学院到着
レイナス達は学院にたどり着くと、まずは事務局に挨拶に行くことにした。
何をするにしても挨拶は必要だが、いきなり学院長の部屋に行くのは失礼だから繋ぎをお願いしたかったのだ。
「お待ちしておりました」
学院と学院は、所属は違えど目的が大きく変わることがない。基本的につながりはあるし、事務的なやり取りは普通に行われている。小さな確執はいくつもあるが、レイナス達の情報のやり取りで無駄な失態などありはしない。
この世界では小型の道具を使った短距離無線通信や、道具は大型化はするが都市間での無線通信が行われている。レイナス達の情報は事前に伝えられており、事務員までそれが周知されていた。
「レイナスさんたちにはまず学院長へ挨拶をしていただきたかったのですが学院長は本日はお会いすることができません。代わりに、当学院の学生会長が学院内を案内することになっています。案内の者を出しますので、そちらの指示に従ってください」
「一つ質問をしてもよろしいでしょうか」
「はい、構いません。なんでしょうか?」
「なぜ学生会長が直々に案内を? 他の、言っては悪いですが会長よりも暇な方にお願いした方がいいと思うのですが」
事務員が簡単な説明をして人を呼ぼうとしたが、気になることがあったのでレイナスは先に質問をしてみた。
事務員は嫌な顔もせずに笑顔で答える。
「あまり御自覚無いようですが、レイナスさんたちは賓客に近いのですよ。会長が近くにいればほぼすべての生徒に圧力をかけることができます。無駄な軋轢を避けるためには会長のご威光が必要なのですよ。会長しか御しきれない生徒も多いのですから。また、レイナスさんたちの可能性と新型と思われるヴラムの情報。まずは代表である学生会でその上を吟味し、対応を決めるためにはやはり生の情報が重要と考えられています。案内のついでに色々質問されることになると思いますよ」
「そういう事でしたら、納得です。では案内をお願いします」
「はい、こちらです」
事務員の呼んだ案内人のおっさんに連れられ、レイナスたち三人は学生会室に向かう。
学生会室は木造校舎の3階にあるらしいので、ギシギシと鳴る廊下を歩く。あまり学生のいないコースを歩いているらしく、道中で他の学生に会う事がない。
特に会話もないまま、学生会室に着く。案内人がノックをし、「お連れしました」と言えばすぐに「入ってくれ」と声が返ってきた。
ドアが開くと、会長は立ってレイナス達を迎えてくれた。レイナス達を軽んじるつもりがないという意思表示だ。
「ようこそアイレン校へ。学生を代表して君たちを歓迎するよ」
学生会室は校長室かとツッコみたくなる造りだった。会長用の高価そうな机があり、応接用のテーブルとソファがある。どう見ても事務仕事をするための部屋には見えない。ここで説明は行われないが、これは会長というのが学院長のように学院の代表として振る舞う事が多いからだ。補給用の兵站の手配をはじめ、外部の人間と会うのに使われるのがこちらの部屋で、一般的な事務仕事については隣室の事務部屋を使う。
会長は大柄でガタイのいい大男だった。筋肉質ではあるがヒゲ面でもないのにクマか何かのような印象を受ける。だが表情は柔和で威圧感などない。普通、こんな大男ならある程度の圧迫感を与えるものだがそれが無い。会長職にふさわしい仁徳と笑顔の持ち主という事だ。
内心警戒していたレイナス達ではあったが、その笑顔にたらしこまれたのか警戒を解き、ほっと一息つく。
「歩いて案内する前に、簡単ではあるがここで見取り図で説明させてもらうよ。現地ではロクな説明もできない可能性が高いからね」
レイナス達は会長の言葉に引っ掛かるものを覚えたが、効率よく事を済ませたいというなら是非もない。進められるままにソファに座り、対面の会長の話を聞く。
「まずは大雑把な説明をするよ。この校舎は6年制以降の生徒が座学をする為に使われる。1階が8年生、2階が7年生、3階が6年生のために解放されているんだ。君たちはレイナス君に合わせ7年生として通ってもらう事になるから2回だね。各階の移動に使う階段は玄関近くの中央と東側にある。西側には無いから注意してほしい」
そこで会長は言葉を区切り、ぐるりと一同を見渡す。
「注意しなければならないのは1階だね。学院の伝統で、下級生から上級生に不意打ちをするのが奨励されている。君たちも8年生になら仕掛けて構わないが、自分たちも6年生から仕掛けられることを忘れてはいけない」
「常時戦場」を掲げる学院ならではの伝統である。
下級生如きに不意を突かれ不覚を取るのは先輩として面目が絶たない。その意識を利用してのことだ。あまりに無様を晒すようなら留年もありうるので誰もが真剣にやっている。これについては会長も例外ではないのだが、慣れている会長は意識せずとも対応できる。だがその伝統を知らない他校生にはこうやって注意が必要だ。
この話を初めて聞いたレイナス達は頬が引きつったり冗談ではと疑ったりしている。その様子に会長は微笑み、細かいルールを説明する。この場で念を押さないのはレイナス達の心情が手に取るようにわかるからだ。あとは頼んでおいた6年生に不意を突かせ、実体験で理解させるように手はずを整えている。やった方が理解が早い事なのだと。
そのあとはトイレなど、施設の説明を一通り済ませ、実際に学院内を見て回ることになった。
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1月28日 誤字修正
×校長室化とツッコみたくなる
○校長室かとツッコみたくなる




