これから先
階段から危険な角度で落下したのだが、意外(?)にもスティーヴはノーダメージで戻ってきた。
「いやぁ~すまんなぁ、ちょーっと興奮しすぎてもうたわ」
(あれでちょっとだったのか?)
照れながら頭をポリポリと掻くスティーヴ。彼はレイナス達の事情を正確に説明し終える頃には気さくなクラスメイトになっていた。
スティーヴは高い能力を持ってはいるが常にあの調子なのでなかなか光姫が決まらず、ハブられた事がトラウマになっているらしい。女性にモテる人間すべてが敵という、分かりやすい男だった。
なお、彼の喋りは複数の都市の方言が混在しており、一般的ではない。本人も自覚しており、普通に喋る事も出来るのだが、あえてあの喋り方で通している。事情があるようだが、誰もプライベートには突っ込まなかった。
「腕の立つ奴は歓迎や。これからよろしゅう頼むわ」
スティーヴは会長から話を一通り聞き終えると、挨拶だけちゃんと済ませて、もう用は無いとばかりに去っていった。
「会長」
「ん?」
「スティーヴはこの学院でどの程度なんですか?」
残されたレイナスは、スティーヴの戦っている姿と歩き方から相当上位に属する実力者であると看過した。だから会長は笑って言い切る。
「学年でなら一番強いよ? でも、学院でなら100位にも入らない。7年生と8年生の間にはそれだけの実力差があるからね」
ちなみに8年生は戦騎と従騎を合わせて120人いる。そのほとんどが、実力上位と会長は言い切った。
その答えに、レイナスは震えを感じた。レイナスは光術無しなら前の学院では最強である。光術無しという条件なら、スティーヴにも勝てる自信がある。が、そのスティーヴと自分の実力差はそこまで大きくは無いだろうと判断している。だが、そのスティーヴを寄せ付けない実力者がこの学院にはいるようなのだ。
戦騎として、レイナスは自分の先を知る先達と学べる事に奮い立つ。この学院に来たのは自分の意志ではないが、正解だったと、確信する。
その後は1階や校舎外の施設の案内をされたが、そちらでは特筆すべき事など何もなく穏便に、すべての施設を見終えた。
(この学院ってレベル高すぎませんか!?)
学院の案内を受けている間中、シャルとリーゼは驚愕するばかりだった。
レイナスは平然としているが、光姫二人は頬が引きつってしまうほど、アイレン学院所属の光姫はレベルが高い。
実戦主義というのは、出来のいい・悪いを明確に区別する。授業や戦闘に付いていけなくなれば容赦なく置いていかれ、生徒の死亡事故こそ起きていないが戦闘行為がトラウマになる生徒は後を絶たない。
その反面、進級できた生徒は粒ぞろいである。学年が一つ上がる度に半分以下になる生徒数ではあるが、戦いで無駄に命を散らすよりも、退けるうちに退いてしまうのは賢明な判断である。戦騎や光姫だけが生き方ではないのだ。
そしてこの学院で案内された先々で見た光姫の質は、ハーフェル学院と比較すれば数段上と言わざる得ない。ハーフェル学院は毎年100人以上の卒業生を輩出しているが、アイレンでは30人程度が限界。数が勝負を決める重要な要素であることは間違いないが、質の高さも加えてみれば戦力比はアイレンを優勢とするだろう。
それほどに、光姫の能力に差がある。全員最低でも総合成績でB評価。A評価もゴロゴロいるだろうし、S評価だっているかもしれない。ハーフェルが当たり前の二人にとって、アイレンは刺激が強すぎた。
施設を一つ見て、そこで特訓をする光姫を見つけるたびに落ち込んでいくシャルとリーゼ。レイナスは普段と違い興奮気味なので二人の変化に気を回せない。
やっていけるのかどうか。
二人の心境は、最悪に近かった。
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