこなして、完全に自分を制御する必要がレイナスにはあった。
レイナスは三人での連携訓練に加えて双姫の加護になれる事、他の連中との手合わせなどでなかなか忙しかった。一つ一つの訓練が中途半端になり、結局どれもモノになっていない。
そんな状態では危なっかしくて放っておけないというのがヴェロニカの考えで、学年を無視して一緒にいる事が多くなっている。今日は一緒ではないが、何かと世話を焼いている。シャルとの喧嘩も周囲一同、慣れたものだ。
まだ力を使いこなせない少年は鍛錬を重ね、少女達はそれを支え、日々はまた過ぎていく。
時を重ね変わらぬものは無く、少年達には再び転機が訪れる。
大討伐の、幕が開ける。
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