戦騎候補生①
残された人類は今いるヴラムを駆逐する為に、再びヴラムが「門」を開いた時に備え、≪光術≫を学ぶ為の学院を前線近くの都市『ハーフェル』に設立。後進の育英に力を注ぐようになる。
この学院は様々な分野のエリートの育成に加え、英雄の子孫たちを集めて戦う為の術を教えるようになってき、設立から70年たった現在では確固たる地位を確立した。
多くの優秀な人材を輩出し、各地で名を上げていくその姿を見てこの学院に入りたいと思う子供は増えて行った。
学院の敷地内には生徒専用の寮がある。
生徒は基本的に10歳で親元を離れ、寮に入って同年代の子供たちと共同生活をする事になっている。これは軍として規律ある行動を取る練習であり、部隊行動の大切さを普段から学ぶための措置である。
寮は男女別、そして階級別に計6棟。男子4棟女子2棟となっている。
男女比の都合で女子が少なく、女子は光姫の上位と下位で分かれるだけで、男子はまず戦騎と従騎で別れ、それぞれの中で上位と下位で分けられている。
完全な実力主義によるものなので、異論反論は誰も言えなかった。
そして下位戦騎専用寮の一室で、一人の少年がため息をついている。彼の手には一枚の紙切れがあった。
下位とはいえ戦騎専用の寮なので設備はそれなりに揃っている。共同生活の常として、一人部屋など上位戦騎寮のなかでも特に優秀な物にしか認められておらず、彼の場合は6人部屋で生活している。寮そのものはレンガ造りで内装は板張り。部屋にはカーペットを敷いて土足厳禁になっている。置かれたベッドは2段ベッドが3つ。家具として個人用のタンスと机が一つ与えられている。
これが下位従騎だと20人用の大部屋に個人用の家具は無しとなるので、彼の待遇が恵まれているのが分かるだろう。
「どったの、レイナス? 成績、そんなにヤバかった?」
ため息をついた少年レイナスに同室の少年クロスが声をかけた。
レイナスは何も答えず、無言で紙切れ――成績表をクロスに渡す。
「なになに、近接戦闘A+、射撃戦闘A-、戦術指揮B+。流石だなー。光術許容量D+、具現化C、身体強化D-、閃技D-。総合評価はC-。相変わらず偏ってんな~」
成績はSを最良とし、A、B、C、Dとなる。これに+-とあるが、C-評価は授業態度などの加点があって付けられる「恩情による措置」に近い。
戦騎希望の学生は、戦騎としての評価を最低でもC-にしないと従騎に落とされてしまう。一回落ちたら二度と復帰は望めない従騎落ちは、戦騎にとって恐怖の対象である。よって、自分の崖っぷちぶりに落ち込んでいるレイナスは戦騎として相当危険な位置にいる。
「まあまあ、光術無しならほぼ負け無しのお前が従騎落ちなんてまず無いって。元気出せよ、な?」
落ち込む仲間を励ますのも同室の者の務めだ。クロスはことさら明るく振る舞い、レイナスを元気づける。
「そう、だな。落ち込んでる暇があったら訓練して、少しでも強くならないと」
「そうそう。今度の遠征でヴラムを5~6体狩れれば、まだ何とかなるって! 俺たちも協力するし、頑張ろうぜ!」
クロスの励ましによって、レイナスの表情は少し和らぐ。まだ次があると希望を信じ、気合を入れて立ち上がる。クロスもそんなレイナスの練習に付き合うべく立ち上がり、肩を並べて訓練場に向かう。
弱いのなら強くなればいい。一人では立ち上がれない時には戦友が支えてくれる。その事実に助けられ、レイナスは今日も剣を振るうのだった。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。




