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先輩と後輩

「先輩方、申し訳ありませんでした!!」


 戦闘後、レイナスとシャルにリーゼは頭を下げた。

 何のことか分からず、戸惑う二人。


「お二人の事を、足手まといと思ってました」


 リーゼは頭を下げたまま、自分の考え違いを口にした。

 ああそのことか、と謝られたことに納得する二人。


「一応でも進級できる奴ならだれでもできる事さ。そう大したことじゃない」

「うん、成績下位なのは本当ですからねぇ」

「そんな事ありません! レイナス先輩の剣、ほとんど理力強化をしてないのにヴラムを切っちゃいましたし、シャルロッテ先輩の≪光術≫、敵を完全にとらえてましたよね。索敵と同時二発の≪ライトニングザンバー≫。私じゃできません」


 言われた内容に苦笑するしかない二人。

 レイナス達にしてみれば、この戦術は理力量の低さを補うためのスキルなのだ。普通に戦って、普通に倒せるならその方がいい。しょせんは姑息な(その場しのぎの)手段、そう考えている。

 しかし目の前の後輩はキラキラした目でレイナス達を見ている。座学よりも実力勝負の後輩少女に、不出来な先輩二人は苦笑するしかない。

 敵が視認状態にもかかわらず姿を消したこと、戦闘の1匹と同じ上位個体という事を考えれば、目に見える位置にいる1匹は当然囮と考えるのが自然で、残る2匹は不意打ちしますよと宣言しているようなものである。これが最初から索敵範囲外にもう1匹いて、そいつが不意を打つならまだいい。だがわざわざ目の前で姿を消されたのだから、あの2匹を追跡(トレース)し続けるのは至極簡単なのだ。ヴラム自身ではなく、森の中を移動する痕跡を辿ればいいのだから。



 説明を受けている間もリーゼは目を輝かせていて、少し気が緩んでいるようにレイナスは感じた。実際、先ほどの戦闘に気が付いたヴラムが30匹ばかり、こちらを包囲しようと動き出している。最初に聞いていた数より明らかに多い。この後も増援が来ると考えて動いたほうがよさそうな気配である。


「リーゼ、敵が本格的に動き出した。囮になって敵を引き付ける仕事は成功だから、本陣までこいつらを引っ張るぞ。途中の援軍と合流して後は任せてしまえばいい」

「ふぇっ!?」


 気の抜けた声を出すリーゼを無視し、レイナスとシャルは周辺の敵の配置を視る。包囲網はまだ完成しておらず、このままこの場に留まるならともかく、今なら離脱は容易だとレイナスは判断した。


「でも、私のパートナーが!」


 悲痛な声を上げるリーゼ。

 だが、レイナスは容赦ない。


「それなら尚更こいつらをパートナーから引き離さないとな。敵が動き、包囲するヴラムの数が減れば、何が起きているかそいつらも理解できるだろ。急ぐぞ」


 無理矢理腕を取ってリーゼを引っ張るレイナス。今回はシャルも走るつもりでいる。


「どうせすぐそこまで仲間が来てる筈だ。まずは助けるための戦力にならないとな」

「……はい!!」


 二人を大幅に見直したリーゼは先輩の言葉で迷いを断ち切り、自分の足で走り出す。

 レイナスは改めてシャルを抱きかかえ、加速する。多数を相手取る少数にとって一番危険なのは包囲されることである。個人なら同士討ちを狙うなどの対応もできるが、それができないであろう味方がいるのであれば逃げてしまうのが最善だ。

 逃げてしまえば追いかける大軍は速度差でバラバラになる可能性が高い。森の中なら余計にそうなるだろう。索敵状態を維持しつつ逃げ、距離が開けば近いものに一撃入れつつ引けばいいし、こちらと同等かそれ以上なら必死に逃げるしかない。救援がくるとわかっているのだから、ここは無理をすべき場面ではないのだ。



 あと1分2分もすれば救援が来る。

 そこに合流すればまだ何とかなる。

 三人は、そう考えて引き返す。だが。


「え?」


 思わず声を漏らしたのは誰だったか。

 目の前に、三人が理解でない光景があった。

 それは、


「クロスの……右腕?」


 レイナスが見間違えるはずのない、ルームメイト(しんゆう)と、救援に来たメンバーであろう仲間の残骸だった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


1月6日 謎の改行を削除

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