表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/100

選択

 目の前の光景を、レイナスは理解したくなかった。

 森の中、見知った相手の残骸が転がっている事、そして同じような残骸がそこらじゅうに転がっている事。それは頭であったり足であったり。集団行動で密集していたのだろう。血溜まりは大きく大地に吸収されることなく池のようで。鉄の匂いにレイナスは吐きそうになる。

 もう何十年も大討伐が行われているが、死者は出ても2~3名と聞いている。目の前にある殺戮の跡は、20人分かそこらの死体がある。文字通りの意味で桁違いの「死」は、レイナスから冷静さを奪うには十分な光景だった。

 呆然としたレイナスの頬を、シャルが引っ叩いた。


「落ち、着いた?」


 シャルの目は目の前の光景を正しく理解しながらも理性の光がある。冷徹な光がレイナスにも染み込み、恐慌一歩手前の精神が正常に戻っていく。

 レイナスは惨劇を頭から振り払いつつも何があったのか、思考する。


(これだけの戦力を壊滅させた奴がいる……しかも、俺たちに戦闘を感知させなかったことから、複数による奇襲。上位個体の中でも相当狡猾な奴が、隠密行動に長けた奴がいる。しかも一撃必殺の攻撃力すら持っている。複数いたはずの索敵手を最初に潰し、そのまま殲滅戦に持ち込める奴が)


 ≪光術≫を使った場合、≪光術≫を修めた者にはなんとなく感知できる。2~3㎞離れていても大規模な戦闘があれば分かるはずなのだ。それが無かったという事は、戦闘にすらなっていなかったという事だ。

 そして、体をバラバラにされているという事は、≪光術≫で強化された体をそんなふうに破壊できるだけの攻撃力を持っているということ。


(相性は最悪か? こっちの感知能力と相手の隠密能力の力比べだな)


 攻撃力に関しては考えていない。レイナスの使える理力量では防御にまで手が回らない。身体能力強化と感知能力で「当たらなければいい」という考えを実践している。よって、相手の奇襲を防げるかどうかだけが問題なのだ。当たったなら、負ける。それがレイナスの選択だった。


「……こうなると、俺たちの生存が第一の目標になる。本陣まで走り抜ける。往くぞ!!」

「はい!」


 ここにいる全員を合わせれば、自分たちよりもかなり上の戦力になる。それでも全滅したのなら、レイナス達の選択は本陣に戻る事しかない。

 全員で森の中を駆け、本陣を目指す。

 途中にある敵の反応は数が3までは瞬殺し、それ以上は回避しながら進む。戦闘込みで移動するため、本陣までの10㎞がずいぶん遠く感じられる。体感時間で2分3分がもっと長くなり、5分10分となる。それによるものか、理力の消費も管理が雑になり、余分な消耗を強いられる。リーゼは最大理力が多いので大丈夫だが、シャルはずいぶん厳しそうだ。


「……ここまで、か」

「うん……」


 レイナスはシャルの残り理力を考え、本陣までの撤退は無理だとあきらめた。

 シャルにしてみれば自分のこと。レイナスの言葉がどんな意味を持つか分からないはずもなく、沈痛な表情でうつむく。

 リーゼだけは、二人が何を言っているか分からず、二人の顔をまじまじと見つめた。


「どうしたんですか、足を止めて。今は急がないと……」


 何を言っているか、本気で判らないわけではないだろう。だが、得てして現実とは受け入れがたいものだ。二人の「自分たちは助からない」宣言に、リーゼは否定の言葉を投げかけようとするが。


「こんなことになるなら、俺たちが応援を呼びに行くべきだったな」

「そう、だね。クロス君たちなら、まだ動けたのに」


 二人は現実を見て、すでに諦めている。希望的憶測は意味をなさないと分かってしまった。

 ぐっと言葉を堪えるリーゼに、レイナスは最期の選択を突き付ける。


「ここで俺たちと果てるか、それとも奇跡に賭けて一人行くか。選んでくれ」

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ