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スティーヴ

 学生会室が3階にあったので、上から順に見て回ることになった。

 トイレの説明や更衣室の説明を受けるときにはレイナスは男と女で分けてみた方がいいのではと、内心では思っていたが黙っていた。

 女子更衣室を説明するときは周囲からからかわれたりするのだが、ごくまれに「何を見られようが気にしない」という剛毅な娘も混じっている事の方が女生徒二人には厳しかったようだ。男女ペアで行動する時間が長くなることで起こる境地の一つだが、そこに至らない者には刺激が強すぎるようだ。


 校内3階には6年生――ようは、不意打ち許可を持つ連中――が何人もいたが、彼らはここでは挑もうとしなかった。普段7年生や8年生が来ないため、不意を衝くにしてもここで待つと無駄足になる可能性が高いからだ。上級生は下級生から準備しなければ勝てない相手という認識は持たれているようだ。

 3階では特に何事もなく案内は終わった。


 2階に降りようとすると、階段近くで6年生の男子生徒二人が7年生の男子生徒一人を相手に戦っていた。

 戦っていると言っても二人がかりでも1年分のキャリアの差は埋めることができなかったようで、7年生が6年生コンビを終始圧倒している。

 双方学内戦闘の取り決めに従い≪光術≫は使っていないが、7年生の方はレイナスでも感心するほどレベルが高い動きを見せている。最小限の動きで回避を行い、円を礎にした回避から攻撃につなげる動作が滑らかで、的確に急所を打ち相手を行動不能にする。

 よく見ると一人2階と1階の踊り場に倒れていて、最初は三人で挑んでいたことが分かった。それを軽く往なすという事は、相当の手練れだとレイナス達は感心した。

 一方会長の方は6年生三人に対して苦笑する。挑まれた7年生は学年最強の戦騎であり、もし挑むなら最低でも十人は用意して欲しかったからだ。戦力差を低く見積もり、準備を疎かにした未熟さにはこのような反応しかできない。ちなみに不意打ちに人数を揃えるのは基本だ。相手は格上なのだから。逆に迎え撃つ側も人数を揃えるのは基本だ。自分の能力を過信して負けるのは阿呆だから。


「お、会長こんちわ」

「おう、そっちは相変わらずみたいだな」

「フヒヒ、賞金首がここまで楽しいとは思ってなかったさね」

「あんまり手加減するなよ?」

「えー」


 会長は戦っていた生徒と顔見知りらしく、気軽に話をしている。

 話をしている最中に男は倒した男たちが身に着けていた腕章を回収し、会長に渡す。会長はそれを受け取ると男にいくばかの金貨を渡した。


 「常時戦場」を掲げ不意打ちを推奨しようとも、理念だけで人は動かない。

 そこで考案されたのが賞金首システム。7年生と8年生は自身を「賞金首」に設定できる。そして6年生と7年生の不意打ちをする側は学生会公認の「賞金稼ぎ」になることで「賞金首」を倒した時、「賞金」を得ることができるという物だ。

 賞金については本人が自分で学生会に支払っておき、賞金稼ぎも公認の賞金稼ぎになるときにいくらかの金銭を学生会に渡し公認賞金稼ぎの腕章を得る。賞金首は賞金稼ぎを迎撃することで腕章を奪い金銭を得る。

 こうすると勝ち負けがシビアになり、学生は自分が稼ぐ手段を必死に考え出す。金銭が絡むために何度かルールの範囲内をギリギリ逸脱しない程度に不正を働く不心得者が出たが、その都度学生会から刺客が放たれるなどして何年も秩序とバランスを保っているのが現状だ。


 賞金をもらった男はそれを嬉しそうに財布にしまうと、会長のお供に対して目を付けた。


「そっちの三人は新顔やね。見ぃひん顔やし。どちらさん?」

「7年への編入生でレイナスです」

「彼の光姫(ペア)で、シャルロッテです」

「同じく、リーゼです。私の校章は6年生のですけど、編入は7年生です」

「ワイはスティーヴ。よろ……ん?」


 ごく普通に挨拶をしたレイナス達に、賞金首の彼――スティーヴは首をかしげた。


「なあ。今、ワイが聞き間違えた気もすンのやけどな、こっちのお嬢ちゃん、二人ともニイさんの光姫やって言われへんだか?」

「うん。二人とも彼の光姫だよ。彼はその特殊性を認められてこっちに来たんだ」


 隠す事でもないので、あっさり情報を流す会長。

 それを聞いたスティーヴは小刻みに震えだした。


「なんやそれ! なんやそれ!? ハーレムか!? アンタ、ハーレム王なんか!?」


 掴みかからんとする勢いでレイナスに迫るスティーヴ。目に涙を浮かべ、僅かな希望を追い求める。

 あまりの勢いに思わず体を捻ってかわすレイナス。勢いそのままにスティーヴは階段の下に落ちて行った。


「会長……。あの人、いつもああなんですか?」

「だいたいあんな感じだね。女性関係で苦労してるから」


 何事もなかったように微笑む会長を見てレイナスは思った。


(ここではあんな人が普通にいるのか……)


 もちろん、あんな人間が早々いるはずもないのだが。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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