戦後処理
2話同時投稿です。
ひとつ前は下種成分が混じっていますので、苦手な方はスルーしてください。
読まなくても本編に影響はありません。
あの後、ハーフェルの学院まで戻ってきたレイナス達を待っていたのは激しい質問攻めだった。
あの戦いそのものはレイナス達を見守っていた戦騎さんが全て報告してくれたので、彼らはもう自分達の口から報告しなくてもいいと勘違いしていた。しかし、軍と学院上層部は報告を聞いていくつか協議していただけだった。
緊急性の高い仕事として一番に上がるのは、あの特殊なヴラムリーダーの存在である。ヴラムリーダーそのものは今までも確認されていたが、あそこまで危険な個体は知られていなかった。簡単な集団統率や連携を行う事は確認されていたが、アレは戦術を駆使して相手を罠に嵌めるという、人間に近い知性を持っているというのが結論だ。それを相手取る為の戦術が協議され、レイナス達は後回しにされていただけだったのだ。
配置と戦いの推移は本職から説明されていたが、実際に戦った当人達からの情報もまた貴重なものだ。学生レベルの拙い戦術に突っ込みは入らず、調査官の質問はレイナス達による相手の戦力評価と戦術評価に終始した。
この時、最後にレイナスが行った光姫二人からの理力供給の話が出たが、この調査官はヴラムリーダーの評価のみで、そこはスルーされた。
「お疲れー」
「おつかれさまー」
レイナスとシャルの二人は調査官から解放されるとそのまま食堂で軽食を取る事にした。リーゼは同学年の光姫と連れだってどこかに行ったので二人きりである。
時間は昼過ぎ、午後2時ぐらいである。昼食の時間からずれているので人影はまばら。誰もいないという事は無いが、昼食時と比べてみれば閑散としている印象が強い。
並んだ四角いテーブルの隅の方に二人で並んで座り、購入したドリンクとサンドイッチで疲れを癒す。
調査官と話す機会など今まで無かったし、細かい事務的な応答は二人の精神力をガリガリと削っていた。戦闘ではタフな二人も事務仕事には向いていないのか、ぐったりとしている。
調査官、実は二人を疲れさせるようにわざとそうしている。三人は戦友を失い命の危険に晒され、すでに心がボロボロだったのだ。余計な事を考える余裕をなくし、目的を与え、正しい方向に回復させようという配慮である。この場合、放っておくと精神を病むケースなのだ。
「今回の功績はかなり高く評価されます、か」
「んんー」
「成績へのプラス評価、軍への早期編入も考慮します」
「ん」
「シャルは、行った方がいいと思うか?」
「んーん」
「そうか……」
シャルはドリンクを飲み終えてから机に突っ伏している。
レイナスもどこか焦点の合わない目つきで虚空を見ている。
二人とも、心此処に有らずだった
三人の処遇については、軍と学院上層部で物議を醸し出した。
新種のヴラムとの戦闘経験に加え、最後にレイナスが見せた異様な光術。学生としてこのまま伸ばし、足りないところを補ってから仕官させるか。それとも、すぐにでも軍に引き抜き、力の解明を進めるか。まずは形式的にでも本人の意思確認が必要ということで、三人には先ほどの調査官から質問攻勢の終了後にいくつか進路の提示と確認が行われた。
レイナス達は即答できる状態ではなかったので返事は保留、3日後という約束になっている。三人の合意が必要な話なので、よく相談するようにと言われた。
レイナスは、まだ学院で学ぶべきことがあり、中途半端に辞めるのは駄目だと考えている。シャルもレイナスに同意した。ただ、リーゼは軍への異動を望んでいるようだ。三人一緒でないと意味がなさそうである事を考えれば、民主主義的に学院残留が決定なのだが。
「リーゼはもっと座学を頑張った方がいいし」
「ん」
「三人で動くなら、その為の連携も磨かないといけない」
「個人戦力もまだまだだよね」
「俺たち学生レベルだよな」
「弱いよねぇ」
「強くならないとな」
「まずは、ここでね」
「ああ」
この時二人は、意思確認が行われたから大丈夫と、無意識にそう信じていた。
「今回の事例を鑑みて、おまえらはアイレンの『特別育成コース』への編入が決まった」
3日後、学院の院長にそう言われるまでは。
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